バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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沈黙の15分②

 

 夜は北ノ沢村のロッジに一人部屋をとってある。

 

 深々と雪の積もる景色を眺めながら、木目調の優しげな部屋でまったり時間を過ごすことのなんと快適なことか。

 

 夕飯は卓上鍋に豆腐と牛肉で、青い固形燃料に火をともして温めると冷えた体によくしみた。

 小さな売店では子供たちが盛り上がり、小学校の担任である小林先生に渡すお土産を選ぶわーわーとした喧騒が心を上向かせる。

 

 と、そこで子供たちが自分たちだけでスノーモービルのコースへ繰り出そうとしたので「危ないから夜にスノーモービルは駄目だよ。いいね」とインターセプトした。

 このロッジ、スノーモービルの体験は5歳から可能だから、ギリギリ子供たちだけでもいけちゃうんだよね。

 しかし雪の降る夜に子供たちだけでスノーモービルはコースを外れる危険もあるし、流石に看過できない。

 

 「えー、歩美楽しみにしてたのに!」「どうしてだよ!」「ちょっとぐらいいじゃないですか!」とブーブー言う子供たちをなだめ、引率のコナン君へと引き渡す。

 

「オメーら!雪の中で事故ったらどうすんだ!スノーモービルは明日、天気が良かったらだ。いいな!」

「もし遭難でもしたら一大事よ。こんな雪深いところで凍死なんてしたくないでしょう?」

 

 灰原さん&コナン君という保護者2人に説教され、子供たちはしゅんとしたようだった。

 そして次の瞬間には気を取り直し、ロッジの中の探検へと繰り出した。

 コナン君は頭を抱え、灰原さんはため息を一つ。

 ほとんどやんちゃな子供たちの面倒をみるのに苦労するパパとママって感じだよね。

 

「コナン君たちはお土産をゆっくり選んでなよ。子供たちは僕が見ておくからさ」

「いいの、安室さん?あいつら今日はいつも以上に盛り上がってるぜ?」

「気を抜くと置いて行かれるわよ。私達でも追いつくのに精いっぱいだもの」

「ははは……さすがは子供。元気は無限にあるってことか。大丈夫、僕ならこのロッジとその周辺の人間の位置ぐらいなら全部把握できるからね。もし子供たちがロッジを出ようとすればすぐに分かるよ」

 

 今、子供たちは向こう側のロビーを駆け回っているようだ。

 小さな気配が元気よく動いている。

 

「安室さんこそ、流石は意味わかんない能力のオンパレードだよね。でも、本当に良かったの?あいつらにフォックステイルという立場を教えちゃって」

「あれは正直ベストな選択ではなかったけれど、仕方ないことだったからね」

 

 通常、小学生相手に「絶対に秘密にしておかなければならないこと」を教えるというのは、一か月後には周知の事実になっているという意味だからな。

 良いわけ無いし、もしウルフドッグの立場だとしたら口封じも視野に入る惨状である。

 

 けれど見捨てるという選択肢も無い以上、私の行動は決まっていたと言っていい。

 

 あとは……あの子たちがどれだけ黙っていられるかだ。

 この3日間で親御さんたちのうわさ話に花が咲いていないということは、ひとまず黙っていたらしいことは分かるが。

 

「別にあなたがどうなってもかまわないけど。あの子たちに手出ししたら承知しないわよ」

「ルパン一味が子供を手に掛けるような真似は名誉が傷つくだろうからしないよ。師匠たちに怒られちゃうだろうしね」

「そう。犯罪者も案外大変なのね」

 

 ルパン一味にはルパン一味らしい振る舞いと気高さが求められる。

 名誉を重んじる彼ららしい決まり事だ。

 だからこそ彼らはルパンの名を騙ることを許さないし、それで非道を働くことを許さない。

 

「そうだよ。だから……あっ、あの子ら、裏口から森に出ようとしてるからちょっと止めてくる!」

「お、おー…。灰原、俺らも部屋へ戻ってようぜ。明日は朝早くにスノーシュートレッキングの予定だろ」

「そうね。あの人がいると子供たちの世話が楽でいいわ。博士なんててんで頼りにならないんだもの」

「そういってやんなよ。博士もいい年なんだし」

 

 裏口から出たところで雪遊びをしていた子供たちを急いで連れ戻して部屋へと預け、私も自分の部屋へと戻った。

 

 彼らの部屋で博士から「すまんのぉ安室君。わしもいい年で腰がな…」と申し訳なさそうにされたので、「いいですよ。お互い様ですから」と笑っておく。

 間違いなく阿笠博士よりは体力あるからな、私の方が。

 いつも素晴らしい発明品を提供してもらっているのだし、この程度苦労のうちにも入るまい。

 

 と、そんなこんなで部屋に戻ると、時刻は8時半を過ぎていた。

 

 ややこじんまりとしたヒノキの大浴場でゆったりした後、部屋へ戻って着替えと寝る準備。

 大浴場では降谷さんと二人して表へ出ながらまったりゆったり足を延ばし、ぐてぐてになりながら今日の疲れを癒した。

 経年劣化でほとんどヒノキの匂いは飛んでしまっていたが、それでも僅かに残る香りが湯気に乗って鼻をくすぐる。

 

 風呂で会った毛利探偵は「鍛えてんなぁ、俺も現役時代はずいぶん鍛えてたもんだ!」と豪快に笑っていた。

 私は正直何もしていないというか、鍛えているのは主に降谷さんなので「毛利先生もまだまだ衰え知らずですよ」と当たり障りのないことを答えておくにとどめる。

 

───たまには僕が筋トレ代わったほうがいいですかね…僕、使うばかりで鍛えたことほとんどありませんし

───これは俺の趣味だからむしろ俺に任せておいてくれ

 

 頑なな声で「俺から趣味を取るのか」と謎の拒絶をされてしまった。

 そ、それならいいんだが。筋トレが趣味って、そんなジャンルあるんだな……辛いことが嫌いな私には理解できない分野だ。

 

───しかし、雪山のロッジにまったり泊まるのも乙なものですね

───そうだな

 

 風呂から上がれば、ケトルで付属のティーバッグから紅茶を淹れて。

 ティーカップは無いので昔ながらの湯飲みに注ぐ。

 降谷さんは書庫の中の小説をゆっくり読みつつ、深層心理内を雪模様へと切り替えた。

 

 窓の外には深々と雪が積もり、暗く数メートル先も見渡せない。

 かつてはスキー場がやっていただろうから、ナイターで明かりもともっていただろうが。

 今となってはただ暗く深い雪が積もってゆくばかりだ。

 

 フォックステイルが白昼堂々地下鉄を解体して鉄くずに変えた件について、組織の方への連絡はつつがなく終わった。

 

 要人をいつでも殺れる、と言う武力評価としては花丸満点。

 移動中の装甲車を装甲ごと切り裂いて殺せると思えば、それはもはやこの世に安全なところなど一つも無いというのに等しい。

 

 一応言い訳としては「車列の最後尾にいて自分の車があったので、車を守りがてらついでに切った」という程度にとどめた。

 そのぐらいでないとあのベストなタイミングで地下鉄の落ちてくるところに居合わせることは不可能だからな。

 割と本当のことなので無理もないし。

 

 オメェも運がねぇな、とウォッカには同情されてしまったが。

 

───明日は僕達もスノーシュートレッキングにいきましょうか

───いいな。俺も白鳥は見たいし。天気予報も快晴だしちょうどいい

───湖までの道ですけど降谷さんが歩きますか?もし面倒なら僕が歩きますけど

───道中で交代して歩くか。雪を歩いて景色を楽しむのも醍醐味だからな

───そうですね。ですが、スキー場が閉鎖していたのは本当に残念でした。せっかくスキーを楽しむ絶好の機会だったのに

───だな。風を切って滑るのは最高なんだがな

 

 屋敷のそれぞれの部屋に入って、布団にくるまる。

 深層心理内では声は距離に関わらず届くから、部屋に入ってお互いの姿が見えなくとも声をかけられるのは便利なところだ。

 

───おやすみ、ゼロ

───ああ。おやすみ。俺の相棒

 

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