四代目カラクリ吉右衛門伝   作:於涼

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コナンで怪盗キッドのエピソード20個ぐらいあるんですね……。ヒロインは決まってるんですけど、全部の話やっていったら出てくるの結構先なってしまいそう。


♦ 怪盗たちのプライベートの巻

 

 

 「ああー…」

 

 黒羽がカウンターテーブルに突っ伏しながら気の抜けたうめき声を上げている。オレたちは放課後ブルーパロットに寄り”仕事”の準備をしているのだが、黒羽がずっとこの調子なため作戦会議が始まりそうにない。

 

 

 「何だよ、昨晩”天使の王冠”盗むのに失敗したからって不貞腐れているのか?」

 

 オレは小道具の調整をしながら、仕方がなく理由を尋ねる。

 

 「いやあ、ミスったこと自体というよりは警部に顔を見られたっぽいことが不味くって…」

 

 「マジ!?」

 「本当ですか!?」

 

 

 黒羽の言葉にオレと寺井さんが同時に思わず作業の手を止める。

 

 「夕飯の時じーっとこっち見てたしよお」

 

 ……相変わらず中森家と仲がいいことで。”仕事”終わりの怪盗と警部が一緒に夕飯とは事情を知っていればこれ以上なくシュールな絵面だ。

 

 「もしかしたら警部だけじゃなくて青子も……!」

 

 「ほーお」

 

 なるほど、黒羽が珍しくここまで落ち込んでいる理由が分かった。中森さん絡みだとコイツは面倒くさくなるのだ。

 

 「今度の日曜いきなりデートしようって言ってきたんだぜ!」

 

 確かにそれは変なことだ。傍目からみるには黒羽と中森さんはお似合いだが、本人たちはどちらも素直じゃないので、正面からデートに誘うなんていつもならありえない。

 

 「今度の日曜といえば……」

 

 寺井さんのぼやきに黒羽は間髪入れず返す。

 

 「オレが天使の王冠を盗むって予告した日!」

 

 

 相当参っている様子の黒羽に寺井さんは優しく相槌を打つ。

 

 しっかしなあ……黒羽はいつも無防備すぎるんじゃないだろうか?

 

 「もっと顔隠す服装の方がいいんじゃねえの?シルクハットに片眼鏡だけなんて泥棒舐めすぎだろ」

 

 「キッドはただの泥棒じゃねえの。怪盗でありマジシャンなんだ!地味な装いしてればいいってもんじゃない」

 

 ふーん。まあ初代からあの格好らしいしそういうものなのか。それにしても、ずっとグチグチいっている黒羽の様子には少しイラっと来る。

 ……そのため、冗談のつもりで口走ってしまった。

 

 「そんなに”キッド”を大切にしたら”黒羽快斗”の方がおざなりになっても仕方がないんじゃないか?

 怪盗業(しごと)中森さん(プライベート)どっちが大事なの!ってね」

 

 「……」

 

 黒羽がテーブルに肘をつき顔を傾けながらこちらを見つめてくる。な、なんだよ?

 

 

 「……オメーじゃ分からないだろうよ。家族も、幼馴染も、大切な人がいないオメーにはな」

 

 

 ……あ゙??

 

 

 

 

 

 

 

 こうして互いの地雷を踏みぬいた結果、オレたちはけんか腰になり会議は進まなかった。そのため、オレは細かい話は寺井さんに任せ早々と帰路についた。

 

道端の石を蹴りながら古びた街並みを歩く。

 

 「別に、オレだって大切な人ぐらいいるし……」

 

 秀吉兄さんとか。

 ……でも、あの人を「傷つけてしまう」なんて心配は確かに抱いたことないかもしれない。兄さん頭脳とメンタル人類最強格だしな…。本気で落ち込んでいるところを見たのは”由美タン”と別れた時ぐらいじゃないか?

 

 幼馴染……というか同年代の友人はまともにいた試しがない。幼稚園いってないし、小学校も最初の一週間でクラスに馴染めず面白くないと不登校で中学もその調子。ジジイも唯一の跡取りにたっぷりと時間をかけて技術を仕込めるということで何も言ってこなかった。

 ジジイが死んだあと、オレが一人っきりになることを心配した兄さんが高校に通うことを勧めてきたので、今一応学生をやっているわけだが……。

 

 あれ?もしかしてオレって相当人間関係が希薄??

 

 普段仕事で色んな人とは関わるから意識したことがなかったが、プライベートの関係は……

 

 

 考えてたら虚しくなってきた。

 黒羽の悩みはオレにとって高尚すぎるものだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日オレと黒羽は顔を合わせても話さなかった。

 苛立ちはすでに消え去っていたのだが、単純に気まずかったのだ。向こうもそう、な気がする。

 

 そして予告日、かつデート当日の日曜日。

 

 

 「信じてたよ……来てくれるって……」

 

 「約束したじゃねーか!……バーカ」

 

 

 ……オレは黒羽を絶賛尾行中だった。

 

 いや、別に彼らのデートを監視したいのではない。普通に仕事のサポートだ。

 先日はからかってしまったが、実際問題怪盗キッドの正体がバレるのはオレも困る。黒羽も今日仕事があるのに中森さんからのデートの誘いに乗ったからには何か勝算があるのだろうが、どうも不安だ。

 

 2人のデート場所は東都定番のデートスポットであるトロピカルランド。正直男一人でこの場にいるのはかなり居心地が悪い。

 予告時間の夜までは黒羽も普通に中森さんとのデートを楽しむだろう。そこまで介入する気はない。オレは適当なカフェに逃げ込んでデータ収集でもしておこう。

 

 

 そしてずっかり日もくれた19時過ぎ頃。

 

 「確か予告は20時。黒羽もそろそろデートを切り上げて動き出しているか……」

 

 ノートパソコンの右下に表示された時刻を確認したオレは、いつも通りホー太郎のカメラとマイクを確認する。

 

 出力される映像は真っ暗だ。まだキッド衣装には着替えていないのか?

 

 『早く観たいねー!』

 

 中森さんの楽しそうな声。他にも様々なアナウンスが雑音として聞こえる。場所はこの遊園地内にある映画館か?

 

 『あ、オレ3D映画って苦手なんだ……外でまってるよ』

 

黒羽は適当に理由をつけて場を離れようとしている。それもそうだ、もうすぐ予告時間まで30分を切る。

 

 

 カチ

 

 

 と、金属音が聞こえた。

 

 『ごめん……もう少しだけ…もう少しだけじっとしてて……』

 

 えっ、もしかして今の音は黒羽に何か固定器具をつけた音!?

 

 

 オレはパソコンを乱雑に閉じ、慌てて映画館に向かう。

 

 

 

 映画のチケットを買い、こっそり二人の後ろの席に座る。

 ホー太郎のGPSは映画館から遠ざかっていて、黒羽の席には中森さんと腕が手錠で繋がれたゴム製のダミー人形。上手く映画館を抜け出せてはいるようだ。

 

 ……しっかしこのダミー人形遠目から誤魔化すことを想定して作ったから見た目の適当さは暗がりで何とかなるとしても、手触りもまんま人工物なんだが……。

 

 中森さんは黒羽にアリバイを作るためにわざわざデートを企画し、上映時間がはっきりしている映画館に連れ込んだ、と。父親の警部に色々聞かされただろうに、黒羽を信じているようだ。

 

 そして黒羽は怪盗キッドとしての予告を守りながらも、そんな中森さんの気遣い、信頼に応えるため上映時間約40分の間に仕事をやりきってここに戻るつもりだと。

 

 

 ……無茶なことをするもんだ。

 

 

 オレはそっと黒羽のダミー人形の首後ろにスピーカーを取り付ける。

 さあ、ここからは名演技の時間だ!

 

 

 「きゃあ!ヒーローが死んじゃう!」

 

 『ほ、ほんとダー!ヤバいナー!』

 

 

 め、名演技だとも。

 変声機を使い黒羽の声で受け答えをする。中森さんは映画に夢中になっているのもあって違和感は感じていないようだ。

 

 ……もうそろそろアイツの仕事は終わったか?

 

 イヤホンから黒羽の様子を窺う。

 

 『中森警部!!あなたの身の回りの人間はすべて知り尽くしているのだよ!!』

 

 大層な言い回しのセリフが中森さんの声で聞こえる。

 さてはアイツ中森さんに化けたな?前回の”黒羽快斗”の顔も警部を動揺させるための変装だったということにするらしい。

 

 だが、まだ展示場にいるのか?上映おわりに間に合うか怪しいぞ……!

 

 オレはそっと上映場の一番後ろに移動し、ディスプレイの明るさを落としながらパソコンでソフトウェアを起動させる。

 

 「このパッチを仕込んでおけば……」

 

 プログラムを打ち込みながら黒羽のGPSの位置情報も確認する。

 ……ん?なんかえらいスピードで移動してるな?イヤホンからは暴風が吹き荒れているかのような風音とかすかに悲鳴が聞こえる。

 ……ほんと何してるの?

 

 本当に映画もラストシーン。黒羽はまだか!?

 

 

 『あと10秒!!うわあーーーー!!

 ……んん?パラシュート?』

 

 怪盗服に仕込んでいたパラシュートが起動したようだ。今日はハンググライダーも持っていなかったはずなのに上空に放りだされたのか。

 ……ともかくGPSは黒羽が丁度この真上にいることを示していた。

 

 「黒羽!!オレが時間稼ぎをする!だからとっとと着替えて席に戻れ!」

 

 『お、おう……お前今日オペレーターしないって……』

 

 「早く!!」

 

 黒羽をホー太郎を通して急かしながら、パソコンのEnterキーを押す。

 

 

 「あれえ、映画終わったのに照明つかないね?」

 

 『これからエンドロール流れるんじゃねえの?流れた後におまけシーンがあるかもしれないからオレもうちょっと待ってたいナー』

 

 ……照明を落としたのはオレだ。この映画館の管理人には悪いが、これでいくらか誤魔化せるだろう。

 

 

 そうこう中森さんを引きとどめている間に、黒羽が無事戻ってきた。

 

 

 「中々スリリングな休日だったよ……」

 

 オレは首筋の汗を拭いながら照明のハッキングを解除し、映画館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の月曜日。

 ふと食欲を誘う匂いに誘われオレは目を覚ました。

 

 教室の時計が示す時間は12時半。もう昼休みか。

 

 「ん?」

 

 こ、これは……!!

 

 オレの突っ伏していた机にメンチカツサンドが置かれている!しかも2個!!

 これはこの学校の購買で一番高いパンなのだ。いつも美味しそう…と横目で見つつも手を出せていなかったのだが……。

 

 

 「その……昨日はありがとよ」

 

 気づけば横に黒羽がいた。

 

 「べ、べつに……」

 

 これもしかしてお礼ってことかな……?食べていいのか?オレはチラチラとサンドに視線を向ける。

 

 

 「それ、奢りだ」

 

 「サンキュー!!

 

 黒羽に明言され、オレはすぐさまメンチカツサンドをかじる。

 「すげえ食い意地……」と呆れるような目をされたが気にしない。ずっと食べたかったやつなのだ!

 

 

 「ジイちゃんに聞いたんだがお前小中学校いってなかったんだな……。家族も好きでいないわけじゃないだろうに……酷いこと言った。悪かったよ」

 

 「いいよ。友達いないのはまあホントだし……しかも家の事情とか関係なしにオレの自業自得だし。オレこそお前が真剣に悩んでいる時にからかったりして悪かった!」

 

 ジューシーな肉厚を堪能しながらオレは黒羽に頭を下げる。

 ……いや、これ超旨い。

 

 昨日の仕事の詳細を色々黒羽は話してくれた。

 中森警部に腕を掴まれたりと中々に危ない橋を渡っていたようだ。しかも映画館に戻る時はジェットコースターにしがみついてきただと!?……それであんなに移動速度速かったのか。

 

 「なあ、今日放課後暇だったりしねえか?」

 

 「仕事もひと段落ついたし特に予定ないけど……」

 

 ふいに予定を尋ねられた。新しいターゲットもう決めたのだろうか?

 

 

 「いや、仕事の話じゃなくて……。

 クラスの奴ら誘ってゲーセンにいかねえか?」

 

 「ゲーセン?」

 

 当然急に。しかもクラスメイトを誘うって……。

 

 「友達いないなら今から作ればいいじゃんか!せっかく学校来てるなら皆と仲良くなった方が面白れーぜ!まあ……もとからお前に友達0人ってことはねえけどな……

 

 

 「なになにー?みんなで遊ぶの?」と中森さんも参戦し、オレが口を挟む暇もないままあっという間に放課後クラスメイト10人ほどでゲーセンに行くことが決まった。

 

 

 

 

 なかば強引に連れて行かれたゲームセンターはオレにも馴染みがある江古田駅前のビルの一角にある店だった。

 

 

 女子は太○の達人といったカジュアルなゲーム、男子はマ○カーや頭文字○等を楽しんでいる。オレは千円札を崩し100円玉を大量に作ってからクレーンゲームの台へと向かった。

 

 「おーい、子庵くん。せっかく皆なと遊ぶ機会作ったのに真っ先に一人用ゲームに行くとはどういう了見だ?」

 

 「別にいいだろ?これが一番好きなんだし……。

 あっ、中森さん。この中に欲しいものがあれば狙うよ?」

 

 黒羽にジト目を向けられるが、気にせず隣にいた中森さんに声をかける。

 

 「ホント?じゃあ……アレがいいかな!」

 

 「仮面ヤイバーのフィギアだあ?あいっ変わらずオメーお子ちゃまだな!」

 

 「好きなんだからいいじゃない!!」

 

 いつものようにじゃれ合う二人を尻目にオレは目を細めながらアームを操作する。

 ……確かこの台はわざと少し右に重心を偏らせるのがコツっと。

 

 

 「わあ!すごーい!!5回でとっちゃった!」

 

 「本当は3回で取りたかったんだけど。……腕なまったかな」

 

 頭を掻きながらオレは中森さんにフィギアの箱を手渡す。

 

 

 「へえー、子庵ってそんな特技あったんだ!」

 「私も欲しいの取ってもらおうかな……」

 

 

 気づけば周りにクラスメイトたちが集まっていた。慣れない注目にどうも気恥ずかしくなる。

 

 

 「おや、鍵太郎じゃないか!久しぶりだなあ……2年ぶりぐらいじゃないか?」

 

 名前を呼ばれ振り返ると迷彩柄のジャケットを着た中年の男性がいた。

 

 「あっ、店長!」

 

 

 昔このゲーセンに通い詰めてた時以来の知り合いだった。

 

 「あの……子庵のやつ、ここの常連だったんですか?」

 

 黒羽が店長に尋ねる。

 

 「ああ、一時期毎日のように来てくれていたんだ。クレーンゲームが上手くってね……うちの目玉景品は全部彼に持っていかれていたよ。……あっ、そう!丁度このランキング!」

 

 そうそう、中学2年生ぐらいの頃ハマってたんだよな……。

 

 ……ってまて。ランキングって……

 

 

 「クレーンゲームの1万円単位の平均景品取得スコア!鍵太郎未だに1位の座を譲ってないよ!ほら、横のはその時の写真……」

 

 オレはぎこちない挙動でクラスメイトの反応を見る。

 

 黒羽含めて全員ポカンとしていた。

 

 

 「わあ……!子庵くんがパッチリ目を開けてるの初めて見た!」

 

 「いや、そこじゃねえだろ」

 

 中森さんの反応に黒羽がツッコむ。

 明らかにみんなが驚いている理由は……

 

 

 「子庵、オメー元ヤンだったのか?」

 

 

 写真に映るオレが髪を全部金髪に染めていたことだろう。ジャージ姿でむすっとした表情。不良と言われても文句の言えないただずまいなのだが……

 

 

 「ちげーよ!ちょっとジジイに嫌がらせをしたくて染めてただけだって!別に悪いことはしてなかったぞ!」

 

 古臭い考えの頑固ジジイと思春期の男子が二人暮らしをしていたらまあ……見事にオレは反抗期を迎えた。ゲーセンに来ていたのもジジイとずっと同じ場所にいたくなかったからだ。決してワルをしていたわけではない。

 

 ……不登校金髪ニートと単語を並べると響きは最悪であるが。

 

 

 一歩ずつ後ずさりをしていくクラスメイト。

 

 「いや、ほんと元ヤンとかじゃないから!!

 おい、黒羽!店長に写真のすり増しを頼むんじゃない!」

 

 

 オレの叫びが店内に響き渡る。

 

 

 

 

 

 この日はオレの黒歴史がお披露目される形でお開きとなった。

 

 後ろめたいものではないが、決して他人に見せたい姿ではなかった……。

 

 ゲーセンで大量にラジコンをかっさらってはバラして絡繰り人形に組み込んだり……伝統的な手法に拘る祖父に見つかっては怒鳴られまた家を抜け出すループ。

 結果、地味顔のくせして似合わない金髪にしちゃったりして……。

 

 

 

 後日教室では、女子には一歩距離を取られ、男子には「お勤めご苦労様っス!!」と冗談交じりに挨拶されるようになった。

 

 

 「なあ……これで本当に友達できるのか?」

 

 「んー…、知らね!」

 

 何とも無責任なことを言う黒羽。

 オレは無言でコイツの足を蹴った。

 

 





コナン映画のエンドロールは本編(断言)
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