バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ルパン一味の力

 

 ルパンとの邂逅よりしばらく経ち、私の組織幹部バーボンとしての立場はより一層強固なものになっていた。

 

 例の件で任務失敗したから大なり小なり処罰はあるものだと思っていたのだが……ところがどっこい。

 私はルパン三世のネームバリューを舐めていた。

 「石川五エ門と直接戦闘した」という、ただそれだけのことが裏社会においてとんでもない価値を持つ。

 それを私はまるで認識していなかったのだ。

 

 あの日の戦果を報告したところ、RUMは仰天。

 わざわざキールが例のアジトへ再侵入し、現場の監視カメラのデータを抜き出して事実確認するなどてんやわんやだ。

 その結果私の奮闘とも呼べぬ儚い戦いが全幹部の元でビデオ再生されることとなった。

 なんだこれ。公開処刑か何かか?

 

 ジンはびっくりするほど凶悪な笑みで「やるじゃねぇか、狂犬」とか言ってくるし。

 テキーラは「おお怖い怖い、あんなん人間の戦いやあらへんで」とわざとらしく震えてるし。

 逆にライは無言で映像を睨みつけていたのは怖かった。なんか喋ってくれ。

 

 そうして結果的にお咎め無し、それどころか組織における隠し玉的な立ち位置を獲得してしまったのである。

 

 強襲の任務はぐんと減り、代わりに「俺らとの約束、破ったらどうなるか…分かるよなぁ?」と脅しかけるウォッカの後ろでにっこり微笑むだけの簡単なお仕事が増えた。

 見せ札というか、組織の抱える最終兵器なポジションに昇格してしまったらしい。

 実際のところは五エ門に手も足も出なかったんだけどね!

 まったく嫌になっちゃうわ。

 

 ちなみに、報告を受けた風見さんは白目を剥いていた。

 穏当な報告をできなくてすまない……あとスコッチへの連絡ありがとう。

 

 僅かだが態度が軟化したスコッチは、最近では一緒に飲みに行ってもくれるようになった。

 「ゼロは起きそうか?」「ゼロの様子はどうだ?」「ゼロをどう思う?」と口をひらけば降谷零祭りなのが玉に瑕だが。

 銃身を口に突っ込んできた時を思えば全然許容範囲内。可愛いものである。

 

 

 さて、当の降谷さんはといえばだ。

 

「起きてください、降谷さん!」

「……あぁ」

「目を開けて、どうか僕にボクシングを伝授してください!」

「………、ぅん」

 

 と、ちょっとだけ返事をしてくれるようになった。

 深い深い水底でぼんやり目を開け、揺蕩っているだけといえばそうなのだが。

 

 いろいろ試したところ、額を合わせれば少しだけだが彼の考えていることも分かるようになっていた。

 ただし今は概ね「眠い」「疲れた」「しんどい」しか伝わってこない。

 仕事に疲れたサラリーマンの休日みたいになってるが大丈夫か降谷零。

 

「強かったですよ本気で。石川五エ門はマジに化け物でした」

「……」

「それから、今後は動きやすくなるはずなので風見さんへ流す情報量も多くなりそうです。取捨選択は必要ですが、そちらは別途」

「……、」

「あと気になったのですがxxxx製薬の動きに不穏な点が見受けられるので、追加の調査を予定しています」

 

 揺蕩う水の中で毎朝毎朝独り言に勤しむ。

 聞いてるか聞いてないか分からないが、報告はあった方がいいだろうという判断からだ。

 

 目覚めた時に少しでも降谷さんが状況を把握しやすいように。

 情報を紙に記せない潜入捜査官の立場ではあるものの、できることぐらいはすべきだろう。

 

「と、ひとまず報告は以上です。それでは」

 

 虚ろな瞳でこちらを見る降谷零にペコリと一礼して意識の底より浮上する。

 水圧差で感覚が狂うような不思議な感じがするが、これも錯覚なのだろう。

 パシャリと水面に顔を出すイメージ。

 

 目を覚ませば、深層心理に潜る前と同じ散らかったセーフティハウスの室内が視界に映る。

 

 足元に積まれているのはボクシングの教本だ。

 休みの時間はこれを読んで動きの勉強をしているのだが、成果のほどは芳しくない。

 本当はジムに通った方がいいのだろうが、下手に降谷零の知り合いにあったらまずいのでね。

 まったくままならないものである。

 

 多少アイリッシュが組み手相手にはなってくれるものの、素人の生兵法なんて効果が出るはずもなく。

 「格闘技の動きを取り入れたいのは分かるが…それでリズムが乱れてりゃ世話ないぜ」と苦笑される始末である。

 

 そうなんだよなぁ。

 私の戦闘スタイルは獣の如き本能任せ。

 それに格闘技を加えようとすれば、どうしてもスタイルがケンカしてしまう。

 

 部屋の隅の壁に立てかけた鉄製の爪をみやり、私は大きなため息をついた。

 

 あれは五エ門に切り飛ばされた旧型に代わり、新たに新調したニュー鉤爪である。

 黒の組織の開発チームがより強靭かつ柔軟にと作り出した逸品で、コンセプトは「斬鉄剣にも負けない強さを」。

 無理じゃろ。

 

 徐に手を伸ばし、爪刃を腕にはめる。

 この鉤爪も随分と私に馴染んだものだ。

 初めは「ドラクエの格闘家じゃないんだからこんなんで戦えるかァ!!」と絶叫していたのに。

 年も変わり、恐らくはスコッチのNOCバレもあと少し。

 

 窓の外を見れば、しんしんと一面白く雪が積もっていた。

 今日は珍しく雪の日らしい。TVを付ければニュースはそれ一色で、交通機関の乱れや渋滞の話でもちきりだ。

 

 心の奥底で微睡む降谷零を感じながら、私はぼんやりと舞い散る雪の一粒一粒を思いやる。

 

 来るその日、私はどうすべきだろうかと。

 




一話時点から書き溜めなど一つもないが、俺はトップスピードで駆け抜けていくぜ!!!
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