魔術士ヒーロー・ノイタ   作:レイジー

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Spell.1

「ばっクンよぉ、前から気になってたコトあんだけど。聞いていい?」

「ンだよ。アホなこと抜かしたら爆死させっからな」

「お前って緑谷のこと、好きなの?」

「死ねぇッ!!」

 

 下校。夕暮れ。

 二人並んで帰る爆豪勝己(ばくごうかつき)と――能異(のい)達人(たつひと)

 勝己は達人の顔を躊躇なく【爆破】させるが、達人の顔は火傷どころか伊達メガネに煤一つない。

 

「や、だってさ。嫌いなら無視すりゃ良いじゃん。お前の口が悪いのは知ってるけどそれでもヒーローを本気で目指してそのために努力するイイヤツなのは知ってるんよ。で、そのキャラブレを解釈すると――好きな子にイジワルしちゃうツンデレ小学生メンタルなのかな、って」

「やっぱ死ね!! 誰がツンデレ小学生メンタルだ!」

 

 顔も、メガネも、制服も。

 一切がノーダメージで、それどころか【爆破】の軌道がズレてすらいる。

 

「オレぁ、あのナードが無個性のくせしてヒーローになるだなんだってほざいてんのが気に食わないだけだ!」

「まあ、言わんとしてることはわかる。アイツは努力してない。個性訓練は無個性だからさておいても、筋トレせず身体能力も、勉強も平凡。ヒーロー分析はしてるみたいだけど正直その程度ならヒーロー志望としちゃありふれてる。本気で目指してる勝己としちゃ不愉快だわな」

「……おう」

 

 これは原作主人公(みどりやいずく)がオールマイトと出会うよりも前の話。

 出会わず、陰気な願望だけを秘めた夢見る少年だった時のこと。

 

「そういえば、今回のテスト。学年何位だった? 全教科1位、総合1位?」

「……ぃ」

「はいぃ?」

「2位だよクソボケが!! 英語でスペルミスしてオメーに負けてんだよ!!」

「アッレー? 雄英志望の爆豪勝己くぅぅぅん? そんな調子でだぁいじょぉぶぅぅぅ?」

「死ねボケェェェッ!!」

 

 ともに学業に秀で、1位の座で並び、争う仲。

 今回は運悪く勝己の凡ミスで1位の座から退いてしまったのを良いことに達人は全力で煽り倒す。

 

「ヒーローインタビュー、ヒーローインタビュー。今回のミスによって市民が3名犠牲になりましたが、今のお気持ちは!?」

「テンメェェェ、欠点数(それ)知ってるってことはハナからァァァ」

「知ってた」

「クソガァァァァッ!!」

 

 怒りを発散させるがごとく両手から爆破を放つ勝己を見てケラケラと笑う達人。

 

「ま、今回は学年1位の俺が今度ラーメンを奢ってやろうじゃあないか」

「激辛ラーメン替え玉ギョーザ付き」

「おう。いつ行く? 俺はいつでも」

「日曜」

「明後日か。明日は勉強か?」

「訓練付き合え」

「……しゃーねーな」

 

 2人は勝った方が奢る、という独自のルールで勝負をしている。

 キッカケとしては単純で、子どもの思考だった。

 曰く『ヒーローは困った人間に施す者』。

 つまりはヒーロー志望者としてのプライド。

 

「場所は抑えてるの?」

「おう、公民館。朝から2時まで抑えた」

「あれ? 公民館って1人で確保できる時間って2時間までよな? も1人来るの? ひょっとして心操?」

「いや、アイツは筋トレに集中し過ぎて期末テストで3位になったから来れねぇって」

「ありゃりゃ、そりゃ残念。で、誰?」

「オマエ」

「俺行く前提かよ……」

 

 勝手に名前を使われたことに苦笑する達人。

 よくあることだった。

 

――――――――――

 

「ホント、個性使える場所の提供ってのはありがたいよねぇ。家の中じゃ出来ること少ないし」

「たりめーだろぉが。個性は身体能力、完全に使えねーとか社会がおかしいだろ」

「それもそうね~。いつも通り格闘じゃ勝己には勝てなかったけど、個性ありの戦いなら負けねーぞ、と」

 

 公民館など、自治体によって個性使用を許可された場所というのは少なくない。

 基本的には個性を好きに使っても構わず、そういった場所では管理によって定期的なメンテナンスが行われているため多少の破損も許容されている。(破損した際は申し出る必要がある)

 

『3・2・1――』

 

 施設の機能。カウントダウンの機会音声がゼロを告げる。

 

「くたばれェッ!!」

 

 勝己がフライングと誤解しそうになるほど正確に、ゼロのタイミングで爆発加速をする。

 床が黒と熱の線を引く。

 勝己の爆手が達人の顔を狙って覆い掛かり――達人の手に握られた杖から白風が吹き荒れ勝己が吹き飛ばされた。

 

(アヂ)ッ」

 

 白風が勝己の【爆破】の炎で燃やされ、その熱が達人にもかかる。

 

「自爆してんじゃねぇッ!」

「アブネッ」

 

 達人の姿が掻き消え、数メートル先に出現する。

 

「喰らえッ、速射構成!」

 

 叫び、突きつけた杖先から無数の球体が放たれた。

 ピンク色の球体の引く軌跡は、白みを帯びた黄色で、姿はさながら手持ち花火のよう。

 

「ッち、ンだよ、それ」

「マナ追加のスペルを入手したから組んでみました~。2倍呪文とスピッターボルトとチェーンソー2枚積み。訓練用にダメージ調整でライトショットとダメージプラスも」

「クソが」

「ホント勝己って初見殺しに弱いよねぇ」

「なんでもありの相手にできるかボケェッ! テメェは一方的に俺の手の内知ってるだろォが!」

「セヤナー」

 

 圧倒的な手札の多さを誇る達人の個性。

 だが何よりも強いのは初見性。

 どれだけ情報を知られようとも達人自身計り知れない個性の底はほぼ必ず初見を強制できる。

 継戦時間の初期段階において、達人の個性は対策を踏みにじる。

 

「次やるぞ、次ィ!」

「はいよ」

 

 が、勝己も黙ってやられはしない。

 達人VS勝己。その勝率は五分五分。

 

 達人の個性の名は【魔術士】。

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