バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
月島の宝石店でダイヤを盗むお仕事は順調に完了したらしい。
今回参加したのはルパンと五エ門先生の二人だけ。
わざわざ怪盗KIDに化けて予告状まで出しての大捕り物にしたのは、不二子さんが「KIDっていいわよね、若くって素敵で」とルパンを煽ったからだとか。
たぶんKIDも勝手に名義を使われて高確率でムッとしてることだろう。
怪盗KID現るという言葉にほいほいつられて出て行ったコナン君も、電話で「知ってたんなら教えてよね!!!」とポコポコ怒っていた。
すまんて。
でもルパンが相手でもKIDが相手でもやることは同じなんだから問題ないじゃろ。
ただ、カーチェイス中に師匠にスケボー切られといてかすり傷だけってのは若干意味わかんなくて宇宙猫顔になったが。
時速60km以上のスピードでアスファルトに激突したら人体なんて簡単に大根おろしになっちゃうんだが、コナン君は何をどうやってスピードを殺したのか。
それがわからない。
では、その間私は何をやっていたかというとだ。
ルチアーノの指揮するアジトの内部に潜入して、その内部データを頂戴する任務へとついていた。
偶然ではあるが、日本に侵襲してきているルチアーノの勢力を黒の組織は快く思わなかったようで、直々にジンから「奴らを消せ。俺たちに楯突くとどうなるか教えてやれ、ウルフドッグ」と命令される運びとなった。
組織の命令も重なったのは幸か不幸か。
ルパン一味として一人で動くよりバックアップがある分動きやすいのは間違いないのだが……その代わりに、私は大量虐殺の罪を背負わねばならない。
ジンは「あの偽善ぶったコソ泥共は気に食わねぇが、てめぇの力を誇示するいい機会だ」と凶悪な悪人面を残忍に歪ませてせせら笑っていた。
「テメェも最近はモツを引き裂けなくてイライラしてただろう」とジンには珍しい100%の親切心で任務を回してくれた辺り、もはや救いようがないのである。
「ええ。ありがとうございますジン。前とは違って僕も対人剣術を学びましたから。誰一人逃すことなく…より美しく、より多くの首をとってみせますよ」
「楽しみにしてるぜ、ウルフドッグ。テメェの本性はなまっちょろい狐なんぞじゃねぇ。骨を砕き肉を裂く獣がテメェだ」
「……期待に応えましょう、ジン」
人間を百人ぐらいぶっ殺したような実にいい笑顔でジンは笑った。
この人私と喋るときはいっつも上機嫌なんだよなぁ。
さて、そろそろ具体的な任務に入るとしよう。
潰してデータを全て抜け、との指示だが、つまりは……拠点にいる人員全てを皆殺しにして、そのうえでデータを奪取して来い、という意味である。
ウルフドッグ名義の仕事とはいえ、私に任せられる任務としては久々の荒事だ。
なにせここのところ黒の組織の仕事なんて会合の場に同席して後ろでにっこり微笑むだけだったからな。
実際に手を汚すよりずっとその方が効率的で、かつ実入りがいい。
それでもなお私を動かすという事は、それだけルチアーノの勢力が組織のシマを好き勝手荒らし始めたということなのだろう。
無論だがルパンの方にも確認は取ってある。
私は組織の一員であると同時にルパンの一味としても世間に認知されている。
ルパンの名誉を汚すと判断されたならこの仕事は受けられない、と初めに組織の方にも伝えてあった。
組織もかのルパン三世を敵に回すことはしたくないようで、承諾を得られている。
しかしルパンに確認したところ、今回の仕事、つまりルチアーノとジランバ共和国工作員を相手取ることは表向きはルパン名義ではないそうで「好きにしな」と淡白な返答であった。
フォックステイルとウルフドッグは別名義。
だから、ウルフドッグがどれほど残虐なことをしたとして、ルパンは一切関知しない。
私はすとんと堕とすように心を冷たく、固くしてバーボンとしての身だしなみを整える。
斬鉄爪を大量の血で汚すのは忍びないため、組織の開発した頑強な鉄爪を装着して任務に当たることとする。
イタリアのとある田舎にある豪邸が今回の標的の拠点だ。
自動小銃を持った門番、装甲車が並び、番犬が幾頭もうろついている。
私はゆらりと正面からその門へと近づいた。
斬鉄爪を装備してなくても頑張れば斬鉄自体は可能だ。
「何者だ!」「とまれ!」と強面の警備員から銃を向けられ制止される。
彼らが罪のないただの警備員なのか、ルチアーノに与するマフィアの一員なのかは分からない。
私は自嘲に歪む口角を隠すことなく両爪を振り上げる。
瞬間、派手な鮮血が二名いる門番のうち片方へと降りかかった。
同僚の千切れとんだ臓物をまともに浴びた門番は、叫び声をあげて銃を乱射する。
門番2名と警備員6名をバラバラに引き裂き、門の突起に飾りつけるまで、ものの数分といったところだ。
銃を乱射した男もその銃声を聞いてやってきた人員も血だまりを作って、頭部のない胴体のみが倒れ伏している。
これは外にいる人員が軽々に中に入ってこないように警告の意味をもつ。
入ってきたら殺さねばならない。なるべくなら、入ってきてほしくないと、そんな身勝手な願いを込めている。
そこで、インカムがざらついた音を出した。
どうやらジンからの連絡らしい。
『どうだ、ウルフドッグ。仕事は順調か』
「ええジン。予定通り門番は始末しました。」
『クク、俺が直接出向けねぇのが残念だ。オメェの惨劇が描く赤薔薇をこの目で確認できねえとはな。こっちも仕事が入ってなけりゃ同行したんだが』
また黒の組織特有のポエムしてる……こっちがブルーだってのにワクワクしおってからに。
「では、事が終わりましたらデータをウォッカに預けますので。よろしくお願いしますね」
『頼んだぜウルフドッグ』
軽く会話をかわしたら、あとは流れ作業だ。
相手は変な超能力者も銃弾を剣で弾く超人もいない、一般的かつ弱っちいマフィアだ。
全て見せしめになるよう派手に切り捨てて、示威行為がてら壁や扉に大きな爪痕をつけて進んでいく。
「ば、化け物め!!死ねぇ!!」
「……その程度では死んではあげられませんねぇ」
「んなっ…、グギャアアア!?」
5名が囲んで自動小銃を一斉掃射したが、特段の問題もない。
正面の一人のはらわたを軽く引き裂き、頽れた死体を右側へと投げつけて妨害。
そのまま左側を適当に薙ぎ払い、物陰に隠れていた若い男女2名の腑をかき混ぜる。
果てしなく憂鬱だ。
ここのところルパンにかかりきりでこうした仕事が少なかったから、余計に。
最奥に到着した頃には、あれほど騒がしかったアジトの中はしんと静まり返っていた。
血と、脳漿と、人の死体だけに溢れて。
そんな中で悠々と私たちはデータを奪取する。
奥にあった暗号化されたデータ群は降谷さんがさらっと抜き出した。
この手の作業は私のより降谷さんの方がずっと早いし確実だ。
降谷さんは何も言わず、ただ深層心理内で私の背に手を優しく当てるのみだった。
全身血まみれで外へと出れば、ウォッカが待ち合わせの場所で車を止めて待っていた。
「よぉ、ご苦労だったな」
「ありがとうございますウォッカ。ああ、シャワーを浴びたいですね…」
「そのまえにほら、濡れタオルで体を拭いとけ。着替えも持ってきたから、拭いたらこれに着替えな」
「助かります」
こういう気遣いがウォッカの真髄だよな。
ありがたく頂戴したタオルで浴びた血をぬぐい、私は車の後部座席へと乗りこんだ。
「データの方はどうだ?」
「抜かりなく。当初の約束通りルパンともデータは共有させていただきますが、問題はありませんね」
「ああ。好きにしていいそうだ。俺らとしてもルパンと敵対なんざ御免被るからな」
「はい。では、こっちがコピーです。ジンに渡してもらえると助かります」
USBを渡せば、ウォッカは喜んで受け取った後、助手席のポケットにそれをしまった。
「しっかし、相変わらず凄ぇな。あの数の武装した人間を全員殺っちまうなんて、人間の仕業とはとても思えねぇぜ」
「はは、石川五エ門なら僕の数倍は早く、かつ同じ結果を出せたでしょうね」
「ルパン一味は例外だろうがよ。まあ、オメェがうちの組織所属でほんと良かったぜ。ジンの兄貴も今回の結果には満足だろうしな!」
黒塗りの車は田舎の坂を下っていく。
誰一人生き残りのいないアジトを残して、悠然と、ゆったりと。
降谷さんは何も言わず、ただデータの中身を静かに確認していた。
バボ「組織のトップかつ資金源である『あの方』の所在さえ掴めれれこんなこともう終わりにできるのに…」
降谷「焦るな。焦ればここまで築いてきた信頼を失いかねない。俺たちはただその時を待ち、雌伏の時を過ごすのみだ」