バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
午前11時。
ばたばたと自衛隊員たちがせわしなく行き交い、何事か外部と通信している。
どうやら物語の始まり──つまりは、佐々浦一等海尉の死体の一部が発見されたのだろう。
艦内全体の気配を探るが、やはりこれだけの大きさ、これだけの人数がいるとXの特定は困難だ。
日本に対する悪意、絞ればぼんやりと場所は分かるが……まあ、所詮このイージス艦の外は海。
逃げ場などないと思えば、これ以上の詳細な情報は必要ないだろう。
ああ、手持無沙汰だ。
こういう時宝石カービングはちょうどいい時間つぶしになるんだが……。
今ふと思いついたのだが、宝石花の底面を薄く彫刻して、下から光を当てることで壁に暗号を浮かび上がらせる仕掛けを施すのもいいかもしれない。
メモリーズエッグから着想を得ての内容だ。パクリではないぞ。
現在、宝石花には不二子さんの発案で一個ずつ私の作品と分かるようシリアル番号を刻んでいる。
それを利用して複数の宝石花で違う暗号を仕込み、一つの解を導き出せるようにするのだ。
五エ門師匠から紹介してもらった秘境の洞窟に宝石花の群生地みたいなのを作り、それをもって解とする、とか。
ロマンチックでいい気がする。
今度ルパンに相談してみよう。こういうの好きそうだし。
よっこらしょと重たげに立ち上がる。
船内の様子が少しばかり不穏な感じになって来たので、私も少々様子を見に行くとしよう。
さりげなーく席を立てば、その瞬間、逃がさんといわんばかりにコナン君が足にしがみついてきた。
その手の妖怪並みの腕力で引っ付いてくる。なにやら固い決意があるようだ。
蘭ちゃんが私の片足にしがみつく彼に「もう!コナン君!」と怒るが離れる様子はない。
「僕も行く!ね、ね、安室さんもいいよね!?」
「コナン君、安室さんに迷惑かけちゃダメでしょ!」
「ははは。構いませんよ。蘭さんは皆さんと一緒にいてください。何か様子がおかしいので、僕は毛利先生の名前を借りて少し自衛隊員の人に話を伺ってきます」
私の常識だと一介の探偵にこんな不祥事を公開してくれることなどありえないが、なにぶんここは神の定めたる探偵の世界。
「探偵」という肩書を見せれば、身内の悪行から公官庁の不祥事まで、皆簡単に口を割ってくれるのである。
だから私達は表向きの職業を探偵にしているのだしね。動きやすさが段違いだ。
蘭さんに少年探偵団を任せ、私は人のまばらな艦内をコナン君と二人で歩く。
トイレに行くため、やら道に迷って、やらと言い張れるルートを一応選んで。
途中で隊員に止められたら厄介だからな。
私はするりと袖口から通信機を取り出した。
今朝、舞鶴湾で発見された不審船には通信機器や自爆用の爆発物まで積んであった。
公安からの報告で、既にその船が某国のものだと確認済みだ。
何者かがその船を母国との通信に使っていたとしたら。
それは間違いなくスパイによるものであり、それすなわち日本の国防の危機である。
特に現在のこのイージス艦は格好の的だろう。
なにせこの見学会で警備網がガタッと落ちている。
「もしかしてだけど、あれから何か安室さんは情報を得ているの?」
「そうだよ───俺の部下が知らせてくれてな。不躾な某国スパイが何らかの情報を抜いて母国へ送っているようでね。まったく、外事も使えない奴らばかりだ」
「ッ、まさか今朝の不審船って!」
「そうだ。動く通信基地の役割を担っていたらしい。自衛隊も何やら隠しているようで口が重たい。内憂外患とはまさにこのことだな」
「………」
コナン君が考え込んでいる。流石に情報が少なすぎるらしい。
私はコナン君を連れ、死体が運び出されたらしい部屋へと急ぐ。
ちらっとだけコナン君の赤く点滅する腕時計を見て、私はウームと思案した。
「コナン君。ひょっとしてだけど、君のその腕時計、衛星通信機器の類かな」
「え?そうだけど……」
「衛星通信はここではあまり使用しないほうがいいよ。万が一どうしても必要になったら、船内のここ、磁場近くでね」
パンフレットを差し出して一点を指差す。
「あ、ありがと…」となんだか腑に落ちない顔で礼を言われた。
警察官が違法行為のうまいやり方の指導なんてするなよ、とでも言いたそうな顔だ。
自分の尻は自分で拭くのが違法捜査の正しい作法だ。
その辺りはきっちりコナン君にも教えておかねばなるまい。
つまり、バレなければ犯罪じゃない。真理だね。
さて。毛利探偵の弟子という地位は水戸のご老公の印籠よりも覿面に効果を発揮した。
ゴリゴリの機密事項を話してもらったばかりか、「警視庁へ殺人事件発生の連絡をしましょう」という私の提案もスムーズに受けいれられた。
流石に笹浦一等海尉が他国に情報を流していたという情報は話してもらえなかったが、話の流れからして時間の問題だろう。
なにせこの場には情報保全隊員がいるのだから。
現場判断できる権限は十分にある。
コナン君は助手、と言い張って一応この場に留め置いたが、そろそろ蘭さんが不審に思う頃だろう。
私が「そろそろ少年探偵団の皆のところに戻っておいてくれ」と伝えれば、露骨にコナン君はへそを曲げた。
「えーっ、ここで僕に帰れって言うの!?まだ笹浦さんの謎は何も解けてない上に、不審船とのつながりも…」
「というか、昼ごはん食べてきなって話さ。子供の身体でご飯抜きは正直僕としても推奨しづらい。あとで戻ってくればいいからさ」
「う……僕のいない間の情報は共有してくれるんだよね」
「勿論。気兼ねなく栄養補給してきてくれ。あと話題の海軍カレーの感想も頼む。僕も食べたかった」
「はいはい」
コナン君が出て行ってすぐ、目暮警部たちが到着したということで迎えに行くこととなった。
船外に出ればヘリのローターの回る轟音が耳を打ち、波を払っている。
いつも通りの帽子姿で、目暮警部の第一声は「ん?毛利君はどうしたのかね」だった。
「いえ、今日は毛利先生は休養中でして。おそらくは今頃行きつけの飲み屋で楽しんでおられることでしょう」
「あの死神がおらんとは……明日は槍でも降るかな」
その死神デコイだからな…本体たるコナン君はちゃんとここにいるので安心してくれ。
と、そこに駆け出てくる一つの影。
「あっ、目暮警部!」
「コナン君もいたのかね!?どうしてこんなところに!」
えへへー、と笑う彼の顔にはまだカレーのぬぐいカスがくっついている。
というか凄い早さだな。さっき行ったばかりじゃん。
どうやら爆速で食べてやってきた様子。
事件が気になり過ぎて元太君並みの一気食いを敢行したようだ。
今にも目暮警部に怒られそうな様子だったので、私はコナン君を抱き上げて「彼は僕の助手として働いてもらってます。毛利先生に師事する兄弟子として、少しでも僕も薫陶を得られればと思いましてね」と言い訳する。
よくペラペラそんな言葉出るなこの人…とコナン君に呆れた顔をされるが、それはそれ。
というか、この場の言い訳は本来君がやらなくてはならないんだぞ。
「何かわかった!?」
「さっきの今だろうに、進展なんて何もないよ。今から目暮警部も交えて艦内の捜査と事情聴取。その後……ちょっと情報保全隊員の件をつっついてみようかな、と」
「!」
コナン君が真剣な顔で頷く。
ホント根っからの探偵だな、となんとなく感慨深い気持ちになりながら、私はコナン君を抱き上げた。
ルパン「宝石花の群生洞窟作成?暗号による導き?なるほどなるほどぉ〜〜採用!!!!」
次元「声がデケェ」