バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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絶海の探偵①

 

 ヴェスパニアから帰ってきて一ヶ月ほど。

 

 あれから、定期的に不二子さんから宝石カービングの依頼が舞い込むようになった。

 安い宝石から始まり、削るのが勿体無いほどの超級のビッグジュエルまで加速度的に。

 

 フォックステイルの隠し名義の銀行口座にバンバン依頼金が舞い込むが、そろそろ私の職業が分からなくなりそうだ。

 

 降谷さんも凝り性で、それに伴い独学で資料を取り寄せて宝石カッティングやらデザインの勉強を始めたらしい。

 宝石ごとに最も美しく輝かせる図案をいくつもいくつも素描し、深層心理の書斎に溜め込んでいる。

 

 次元さんに事情を聞くところによると、最近になって流通する希少な美しき宝石薔薇として好事家の間で話題になっているそうだ。

 特に上質なピンクダイヤモンドで作った薔薇には、その額なんと24億もの値がついたのだとか。

 ピンクダイヤモンド自体ものすごく高価なので材料費もかなりの割合を占めているだろうが……。

 それにしてもというやつである。

 

 勿論、不二子さんが中間マージンはきちんと取ってるが異論はない。

 その手の金持ち好事家と繋ぎを取れると言う事自体が、千金にも劣らない価値をもつからな。

 

 なお。

 車での任務中の待ち時間に練習を兼ねて安い宝石塊で作っていたら、丁度ベルモットに見られるということもあった。

 練習用の安価なアメジストで作った薔薇を渡せば、そりゃもう感動しきりだった。

 

「キティ!ああもう、こんな土産屋で売ってるような安物の宝石じゃなくて一級品で作れば最高の作品になったでしょうに!」

「ああ、これは練習用でして。日頃から何千万もするような宝石で練習はできませんから」

「練習?まさか最近話題になってる峰不二子の流通させてる宝石薔薇って、もしかしてあなたが作ってたの?」

「そうですよ。ああ、ベルモットにも一つお渡ししましょうか。社交界につけていけるようブローチなんてどうでしょう?」

 

 いうが早いか、私は豊満な胸に抱きしめられてぐりぐりと押しつぶされていた。

 「キティ!あなたってほんと!」と言われたが、うむ。役得である。

 降谷さんはといえば、深層心理内で心底気持ち悪そうに反吐を吐いていた。

 だからなんで貴方はそんなにベルモットが嫌いなんだ。

 

 

 

 そんなこんなで諸々ありつつ、本日は毛利探偵の代わりに海上自衛隊のイージス艦の見学会の付き添いである。

 

 船内に入る最中当然荷物チェックがあったが、警棒は袖に隠し持ってるため問題ない。

 なお、自衛隊に配慮して斬鉄爪は持ち込まない方針だ。

 私たちも徒に他組織を騒がせたいわけじゃないからな。

 

 艦内を巡る前に、軽く見学説明会の時間だ。

 

 今日の予定は1日かけてぐるりと湾内を周回して、元の港に戻ってくる予定となっている。

 見学説明会のあと、艦内の探索、演習見学、宝探しイベントなど盛りだくさん。

 やはりというか子供連れも多く、少年探偵団の皆は大はしゃぎのようだった。

 

「安室の兄ちゃんは船好きか!?でっけー船!」

「好きだよ。大きくてかっこいいよね」

「だよな!!いーず?いぞいぞ?船もデッカくてすげーかっこいいよな!」

「元太くん、イージス艦ですよ」

 

 と、元太くんが興奮して私に無意味によじ登ったりするなどしていた。

 元太くんはメタボ気味で普通の成人男性には少々重たすぎるが、私には何の問題もない重さだ。

 軽く持ち上げて高い高いをすれば、「元太くんをこんな軽々持ち上げるなんて凄いですね!」「歩美も!歩美も!」とパタパタ盛り上がった。

 

「安室さん、ほんと子供好きよねぇ。ああやってるとパパさながらだわ。ねぇ蘭」

「そうね。子供達の面倒も見てくれて、本当になんてお礼したらいいか」

 

 女子高生組が主婦みたいな会話をしている。

 今回本当は毛利探偵がくる手筈になっていたのだが、朝に飲みすぎたらしく私が急遽代打となったのだ。

 

 蘭さんは怒りの鉄拳を寝こけている毛利探偵の腹にお見舞いし、無事悪は滅びたらしい。

 恐ろしいことよ……。

 都大会優勝者の本気の正拳突きを無防備な腹に喰らうとは。

 下手すると内臓が飛び出てしまいかねない。

 

 説明会の途中、船の注排水弁が異音を立てたが、それは特に大きな事件になることもなく過ぎ去っていった。

 

 原作を知る私からすれば、それが他国のスパイと密通して事故死した笹浦一尉の左腕が、注排水弁に引っかかった音だと知っているのだが。

 船の中にはまとわりつくような悪意が一つ。

 Xと仮に名付けられた、客達に紛れ込んだ某国スパイのものだ。

 

───なんだあの男の悪意。子供の様子もおかしいし、児童虐待か?

───かもしれませんね。にしては悪意が強すぎますが

───要注意だな。もしこの見学中に動きがなければ少し突いて様子を見るのもいいかもな

 

 以前の同化の影響で悪意感知ができるようになった降谷さんも、今ではかなり感覚を使いこなしているようだ。

 私がXを注視しているのに気が付いて、コナン君が「どうしたの?」と低い声で問いかけてきた。

 

 彼も私の不可思議な勘についてかなり信頼を置くようになったからな。

 有り難いが、探偵としてそれでいいのか?

 

「あの男から嫌な予感がしてね。単なる予感だから理由なんてないけど。まぁ、世迷言の類だよ」

「そう。……あの人だね」

 

 世迷言だって言ってるのに凄い鋭い目で見るじゃん。

 

 と、そうこうしているうちに少年探偵団の一人、光彦君が蘭ちゃんに腕時計を貸すということで話題が移っていた。

 どうやら蘭ちゃんの腕時計が修理中のようで、携帯も持ち込み禁止のここでは時間を確認する術が無くなってしまったらしい。

 

 確かに、事前に配られたパンフレットにはスマホ持ち込み禁止の注意書きが大きく記されていた。

 修理中とは運がない。

 

 光彦君の腕時計は午前と午後の5時に電波を受信する電波時計らしく、私は少しばかり興味が湧いて光彦君に声をかけた。

 

「かっこいい腕時計だね、ちょっとだけ見せてくれるかな」

「…いいですけど…?」

 

 耳を澄ませる。

 全身の感覚を研ぎ澄ませれば、それが小さな電波を発しているのが感じ取れた。

 

 が、流石にこれを超遠距離から感じ取れる自信はないな。

 電波塔から発信された際の受信反応を数キロもある捜索範囲内からピンポイントで電波位置を探知できるのは、やはり現代の技術の粋を集めたイージス艦だからこそだ。

 

 万が一があったら、このイージス艦のセンサーに頼るより道はないだろう。

 

 その後の演習見学では不審船が流れてくる事件がありつつ、その後の撮影・歓談タイムに移る。

 皆がそれぞれ甲板で自衛隊員と写真を撮っているのをゆっくり見学していると、コナン君がてけてけとこちらに走り寄ってくるのが見えた。

 

「ねぇ、あの女性自衛官。変じゃない?」

「………あの人か」

「知ってるの?」

 

私のちょっとした言葉のニュアンスにも反応して、コナン君は目線を鋭くして問いかけた。

 

「───藤井七海一等海佐だ。自衛隊情報保全隊所属。まえにデータベースを見て『覚えて』いたからな」

「!情報保全隊の人が一体どうして」

「今朝舞鶴湾で不審な船が発見されたのと関係がありそうだ。俺も今、下を動かして探らせているところだ」

 

 降谷さんがニヤリと悪い顔で笑う。

 公安として、他国のスパイが絡んでくる話なんて見過ごせないからな。

 

 なお、自衛隊のデータベースを見たのはルパンの件で忍び込んだついでだ。

 普通公安じゃ他組織のデータベースなど間違っても見れないが、こういう時ルパンの立場は便利だよね。

 

 ニヤッと笑い合うコナン君と降谷さんを尻目に、船はゆったりと航海中。

 まだまだ、この事件は中盤といったところのようだった。

 




狐製の宝石花が売り出されるようになりました。
その圧倒的な美しさに、現代の奇跡として好事家の間で話題となっているようです。
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