バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
大事件だ!
私のバーボンとしての強襲先がルパンの獲物とバッティングした!
今回の強襲先は敵対組織のアジトだ。
山間部のオフィスに偽装してあり、地元住民からは前々から訝しがられていたらしい。何とも雑な忍び具合だ。
命令は強奪・殲滅。
アジトに突入して「不老不死をもたらす」なんて眉唾な謂れのある宝石を取ってこいとのこと。
そんなん怪盗KIDの仕事じゃん犯罪組織のくせにロマンチストか、とか、不老不死って割と組織の核心を突く内容を任されてないか私、とか。
色々思うことはあれど重要なのはただ一つ。
何でそんな超荒事を私一人にやらせようとするの!?ということである。
該当アジトは敵さんの本部らしく、警備はガチガチ。
拳銃から改造した自動小銃までわんさか出てくる武器庫である。
そんな場所に鉄爪しか取り柄のない一般人一匹放り込むとか何考えてんだ。
ピスコいわく、これまでの私の働きを見てこの程度蹴散らすのに支障はないだろうと判断した、ということらしい。
畜生が。
いつも通り中枢まで抜き足差し足で忍び込み、セキュリティのかかったドアを破壊することで突破。
この時点ではルパンのことは露ほども知らなかった。
なにせルパンは常に予告状を出すタイプではないからな。
ロマンのため気まぐれに予告を出す。そう言ったタイプの愉快犯だ。
派手な破壊音で侵入に気付いたらしい警備員たちをヒィヒィ言いながらなぎ倒し、銃弾の嵐の中をひた走る。
鉤爪で銃弾をはじく絶技は気が付いたら身についていたものだが、これも本能的気配察知と視線察知の賜物である。
そうしてたどり着いた最奥の部屋は、巨大な宇宙ステーションにも似た大金庫が設置されるSFじみた光景の場所だった。
金庫は既に開かれており、その向こうに今回狙う秘宝である宝石と……男が二人。
特徴的なひょうきんなサル顔に目の覚めるような赤いジャケット。かの有名なルパン三世。
そしてもう一人は白い着物に袴姿のお侍さん。腰に差すのは斬鉄剣か。石川五エ門。
ビッグネーム中のビッグネームの出現に、私は言葉もなく肝をつぶした。
おいおいおい死んだわ私。
宝石を掲げるルパンがこちらをちらりと見て、悪童のようなやんちゃな笑みを見せる。
「おんやぁ、物騒なお客さんだこと」
「……まさかかのルパン三世と獲物を等しくしていたとは」
「宝石は俺らが貰ってくぜ、兄ちゃん。悪く思うなよ」
横にいる五エ門は半身を引いたまま無言で刀に手をかけた。やめて。
正直言って五エ門相手とか逆立ちしたって勝てっこない。
だが、ここで黙して見送れば任務失敗となり結構な処罰が下るのも確か。
行くも地獄帰るも地獄とはまさにこのこと。
ええい、ままよ!
「その宝石、僕に譲る気はありませんか?」
「あると思うか?」
「……できれば、ルパン三世と敵対なんて恐ろしい真似はしたくないのですが」
「そいつは残念だったな。知ってるぜ、組織の狂犬バーボン、血に濡れたウルフドッグだったか?」
その変なポエム、ルパンの耳にまで届くほど裏社会で広がってんの!?嘘でしょ?
降谷零ご本人の耳に入ったらと思うと震えが走る。
26にもなってこんな痛々しい黒歴史を作る羽目になろうとは……ぶっ飛ばされるだけじゃすまないなコレ。
「名前ばかり大きくなってしまった小物にすぎませんよ」
「俺はそうは思わねえぜ?ここにいたやつら、全部殺してきたんだろ。しかもたった一人で」
「……ええ、まぁ」
銃弾の嵐の中手加減できるぐらいなら、私は一般人を名乗ってはいない。
血まみれの鉄爪は凶悪にぎらぎらと蛍光灯を反射し、黒いスーツはいたるところが血に染まっている。
吐きそうなほどの惨状だ。というかここに来るまでに一回吐いた。胃痛胃痛。
ルパンは宝石を握り込み、軽くウインクして身を翻した。
「じゃあなバーボン、お前らにコレは渡せねェよ。五エ門、後は頼んだぜ」
「承知」
「ッ逃がすか!」
右の踏み込みからの全力の薙ぎ払い。
凶悪な速度で振るわれた鉄の凶爪を流れるように受けたのは、斬鉄剣を抜いた石川五エ門だった。
おぁぁあ!サムライ!サムライナンデ!!当然なんだよなぁ。
カチッ、と僅かな鯉口を切る音に反射的に大きく左へ身を捩る。
瞬間、美しい剣閃が私の髪を二、三本掠めるように切断した。
タスケテ…タスケテ……。
僅かな軌跡しか見えないような恐ろしく速い白刃のきらめきが3合、4合。
イィンと耳に高周波を残すそれを、内心絶叫しながら全身全霊でかわしきる。
やめやめやめ掠った今掠ったオワアアアアアアヒィン!
隙間を縫ってなんとか爪を振るうも、五エ門はするりと流水の如き動きで通り抜けてしまう。
刀の飜る金属音に勘だけで鉤爪を体側へ添える。
衝撃。
爪に阻まれた斬鉄剣がギリギリと音を立てた。
頬から垂れた血が口に入って鉄の味がする。わずか数秒の間に全身切り傷だらけだ。
あっ今爪の片方が切り飛ばされた!合金をバターみたいに切りよってコイツゥ!
対する相手と言えばほぼ無傷。
鉤爪が服をかすめたため片方の袖が切れ落ちているものの、その程度だ。
私が!石川五エ門に!敵うわけねぇだろうが!!!
「惜しいな」
「……なにがです、石川五エ門」
「お主ほどに優れた獣を拙者はほかに見たことが無い。拙者の剣筋をただ本能のみでかわし切るとは」
刀を構え直す五エ門の姿に私はピンときた。
このビックリ侍、今まで全然本気じゃなかった。もう五段階ぐらいは上がある。
ぞっとしてびっくりした猫みたいな動きで距離を取ってしまう。
うむ、と五エ門は頷いて満足そうにこちらを見ている。
「今、拙者の本気を察知して下がる判断力も。見事」
「……過大評価はやめてください。彼我の力量差はわかりましたから、見逃してはもらえませんか?」
「今見逃せばルパンを追うであろう」
「まさか。そんな命知らずな真似しませんよ」
一応戦闘した実績は残せたからな。
なんの抵抗もせず諦めたっていうと黒の組織からの処罰は確実だが、こうしてかの石川五エ門と戦闘したとなれば話は別だ。
かの人間びっくりショー相手に戦って負けたというのなら、流石の組織もあまり強くは責められないはず。
私はもう一度大きく距離を取り、祈るような想いで言葉を残す。
「宝石からは手を引きます。石川五エ門、貴方と手合わせできてよかった」
「獣、次は人の技術を学ぶといい」
「……参考にさせてもらいます」
やった!これは間違いなく見逃してもらえる流れ!
五エ門は刀を下ろし、私を黙して見送る構えだ。完全勝利S!!!生きるって素晴らしい!
そのまま生きている方のフックを射出し、天井から外へと脱出。
夜闇を駆け抜けて本日の任務は終了である。
全く大変な目にあった。
でもここらで本気で私も武術に手を出すべきか。
おお主人格よボクシングを教えてくれ。
悩ましい限りである。