バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
国防の危機にあったイージス艦より無事帰還して数日。
公安と自衛隊のちょっとした話し合いも交え、内々での落としどころも無事決まった。
なので私達も晴れて自由の身……となったわけだが。
現在、私は自らの拠点であるメゾン木馬にて、宝石花と設計図を散乱させながら頭を悩ませていた。
はてさて、どうしたもんか。
試作品の宝石花の山を段ボール箱の中に無造作に放り込み、そして雑な扱いにちょっと下にある宝石が割れつつ。
勿論、これらは一箱一万円というクズ石だ。特段気にするほどのものでも無い。
失敗して無残な姿になってしまった宝石くずはまとめて丈夫なビニール袋へと入れて口を縛る。
暗号を仕込むための技術の方はまぁ、めどが立ちそうだ。
失敗も多いが、この調子で練習すれば問題なく暗号を浮かび上がらせることが出来そうだ。
だが……。
宝石花の下から光を入れることで暗号が浮き上がるという仕掛けは実にいい案だと思ったのだが、問題も見えてきた。
というのも、インクルージョンの関係で、よほど純度の高いものでないと中の異物に邪魔されて光が散乱してしまうからだ。
必然、高価な美しい宝石で作らなければならなくなる。
また、このサイズに人力で刻むとなると、やはり文字数や情報量は限られてくる。
複雑な暗号を刻むとなると数が必要になってくるだろう。
そんな資金はさすがに無いし、稼げたとしても私も降谷さんも貧乏性なので二の足を踏まざるを得ない。
暗号制作の協力者として呼んだコナン君が、ガサガサと宝石花を入れた箱を漁り、「うわ…すげーな」と感嘆の声を上げた。
「一つ持ってくかい?プロポーズの時に彼女に渡すとロマンチックじゃないかな」
「ん……」
コナン君はちょっとばかり思案した後、顔を赤らめて頷いた。
ロマンチストな彼のことだ。夜景のきれいなレストランとかで蘭さんに渡すことを想像しているのだと思われる。
満更でもなさそうだ。
「そうだ、ちょっと待ってて」と言って後ろに有った棚──こちらは商品・成功作用の棚だ──からコナン君用に一つの美しい宝石花を取り出した。
不二子さんを通じた取引で稼いだ金で得た希少なレッドエメラルドの巨大原石を使って作った赤薔薇だ。
暗号用に取っておいたのだが、ちょうどいい。
この世界の最高の大団円たる蘭さんと工藤新一の結婚式の場などには、これ以上ないほどふさわしいはずだ。
「ほら、どうぞ。僕達の力作だよ。受け取ってくれ」
「うわ………え、待って。これ、ルパンおじさんが持ってても何にもおかしくないレベルの超級のビッグジュエルだと思うんだけど!?」
「まあまあ。ブローチでも髪飾りでも、好きに加工できるよ?結婚式用にぴったりだと思うけど」
「こんなもん付けることになったら、蘭なら萎縮して動けなくなりそう…」
流石は生まれついての上流階級。
すぐさま宝石の価値を見抜いて恐る恐るといった様子で眺めている。
しかし、やっぱり蘭さんに付けてあげたいと思っているらしい。
甘酸っぱい青春の香りににこにこしていると、コナン君は赤面してポコポコと怒った。
そしてむすっとしながらも「ありがたく受け取っとく。でも、代金はいずれ俺が働いて返す」と言って一緒に渡した宝石ケースの中に大事そうにしまってみせた。
贈り物だからそこまで気にしなくてもいいのに。
まあ代金も超高価とはいえ、富豪たる工藤家の資産を転がせばそこまで返済に苦労もしなさそうだ。
「わかった、楽しみにまってるよ。世紀の名探偵君」
「バーロー。なんだその顔。ぜってー親父に頼らず自分で稼いでみせるからな」
探偵の稼ぎであれを購入なぞ普通に考えれば夢のまた夢だが、この探偵を中心とした世界なら夢物語でも無いかもしれない。
と、そんなことばかりしている場合ではない。
暗号についてここまでで何にも進展してないのだから、そろそろ方向性ぐらいは決定せねば。
コナン君の方に視線を向ければ、彼は彼でグチャグチャにメモが書かれた紙をいくつも丸めて頭をひねらせている。
「それで、いい暗号は思いついたかな」
「んーー、いまいちしっくりこねーんだよな。この宝石群を隠すに相応しい暗号なんて、早々…あーくそ、こう、怪盗KIDのみてーに奇麗な感じにどうもまとまらねー。なんつーか、暗号がこう、ブサイクなんだよ」
「ブサイクって。イケメンの暗号とかそういう概念なんてあったっけ?…まあ、急いでないからゆっくり考えてくれていいよ」
「どんなに頑張ってもフツメンぐらいまでしか来ない…俺の美的センスとして合格とはとても言えねぇ…」
んあ゛ーーと、頭を掻きむしってコナン君は悔しそうな顔で転がった。
彼は暗号的面食いらしい。まあ、トリックも何もない雑な犯行に怒ってたぐらいには探偵の矜持があるもんな。
「っつーか、ルパンおじさんが考えればいいじゃん。そう言うの得意そうだけど」
「ルパンさんは解く側に回りたいって言って次元さんにも五エ門先生にもこれ以上のネタバレ厳禁を周知徹底してるみたい。暗号を解いて自分が一番乗りになるのだとか」
「ずりぃ……俺もそれが良かった……」
「まあまあ」と寝転がったままむくれるさまを宥めておく。
気持ちは分かるが、誰かが謎を作らなきゃ永遠に始まらないのだ。
がばり、と起き上がっておもむろにコナン君が頭を下げた。
「ちょっとさ、父さんに電話してもいいか?」
「工藤優作氏かな。もちろんいいよ」
「謎を作るなら俺よりずっと得意だからな。質も折り紙付きだし。なんかいい案出してくれるかもしれねー」
「それは心強い!彼なら僕の正体を言ってもらって構わないよ。伏せたまま喋るのは面倒だろう?」
「芋蔓式に俺のことも話さなきゃならなくなるからパスで」
フォックステイルのことを隠したまま暗号の助言をもらう気らしい。
工藤優作相手に隠し切れるかなぁ…。
目の前で電話しだして、コナン君は部屋の隅によって相手が電話に出るのを待った。
お、無事繋がったらしい。
なにやら話し込んでいる。
1分後。コナン君が悶え出した。
まもなく、「好きでやったんじゃねーよ!親父も好き勝手言いやがって!!」と怒号が飛ぶ。
やっぱりばれたんだな、子狐。
というよりこの話の早さはもともとバレていたと考えるべきか。
キーッと盛大に怒りながらスマホをこちらに渡してくる。
優作氏も兄が職業的にアレだし特に心配していないが、結構いたずら心のある人だからなあ。
スマホを受け取って、「はい、安室です」と相手の出方を待つ。
優作氏は実に楽しそうな口調で、初めからこう切り出した。
「初めまして、ルパン一味の切り裂ける大妖狐、フォックステイル君」
「こちらこそ。世界的推理小説家、工藤優作さん。お話できて光栄です」
私の丁寧な返事に、彼はくすりと笑ったようだった。