バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
やはり発想力を回復するのは、ジャンル問わずアニメ視聴祭りを開くに限る。
どれだけインプットしたかがアウトプットの質を決める…!
(※個人の感想です)
一夜明けて、ルパンの盗みはやっぱり失敗したらしい。
今回は私の出る幕ではなかったので見学だ。
いつも通り不二子さんに裏切られ、先にクイーンクラウンが奪われてしまったらしい。
罠にかかって閉じ込められたルパンを助けたのは五エ門&次元の師匠ペアだ。
建物を円柱に切り開いていく五エ門師匠の腕前は実に見事だった。
後から現場を見に行ったんだが、やはり切り口の美しさが違う。
工業製品でもノウハウが無いとなかなかこうはならない、美しい正円に切り取られた天井はもはや芸術じみていた。
私も早くああなりたいものだ。
コナン君の方も昨日の段階で既に推理は出来上がっていたようだ。
現場である桜の樹の下にも行けたし、ミラ王女の悩みにも触れた。
王女としての責務が突如降りかかり、悲しみに暮れる時間すら許されないブルーブラッドの立場。
それをせめて拭おうと、ひとひらの時間を提供した峰不二子とルパン三世。
王女の誘拐は重罪だ。
けれどそれで最も救われたのが王女自身であった時、それを悪と一言で断じていいのか。
コナン君は真剣な顔で黙り込む時間が多かった様に思う。
なお。
ようやっと合流した時の毛利探偵の第一声は「うっひょー!こりゃまたすげぇ別嬪さん!」だった。
しかも一緒にいたコナン君は「坊主!この別嬪さんに迷惑かけてんじゃねぇだろうな!」と理不尽なげんこつを喰らっていた。
完全に女扱いだが、バレて無いようで一安心だ。
女装趣味とか勘違いされたらいよいよもって降谷さんが羞恥で暴れ出しかねないからな。
おほん、と咳払いした毛利探偵は私の手を取ってきらめく瞳でずいと顔を寄せた。
「私は名探偵の!毛利小五郎と申します!お嬢さん、お名前は?」
「白入あめ、と申します。この子とはヴェスパニアを旅行中に知り合いまして」
「そうでしたか!いやぁ、こんな異国の地で日本人同士が出会うとは奇遇ですなぁ!どうです、この後一緒にお茶でも」
グイグイくるなこの人。
ちなみにだが、私の名前は0.3秒で雑に考えた「白い悪魔」である。
真実を知っているコナン君が心底呆れた様な顔をしているが、それもまた運命。
幼馴染の父親が男を口説いている現場を諦めて見ていてくれ。
「いえ。嬉しいお誘いなのですが、私はこのあと行かなければならないところがありまして。これでお暇させていただければと思います」
「そうでしたか…いやぁ、残念だ!もし日本に帰ってお困りのことがありましたら、是非この私、毛利小五郎にお任せください!」
「ええ、ありがとうございます」
ふんわり微笑んでやれば、毛利さんは赤面してデレデレと鼻の下を伸ばした。
コナン君が心底哀れな人を見る目で見ている。
諸行無常ってやつだ。
あと降谷さんは自慢げにしないで。自尊心ありすぎかよ。
そんなこんなで。
いろんな事件、出来事があったこのヴェスパニア王国での一幕も大詰めだ。
銭形警部がルパン三世捜索のため皆を王城の東宮へと呼び出したタイミングが一番のチャンスだ。
皆が皆、若干困惑した表情なのは昨日のルパン三世侵入の報を聞いていたからだろう。
私は麻酔銃を構えるコナン君に耳打ちした。
「今回は僕は探偵役には成れないから、毛利先生を狙うといいよ。決して銭形警部を狙ってはいけないよ」
コナン君はチラリとこちらを見てから視線を戻した。
視線の先には銭形警部の広い背中が見える。
「初めからあのICPOの人は狙う気はないけど…どうして?」
「たぶん十秒かそこらで目が覚めるからね」
「ぞ、象でも30分は寝てるよこの麻酔針!?」
引き気味にコナン君が顔を引き攣らせた。
象に効く麻酔銃ってお前、せめて人間用の量の麻酔銃を使ってやれよ。
「君。象が30分も寝るような強烈な麻酔薬を毛利先生に打ってたのか……量とか大丈夫なのか、というか毛利先生が死んでないのは奇跡じゃないか?」
「阿笠博士がいい感じになるように作ってくれたんだ。凄いよね」
「凄いで済ませていい問題か!?医療界に革命を起こすもののような気がするけど!」
「ぼ、僕知らないー」
コナン君はグネッと体を逸らして首をすくめた。
驚愕の性能が明らかになった腕時計型麻酔銃に私は戦慄が止まらなかった。
色々な法に違反していること以上に、利便性とか諸々が凄そうな新型の麻酔薬だ。
もしかしたら今は灰原さんも作成に協賛しているかもしれない。
あのファンタジー薬品APTX4869の制作者と、日本の未来を救う凄腕発明家がタッグを組んで作ったんだ。
これくらい当たり前か……いやいやいや、意味わからんほど凄いんだが。
と、私が悶々としている間にコナン君は遠慮なく麻酔銃を発射した。
私は無視か!というかちょうど毛利探偵がくしゃみしたせいで外して……吸い込まれるように銭形警部にヒット!!
そうはならんやろ。
コナン君は「うん……わざとじゃないよ」とだけ言った。
わざとであってたまるかいな。
銭形警部は5秒フラットで目が覚めるという快挙を成し遂げた。
この記録はちゃんと阿笠博士の麻酔薬成分とつき合わせて研究し、次に銭形警部対策の睡眠煙幕を作る際の手がかりとせねばな。
代わりの探偵役は急遽毛利探偵に化けたルパン三世が務めることとなった。
「くぉら坊主!どこに紛れ込んで…」とつまみ上げた瞬間に耳元でさらっと「なーんちゃって。俺が探偵役やるぜ?」とニヤリと笑ったのだ。
全然変装を見抜けていなかったコナン君は「ルパンおじさん!?」と思わず叫びそうになっていた。
驚くよね、あの完璧な変装術。怪盗KIDといい羨ましい限りである。
さて、今回の女王殺害、王女暗殺未遂事件の犯人だが。
名をジラード・ムスカ・ヴェスパランド、ヴェスパニア王国の公爵だったりする。
原因はヴェスパニア鉱石の採掘によって世界に軍事的進出を果たそうとするジラードと、平和のために鉱石を封印しようとしたサクラ女王が対立したため。
しかし……ある種、ジラードの目的は間違っていない。
弱い国は食い物にされるだけで、食い物にもならない貧しい国は見捨てられるだけだ。
今平和を保てているからといって、列強に挟まれ、狭く産業も薄いヴェスパニア王国では先細りもいいところ。
国という儚い共同体を守るためには、たとえ列強各国に国土を荒らされることになろうとヴェスパニア鉱石に手を出す選択も一概に間違いとは言い切れない。
しかし弱きを切り捨てるとき、それを救い上げようとするルパンもまた飄々と笑うのだ。
犯人によって仕掛けられていた爆弾は、あらかじめ悪意を感じ取った私によって解体済み。
ただ無様を晒した犯人、ジラードは泡を食って逃げ出そうとしたが、衛兵に捕えられてミラ王女に重そうな回し蹴りを喰らっていた。
おー、いい勢いだ。
格闘のセンスがあると見た、ミラ王女。
そして一件落着、と思いきや。
銭形警部の手によって、がしゃん、と私とルパンの手に手錠がかけられた。
にまっと笑うのは銭形警部だ。
「お前ルパンだな?あとそっちはフォックステイル!両方とも逮捕だ!」
ひぃっ!!!
大正解です!
反射的に、素早く隠し持っていた斬鉄爪で手錠を切断。
必要ないとは思うがルパンの分も切れば「さんきゅーなフォックステイル!」と若干の焦りが見える声で礼を言われた。
びっくりするよね、不意打ちの銭形警部。
すたこらさっさと撤退だ。
コナン君はほへぇ、という顔で唖然としてぼんやりしているので置いていく。
どうやらまだ銭形警部も正体を察知できないようだし。ちょうどいい。
後で回収して、次元さんが用意した潜水艦でゆったり帰国と行くとしよう。
3時間後。
無事コナン君を回収すると、「置いて行かれたかと思った!!!裏切り者!!!」と怒られた。
まぁ不法入国かつ日本国に国籍を持たない「江戸川コナン」としての気持ちはわかるが、仕方なかろう。
ごめんごめん、と言って五エ門師匠も持っていた飴ちゃんをやると、余計にプンスカ怒られた。
「この飴なんでみんな持ってるの!!ルパン一味の流行り!?」
「いやぁ、師匠がどデカい箱で買ったものだから余っててさ。君も是非とも消費に協力してくれ───俺はもう食べ飽きた…」
げっそりとした降谷さんの声に同情したのか、コナン君は渋々受け取ってくれた。
と、そこに後ろから様子を見に来たのは不二子さんだ。
へぇ、と面白そうな様子で優雅に笑い、「ぼうや、初めまして」と言って腕を組む。
「っ、峰不二子……さん、だよね?」
「正解。いいわね、本当に薬で若返ってるなんて。羨ましいわぁ。ねぇ降谷ちゃんたち」
ちらり、と視線を向けてしなだれかかる様に私に体を預ける。
色仕掛け…と見せかけて、私に通じないことは不二子さんも理解してるので単なるお遊びだ。
不二子さんも不二子さんで意外と遊び心が豊富なんだよな。
「アポトキシン4869を取ってきてくれないかしら」
「だめですよ。永遠の若さは全ての乙女の夢なのはわかりますけど。ちょっと世の中に与える影響が大きすぎます」
「そう言わずに!あ、それと見たわよあのヴェスパニア鉱石でできた薔薇。素敵だったわ」
ぽい、と胸の谷間に隠していた大ぶりのサファイアを私へと放った。
というか、どこにしまってるんだこの人。
不二子さんはパチリと可憐にウインクした。
「質は超一級品には劣るけど、やっぱり薔薇にはサイズが必要だからいいわよね」
「け、削れと?僕じゃ勿体なくないです?」
「いいのよ。世界に二つしかない斬鉄剣で、世界で五指に入る達人が彫ってるのよ?美しさも十分以上!」
「わかりました。何か削る花に注文はありますか」
「やっぱり薔薇ね。青い薔薇。幻想的で素敵じゃない?」
流れ的に今すぐ削って欲しいのだろう。
不二子さんが納得するような美しい薔薇、というと緊張するので後日ゆっくり仕上げたいところだが、仕方あるまい。
片爪を取り出し、完成形を想像。
ちなみに、デザインは実は降谷さんが担当している。
深層心理の底で複数のバラの写真を組み合わせて私に設計図を見せてくれているのだ。
───今回の図案は奥が少し入り組んでいる。いけるか?
───勿論。ありがとうございます、ゼロ
すっと細く息を吐いて、慎重にサファイアへと刃を入れる。
やっぱり薄さはこだわって、透けるような鮮やかな青薔薇に仕立て上げるのだ。
大ぶりにならぬよう肘を固定し、慎重に奥まった箇所を切り落としていく。
みるみるうちに形を成す青薔薇の姿に、すげぇ…とコナン君が感動の吐息を漏らした。
せやろせやろ。私の血の滲むような訓練の成果だからな。
そうして出来上がった一輪の青薔薇を右手で持ち、私は芝居がかった一礼をした。
気取った仕草で差し出すは青薔薇だ。
「いつもありがとうございます、不二子さん。人との接し方、人脈の作り方。貴方には教わってばかりだ」
「教えてるんじゃないわ、貴方が吸収しているだけ。でも、降谷ちゃんも安室ちゃんもいい子なのには違いないわね」
「恐縮です」
「ヴェスパニア鉱石のものには劣るけど、今回はこれで許してあげる」
ちゅっとひとつ投げキッス。
遠くからルパンによる「この卑怯者ー!ずりーぞ不二子ちゃんのキッスー!」というやじが飛んでくる。
コナン君が苦笑いして私に話しかけた。どういう感情だそれ。
「安室さん、この道でもやっていけるんじゃない?」
「そうだねぇ、分野としては斬鉄爪を使った宝石カービングって感じかな。もし蘭ちゃんに宝石を送ることがあったらそれ専用のものを作ってあげてもいいよ?」
「ば、バーローんなんじゃねぇし!」
「あれ。付き合ってなかったっけ。2人って」
「付き合ってない!」
まだ原作でいうところのビッグベン回の前だったようだ。
若く甘酸っぱい青春の香りに、ルパン一同全員ほっこりしたようだ。
「燃え上がるような大人の恋もいいけれど、こういう一時しか味わえないみずみずしさってあるわよね」と若干残念そうな表情の不二子さんがしみじみと言う。
そしてルパンが「おじさんがその燃え上がる恋を教えちゃうもんね〜!」といって素早く真っ裸ダイブ。
それを不二子さんは華麗に無視し、空振りしたルパンが中空を抱きしめて寒そうに震えた。
ああ、またコナン君がダメな大人を見る目をしている!ルパン一味の格が!傷ついている!
「おじさんたちさぁ……いいのそれで」
「良い訳あるか。オメーが監督してやれ。俺の注意なんぞ聞きやしねぇんだ」
「ルパンおじさん…不潔……」
すっかりツッコミ役として定着したコナン君が次元さんとため息を漏らしている。
仲良しかな。
潜水艦が一路向かうは日本、東都だ。
どうなることかと思ったが、コナン君も一味と順調に交流できてよかったよかった。
私と降谷さんが微笑み合えば、私の様子を疑問に思ったコナン君が「ん?どうしたの安室さん」と問いかけてきた。
私は笑って、「いやいや、なんでもないよ」と答えたのだった。
・ビックジュエル、青薔薇のサファイア
のちに大層な名がつくビックジュエル。作者は最初の持ち主の証言から「狐」と称された模様。
花開くふんわりとした柔らかさすら表現した傑作で、その価値は最低でも億は下らない。
「宝石は多くの人の人生を翻弄してこそ輝く。狐ちゃん、せいぜい世界を翻弄しなさいな」