「―――ふぉえ?」
「あ? んなおかしな声出してどうした?」
今彼が名乗ったのはすでに前世の記憶がなくなってきている私でも聞き覚えのある名前だった。
禪院甚爾。それは呪術廻戦の中でも人気なキャラで、当然私も好きだった。まさか、その本人が目の前にいるなど誰が想像するというのだろうか。
「い、いえ! 大したことではないです!」
「んだよ、気になんだろうが。」
いや、話せるわけがないでしょうが。この世界が物語の世界で、私は転生をしてきたなんて話。話したところで鼻で笑われるだけだ。それに私はこの世界で生きているわけだし、物語の世界だなんて分かっていても私にとってはもうただの現実。そんなことを言ったってもう関係のないことだ。
さて、地味に今の時代が原作の少し前だということが分かった。原作に登場した人たちに会いたい気持ちはあったけど、できれば原作よりも前に生まれて巻き込まれずに一生を終えたかった! もう物語の流れなんて覚えていないし、回避のための行動だってできやしない。それならやっぱり力をつけるしか生き残る方法はないんだ。
「まあ、そうですね。より一層、修行に打ち込まなければいけないなと、思っただけです。」
「……そういうことにしといてやるよ。」
ありがたい。
顔だけでなく、こういう気遣いもできるからこそヒモとしてやっていけるんだろうな。
「じゃあ今日はとりあえず帰る。」
「あ、待ってください!」
甚爾さんが帰ろうとするので思わず引き止める。
「……何だ?」
「私と契約をしませんか?」
「契約ぅ?」
またとないチャンス。この機会を逃す手はない。
「ええ、私の護衛と修行をしてほしいんです。」
「報酬は?」
は、判断が早い……。が、ここで彼が納得するだけの条件を出せなければこの話はなくなると見ていいだろう。彼を満足させるだけのものを捻り出す!
「お前に今出せる報酬なんてものがないのは当然理解してるんだろうな?」
「ええ、もちろんです。」
そう、私に現段階で差し出せるものなんてなにもない。だけど、それじゃあ頷いてくれない。私の将来性を鑑みた未来への先行投資として引き付ける! リスクとリターンを考えろ!
「ですが、私は先程の甚爾さんとの戦いで黒閃を決め、反転術式まで会得しました。これは呪術師としては異例の速さと言えるでしょう。僅か六歳の子供がそれらを成し遂げた。これは私の将来性を十分すぎるほどに表しています。将来、私が収入源を確保した場合にそれまでのあなたの働きを考慮して報酬をお支払いしましょう。最低でも億は払ってみせます。」
「当然、リスクはあります。まず、私の味方になったことによる扱いの悪化。ただでさえ悪いあなたの扱いが更に悪くなる恐れがあります。呪いの子に味方をするのですから、当然のことでしょう。これはあまり問題にならないでしょうが、次に暗殺の危険性などです。私のことは手が出せなくても、あなたなら殺しても問題ないと思うでしょうからね。まあ、あなたなら簡単に返り討ちにできるでしょうけどね。」
私の話を聞いて、甚爾さんは少し考えるような素振りを見せた。
「……悪くはねえ。俺が鍛えてやれば間違いなくお前は伸びるだろうし、投資としては悪くねえ。別に禪院家の人間なんて簡単に潰せるしな。
だが、俺も四六時中護衛につけるわけじゃねえ。その間にお前が殺された場合はどうする? 俺は一切の儲けがなく、ただの無駄働きだ。」
それはそうだろう。死んでしまったのであなたに対価は何も払えませんでしたなんて許されることではない。だが当然それに対する対応も考えてある。
「それに関しては私の死後、私の肉体より呪具を作り出すことで解決できます。呪力が0の人間以外に使うことができないという縛りをつけておけば甚爾さん以外に使うことはできなくなりますし、効果の底上げも出来ますしね。」
「ほう? 出来んのか?」
「はい。間違いなく。」
ここで言い淀んだり曖昧な返事を返してはいけない。確実にできるという自信を持っていなければ、取引など上手くいきはしないのだから。
「私の体は今術式の影響で半分炎になっているのですが、それと私の体などを使って呪具を作ります。死んだ際の生きれなかった無念、殺した相手への怨みをもって周囲の熱を術式反転の効果で根こそぎ奪い取り、その膨大な熱とその時点の全呪力を用い、私の体を呪具にします。半分炎ですから形を変えるのは簡単でしょうし、構築術式と違って0からものを作る出すわけではありませんから難易度はだいぶ下がります。その時点での私の全てを捧げたわけですから、恐らく一級、いやひょっとしたら特級に届くかもしれませんね。呪具の種類としては多分刀だと思います。炎系の能力になると思いますので名前は迦具土神とかがいいんじゃないでしょうか。」
「それに―――」
「いや、もういい。契約を結んでやるよ。」
え、もう少し話したいことあったんだけど。まあ、本人がいいって言ってるし、別にいっか!
「じゃあよろしくお願いします。縛りですからね?」
「ああ、じゃあな。」
「あ、待ってください。あと一つだけ。」
私がそう言うと甚爾さんは本当にめんどくさそうな顔をしてこちらを振り返った。悪いけど今日から仕事をしてもらおう。
「何だよ面倒くせえ。」
「勉強したいので次来るときに教科書とかノート、筆記用具とかを持ってきてください。」
「は?」
「あ、それに兵法書とか武術関連の本をたくさん持ってきてくださるとありがたいです。」
正直な話これまで独学でやってきたわけだからちょっと不安が残るんだよね。だからちゃんとした内容を暇な時とかに読んでおきたい。勉強は大人になったときに必須だろう。ここにいたら教育なんて受けさせてもらえないわけだし、前世で学んだ内容なんてもう呪術のことで上書きされて覚えてないから役に立たない。
戦闘能力だけでなく、知識もつけていかないとね。
「―――チッ。わぁーったよ!」
「ありがとうございます。」
というわけで私は強力な護衛兼、師匠を手に入れた!
今後登場する予定がないので呪具、
特級呪具迦具土神
その見た目は刀身のない刀。鍔もなく、柄だけしかない。しかし秘められた呪力は膨大で、特級の名を冠するのに相応しい呪具である。『起きろ』の言葉を所持者が発した途端、真っ白な炎の刀身が作り出される。その炎は所有者を癒やし、敵対するものを尽く焼き斬る。通常時は75cm程だが、使用者の意思によって長さを変えることができるので、あらゆる距離に対応が可能。あらゆる術式を中和する能力があり、使用者の技量によってはどんな術式だろうと斬り裂くことができる。理論上は五条悟の無下限呪術すらも薄紙のように斬り裂ける。
―――これは全てを焼き尽くす剣なり。この剣に、斬れぬものなし。
禪院絳禰が殺された時に自身の全てをもって作り出した。死んでしまった無念、殺されたことへの怨み、その他にも様々な負の意思が莫大な呪力となり、自身の肉体、術式、魂、呪力などを素材としてこの呪具は生み出された。
この呪具は生前に交わした契約に基づき、作成されることになった。契約を交わした彼にこの
―――それは彼と交わした大事な約束だから。
フィジギフ専用のライトセーバー。鍔がついてない刀がなぜか異様に好きだったからこの見た目にした。何でも斬れるし釈魂刀と違って魂を見れる必要がないからこっちのほうがみんな使いやすい。でもフィジギフ専用だから意味がない。しかも使っていると勝手に体力も怪我も治してしまう優れもの。
術式の中和もできるので使い手によっては無下限も突破できるが、天逆鉾は術式の強制解除なのに対しこちらは刃先のみの術式の中和のため少しでも真っ直ぐではなかったら途中で止められる。
名前の由来は神話の火の神である火之迦具土神とその火之迦具土神の首を落とした天之尾羽張が剣だったことから。剣じゃなかったらきっと違う名前だった。
火の神の名に相応しく熱、炎を操る。熱や炎の攻撃だった場合それを全て喰らいつくし自身の力に変えてしまう。相性がいいはずの水の術式でも圧倒的な熱で一瞬で蒸発させられて終わる。
Q ちょっと能力盛りすぎじゃない?
A 肉体全てに全呪力、術式、そして何より転生者の魂とかいう極上の素材を使っているんだから妥当。むしろ控えめまである。