バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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沈黙の15分①

 

 今日は冬休みのとある日。

 科学館で開催中の大宇宙展に送っていく道中のことである。

 先月夏休みだったやろがい!というつっこみはひとまず置いておいて。

 

 博士の代わりに降谷さんが運転する黄色いビートルは、元気いっぱいの子供たちを乗せてずんずん首都高を進行中だ。

 

 ハイテンションで歌に興じる子供たちの真ん中に座っておいて、コナン君はスマホで都知事への脅迫状のニュースへと真剣な顔つきで見入っている。

 現在のコナン世界の東都知事、朝倉都知事は、何をしたとして叩かれることが常の政治家にしては中々に評判のいい人だ。

 

 唯一、都知事が国土交通大臣だったころに行ったダム建設に際して、村が水没したことは恨みに思う人もいたようだが。

 もうすぐ任期の4年が来て都知事選が行われるが、来期も朝倉都知事一強だろうとニュースでは報じられている。

 

 そんな中起こった都知事への脅迫状。これが選挙戦にどう影響してくるか……メディアはこのニュースで持ちきりだった。

 同時並行して本日は都営地下鉄の15号線の開通式。

 

 つまりは……劇場版名探偵コナン、「沈黙の15分」開幕である。

 

 8年前に宝石強盗をした犯人が、実家のある北ノ沢村に宝石を隠したことから事件は始まる。

 ひき逃げで捕まった犯人が刑務所から出所するころには、ダム建設のせいで宝石は水の底だった。

 だからダムを爆破して水を抜き、宝石を取り戻そうとした……というのが今回起きるであろう事件の真相だ。

 

 あまりにもダイナミックというか、収支の合っていない大規模ダム爆破テロ事件だ。

 たぶん詳細を降谷さんが聞いたら怒りを通り越して白目をむくことだろう。

 夜中にこっそりダイビングとかさ、もっとこう……あったろ……と思わざるを得ない凄まじい凶行に震えが走らざるを得ない。

 

 おまけに、決行日に現場へTVカメラ等を寄せ付けなくするためだけに首都高爆破で都営地下鉄を大破させるという大胆さは、もはや怖いものなど何一つないと思わせる大胆不敵ぶりだ。

 地下鉄の修繕費だけで宝石強盗の被害なぞ軽く超えるというのに。

 不経済にもほどがある。

 

 内心こっそりため息をついていれば、私達の乗る車がトンネルに差し掛かった。

 これから都営地下鉄と1kmほど並走する区間に入る。

 

 無論、まさに今現在犯人が非常駐車帯で爆破の様子をうかがっているのだが。

 

 私は運転を降谷さんに任せながら、口だけでコナン君に問いかけた。

 

「ねえ……その、進行方向の待避所あたりに凄まじい悪意を感じるんだけど」

「!ちょっと待って。確かに人影がいたね。悪意?いったいどういう…」

 

 と、そこで目ざといコナン君はトンネル天井、頭上に設置された爆弾に気が付いたようだった。

 犯人追跡メガネの機能を使ってズームしてそれが爆弾であることを確認すると、にわかに立ち上がって叫んだ。

 

「安室さん車を止めて!爆弾だ!」

「次の非常駐車帯まで無理だ。トンネルを抜けるしかない。もう今から連絡しても交通規制は間に合わないから、君はなんとかして目暮警部に電話して電車を停止させ、車の流れを止めてくれ」

 

 凄まじい無茶振りだが、コナン君ならできるだろうと信じて託す。

 都民は基本的に車の運転技術がバカ高いからな。

 コナン君が道の真ん中で通せんぼでもすれば全車無事に避けて車を止められるのは自明の理なのである。

 

「ッ、安室さんはどうするの?」

「爆破でトンネルが崩落し、電車が落ちてくるのは避けようがないだろう。それが街中に落下しないようにする」

「どうやって!?」

「斬る」

 

 こんなこともあろうかと、と用意していた狐の仮面を雑にかぶって、待避所についたとたんスケボーで飛び出すコナン君を見送る。

 

「安室君、切るってどういうことなんじゃ、まさか地下鉄を…!?」

「ええ、内緒にしててくださいね!」

 

 

 コナン君によって車の通りが無くなった首都高のど真ん中で、私は両袖から斬鉄爪を出してその時を待った。

 

 45秒後。

 地下鉄が凄まじい音を立ててトンネルを崩落させながらなだれ落ちてくる。

 

 両側の壁に子供用ボウリングのようにドンドンと突っ込みながら、地下鉄の巨体がごうごうと土煙を上げて私の方へと迫りくる。

 

 やるべきは一つ。

 突っ込んでくる地下鉄の車両を斬鉄爪で切りつけ、細かく切り落として荒れ狂う勢いを殺し、絶対に下に被害を出さないように押さえつける。

 かつ中にいるTVカメラ、都知事、スタッフ等の人員には傷一つつけないことが要求される。

 

 空前絶後の難易度だ。

 五エ門師匠だったら軽々と成功させるのだろうが、私がぶっつけ本番というのはなかなかにハードな要求と言わざるを得ない。

 一応前にルパンの仕事を手伝いながら突っ込んでくる戦闘ヘリで練習はしたけれど。

 

 「安室さん危ないですよ!」「安室!死んじまうぞ!」「安室のお兄さん!」と子供たちの泣き声が耳に痛い。

 

 いざや、いざや。

 

 目の前に車体が迫る。鉄の巨体が私を押しつぶさんと大質量攻撃でもってアスファルトを削っていく。

 ほんの軽く。とん、と宙を舞う。

 

 一閃。まずは縫うように。

 二閃。暴れうねる車両の合間を。

 三閃。無我夢中で、しかし冷静さを失わずに。

 

 一瞬も隙を見せぬよう、人を即死させるに十分な速度とエネルギーを持った車体を一足飛びで軽く躱し、すれ違いざまに四閃、五閃。

 砕けて折れた車輪が飛んできて、とっさにはじくこと六閃、七閃。

 

 そうして通り過ぎた長い長い車体が、端から砂のように崩れていく。

 乗客だけを傷一つつけることなく残し、都知事やスタッフさん達も身をかがめて軽量な骨組みのみ残った電車の中から降りてくる。

 

 轟音が、止む。

 沈黙と、大気に残る砂煙だけが場を支配する。

 

 ミッションコンプリート。

 

「つまらぬものを、切ってしまった、ってね…」

 

 私は全身汗だくになりながらへたり込んだ。

 よろよろと立ち上がった都知事や中の人達をみるに、皆無事のようだ。

 よかった……成功して本当に良かった。

 

 都知事を先導するように出てきた目暮警部が、きょろきょろと驚愕の表情で電車の残骸を確認し…私の姿を見て目を見開いた。

 

「なっ……国際指名手配犯、フォックステイル!?」

「あ、やば」

 

 私は脱兎のごとく高架下へと飛び降りた。

 こんな白昼堂々警察に取り囲まれるのはごめんだ。

 とりあえず逃げるんだよーっ!

 

 

 

 

 なんてことがありつつ、三日後。

 やってきました北ノ沢ダム、そしてそこにある北ノ沢村。

 

 ここは雪レジャーが人気で、屋台が出ていたりスノーシュートレッキングをやっていたり。コンテンツは盛りだくさんだ。

 残念なことに最近になって経営不振のためスキー場は閉鎖してしまったが、それでも、多くの人が訪れる観光名所となっている。

 

「どうだい、どて煮買ってきたけど食べるかな、コナン君達」

「あ、もらうよ。ありがと安室さん。おーい、お前らも安室さんがどて煮買ってきてくれたぞー!」

 

 わーい、と少年探偵団の子供たちが走って周りに近寄ってくる。

 相変わらず素直で可愛らしい子たちだ。

 どうやら警察に聞かれても私のことは言わなかったみたいだし、頭もとてもいい。

 

 コナン君が胡乱な顔で私の腰を小突いた。

 

「で、結局大丈夫だったの?」

「もちろん。出動した捜査2課から逃げ切って東都に潜伏。ほとぼりが冷めた頃に家に帰ったさ」

 

 今のところ、衝撃の瞬間を映したTVメディアが放送され、フォックステイルの名は東都では大人気になってしまっている。

 彼がいなければ脱線したまま高架下に落下して大惨事になっていた、とか。乗員乗客は全員お陀仏だった、とか。

 その辺が理由らしい。

 

 伝統的な木彫りのお面を被った幼児がTVの取材に「かっこよかった」とか答えたりするなど、ある種のヒーロー的ポジションになってしまっているようだ。

 ルパンからも「よう英雄君。やるじゃねぇか!」と揶揄い交じりの電話がかかってきて、 

まさに踏んだり蹴ったりである。

 

 遠く海外でもニュースが流れて、妖艶な美女フォックス系戦うヒーロー概念が爆誕しているらしい。

 トンチキ日本風の陰陽師っぽい技を浮かべながら、中華の混じっている創作和服で九尾狐耳っ子が電車に腰掛けている絵とかも見た記憶がある。

 

 また、日本のTVで男性と繰り返し放送された結果、男の娘として図らずにもLGBTQに対応した感じになってしまったのもミームを加速させた要因の一つだろう。

 

 生ものは止めろとあれほど言ったろうに。降谷さんが憤死したらどうしてくれる。

 

 なお。……降谷さんには内緒で見たのだが、日本にも最近その思想が逆輸入されて、より口に出してはいけない感じの同人誌と化していた。

 ナンマンダブナンマンダブ。

 おお、なにゆえそのように荒ぶるのか妄想の神よ。

 

「ならいいけど。あんまり派手に動いて捕まるような真似は止めろよ」

「あれはさすがに仕方ないだろう?やってなかったら電車が乗客を乗せたまま高架下に飛び降りてたかもしれないんだし。そうしたらもう、未曽有の大惨事だよ」

「……そうだな。俺たちがあの場にいて本当に幸運だった」

 

 雑談をしながらまったり屋台をめぐっていけば、そこには今流行りの狐面が売っていた。

時事ネタにも素早く対応する屋台の鑑である。

 

 うげ、とコナン君が嫌そうに顔をしかめた。

 全くの別件で来ていた毛利探偵一家が「見てお父さん、狐のお面があるよ!」「けっ、なにがフォックステイルだ。ただの犯罪者じゃねーか」などと会話している。

 園子さんが「でも、やっぱ怪盗KID様の方が素敵よね~」とKIDへと思いを寄せては「もう、京極さんに怒られるよ!」と蘭ちゃんにたしなめられていた。

 

 

 実に平和な一場面だが。

 これからダムが爆破される大惨事が起きるんだよね…と誰にも言えないしょっぱい気持ちを抱える私なのである。

 

 言葉は刃物、使い方を誤れば凶器となる、か。

 名言だが、物理で凶器を振りかざすやつには、たいていの場合言葉は無力だったりする。

 




属性過多狐氏「俺は男の娘じゃないが???」(ガチギレ)(青筋)(血走った目)
バボ主「あっ見てくださいこれ、僕らのアクスタの通販とかやってますよ」
属性過多狐氏「」
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