バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ルパン三世VS名探偵コナン③

 

 てくてくと二人、コナン君と私達でヴェスパニア王城近くの城下町を歩いてる。

 

 中世ヨーロッパ風の可愛らしいパステルカラーの街並みは、花壇や植木で彩られて非常に見ごたえがある。

 特に観光地として人気の通りになるとその彩りは顕著だ。

 路地裏なんかはちょっと寂れた赤茶けた色合いばかりになるけれど。

 

 そんな風情ある街並みだが、コナン君はその景色を楽しむ余裕はないようだ。

 肩を怒らせて私に憤りを吐露している。

 

「だから安室さん、僕は探偵であって盗みなんて働く気はなくてね!」

「でも、探偵より深く早く真実を暴けるかもだよ?蛇の道は蛇というじゃないか。事実、大きな闇がルパンによっていくつも暴かれ潰されているし───その点は、表沙汰にならないルパンの功績だな」

 

 今の私の声はベルモット仕込みの変声術で女性の声となっている。

 千の顔を持つ魔女のように誰の声色でも自由自在とはいかないが、女性っぽい声を出すぐらいなら可能だからな。

 

 容姿はまんま清楚で可憐な大和撫子。

 大正ロマンをイメージした袴姿は動きやすさを重視してはいるものの窮屈だ。

 自衛用の爪は隠し持っているが、やはり可動域の問題から戦闘力は多少落ちざるを得ない。

 

 コナン君は今にも背中をついて暴れ出しそうなほど憤った。

 こうしてみると小学生さながらだな。

 

「そんなの探偵じゃないもん!それでも安室さん達警察なの!?」

「───それ、公安警察に聞くのは愚問だろ。俺たちが追求するのは真実ではなく正義だ」

「むぅぅぅ…」

「というか、君が言えた義理かい道交法違反のスケボー爆走小学生君」

 

 最近じゃ都市伝説になってるよ、と本当のことを言えば、痛いところを突かれたコナン君はみるみるうちに小さくなった。

 やっぱり本人も気にはしていたらしい。

 

 東都の七不思議化していたもんな。

 しかもそのうち3つもコナン君が独占してたし。

 高速道路を爆走するスケボー少年。幽霊のように膨れては消えるサッカーボール。ありえない場所で打ちあがる大きな花火の怪。

 

 コナン君はなにやらぶつぶつ言いながら石を蹴っ飛ばしている。

 青年らしく青々しく割り切れないものがあるらしい。若いっていいねぇ。

 

 

 と、そこで後ろから声をかけてくるおじさんが一人。

 赤いジャケットにひょうきんなサル顔のおじさんだ。

 一目見てそれとわかる容姿に、しかし親しみすらわく謎のフレンドリーさ。

 

 ルパンはぶんぶんと変装中の私に上機嫌で手を振った。

 

「かわい子ちゃーん、そんなところを一人で歩いてると危ない……って、なんだ、オメーらかよぉ」

 

 露骨にがっかりと肩を落とす。

 半分以上察しはついていただろうに、芸が細かい御人である。

 

「どうも。ゼロの命令もあり、女装について笑ったら死刑ですのでそのあたりご容赦ください」

「いや笑わねーよ。普通に別嬪さんじゃねーか。クオリティ高ぇことで。で、隣のそいつが噂の小狐君?」

 

 にやり、とルパンが悪童のように笑う。

 コナン君がぎくりと肩をすくめて身構えた。

 

「ルパン三世……!」

「そーとも!俺様が本物のルパーン三世!どうよ、この色男具合!」

「ルパンさんのその自己肯定感、時々すごいなって思います」

「それ褒めてる?褒めてねーなぁ?くぉら!俺様への敬意が足りねーぞぉ!」

 

 急に拗ねだしたので「いえいえ尊敬してますよ師匠。ねぇゼロ!───まぁ、時々は」などとヨイショして機嫌を治してもらう事1分。

 私は適度にぶつくさ言うルパンを宥めて本題に入った。

 

「で、どうしました?この辺をうろついてたのは別に偶然ではないでしょう。何かありましたか?」

「いやぁ、単なる野次馬だぜ?この切れ者で話題の子狐君がどんな奴か確かめにな」

 

 ルパンはししっと笑った。

 コナン君が懐に収めた銃らしき重さのそれを目で追っていることに気がついたのだろう。

 

 まあ、ルパンはあんな風にわかりやすく銃を携帯することは少ないので、恐らくはダミーのカメラとかガジェットのたぐいだとは思うが。

 

「しかしまぁ、平成のホームズとも呼ばれた探偵君がちっちゃくなっちゃって!」

「!!!ど、どうして…」

「僕のことも2回目に会う頃には公安だとバレてたからね。どういう情報の流れ方かまるで分からないけど」

「おじさんにかかればこの程度はちょろいもんよ」

 

 ダブルピースおじさんはカニのように両手をチョキチョキと動かした。

 

 本来なら私たちの公安バレが分かった時点で情報の漏洩経路を全身全霊で以て探らねばならないところだが。

 ルパンに関しては「直接警察庁に侵入してちょちょいっと覗き見た」可能性が否定できないので、その辺無駄な労力になりかねないため省略した。

 ベルモットや怪盗KIDの変装能力といい、完璧に別人に成り代わるのは反則過ぎるだろうに。

 

 未だ子猫のように警戒するコナン君相手に、ルパンは軽く笑って手を振り踵を返した。

 もう帰るとは、本気で様子見だけのつもりのようだ。

 

「ま、頑張んな、探偵君。オメーの相手する組織はそこそこなワルで、かつ表に出てくれば世を乱しかねないブツを握ってる」

「……俺の体を小さくしたような、か?」

「そうとも。オメーがどう思おうと、既にオメーはルパン一味の名を背負ってんだ。あの程度の三下に情けないヘマはすんじゃねーぞ?」

「はっ、言われずとも!」

 

 軽々と挑発に乗って、あるいは自分を鼓舞するようにか。

 コナン君は挑戦的な笑みを浮かべてルパンへと言い返していた。その目には煌めくような強い意思が宿っている。

 

 ルパンは振り返らなかった。

 それでもきっと満足げな笑みを浮かべているのだろうと確信できる、ゆったりとした背中であった。

 

 小さくなっていくルパンの背をぼんやりと見ながら、私はコナン君に問いかけた。

 

「ところで、いいのかい?一味扱いされたけど」

「よくない。よくないけど……僕だって、彼らが単純な善悪で量れない人だってことは理解してるつもりだよ」

 

 人を裁くのが真実だとして。真実だけじゃ人は救えないだろうから。

 

 きっとこれまでの経験から出た言葉なのだろう。

 彼が何を考えて自らの主張を変えたのかはわからない。

 コナン君の声は静かに、17歳とはとても思えないしみわたるような深みを感じさせた。

 

 

 

 

 

 夕方。

 

 次元さんを迎えに私たちは元のBARへと戻ってきていた。

 しかし次元さんはといえば酒をまったり楽しむばかりで、もはや酒場の住人と化してしまっていた。

 一杯だけって言ったのに。

 

 私は咳払いして飲んだくれる次元さんの後ろに回り込んだ。

 

「貴方、まだ飲んでらっしゃるの?いけませんわ」

「ブーッ!?!?」

 

 次元さんにくねっとしなだれかかれば「ぐボッ!?」と口にした酒を吹き出すまいと笑いをこらえる音が聞こえる。

 少し攻撃力が高すぎたようだ。

 

「あ、笑いましたね?降谷さんの命令に従い八つ裂きの刑です。───やれ、安室」

「いや積極的に笑わせに来んのは反則だろーが!後ろのガキとか笑いすぎて膝突いて震えてるじゃねーか!」

「コナン君。粗挽き肉をご所望かい?」

「待って僕笑ってないブフゥ笑ってないからヒッ」

 

 コナン君の腹筋が引きつっている。

 これは笑っている判定で死刑だな。間違いない。

 袖の下にある爪をこれみよがしに触れば、ぴゃっと次元さんの後ろに隠れてしまった。逃げ足の早いことで。

 

「ルパンはどうした。あいつはどうしてる」

「僕らがルパンと会ってると何故分かったんです?」

「勘だ。で、どうなんだ?」

 

 勘すげーな。

 長年の相棒としての経験則だろうが、流石はルパンの相棒次元大介と言わざるを得ない。

 

 私は隣の席に座り、なんとなくメニュー表を眺めながら返事をした。

 

「彼はおそらくこれからクイーンクラウンを盗むための仕込みに入るつもりかと。ですが…不二子さんの様子を見るに、間違いなく先回りされて盗られますよね」

「だろーな。いつものアレだ」

 

 そこで、若干厳しい顔をしたコナン君が会話に割り込んでくる。

 

「どうしてルパンさんはクイーンクラウンを狙うの?」

「さぁな。あいつの気まぐれはいつものことだ」

 

 そっけない態度だったので、私は一つ頷いて補足説明した。

 

 こんな機会でもないと犯人側の真意なんて聞くことはないだろうからな。

 推理で暴かれた後の自白なんて、所詮は言い訳。自己の正当化に過ぎないことが多い。

 

「多分、ミラ王女の母親であるサクラ女王と親交があった関係じゃないかな」

「サクラ女王とルパンさんが?」

「詳しいことはわからないけれど。サクラ女王の追悼のためか、あるいはミラ王女の背中を押すためか。彼は今回こんな面倒ごとに頭を突っ込むことにしたんだろうね」

「………」

 

 コナン君は考え込む様な顔で黙り込む。

 相変わらず何を考えているかはわからない。彼は彼で思うところがある、という青く若い時間を感じる。

 

 次元さんが灰皿一杯になったタバコをもう一本新しく取り出して吸う。

 

「あいつもこんなんばっかだ。付き合わされるこっちの身にもなれってんだ」

「けれど、そういうところがいいんでしょう?」

「まあな。けど程度ってもんがあるだろうがよ!」

 

 BARの店主にお嬢様はこちらを、といって渡されたメニュー表はノンアルコールのものだった。

 主人が飲んだくれているため、ということなのか単に未成年に間違われているだけなのか。微妙なところだ。

 

 私はコナン君に「喉乾いただろう?ノンアルコールカクテル、どれがいい?」と声をかけて二人で一息つくことにした。

 コナン君はオレンジジュース───多分いつもの癖で選んでる──、私は降谷さんの選択でライムがメインの創作メニューを選んだ。

 

 難しい顔をしてジュースを口に含み、コナン君は「あっま」とつぶやいた。

 次元さんが「交換するか?」と酒を渡すので「しない」ときっぱりと断ったようだった。

 

 すっかり一味に馴染んでいるようで何よりである。

 




・コナン君
色々考えている。成長は若者の特権。
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