みなさんこんにちは。お元気でしょうか。皆のアイドル禪院絳禰です。私は今、
―――宙を舞っています。
甚爾さんに修行をつけてもらい始めて早二週間、毎日のようにボコボコにされている。今やっているのは呪力なしで甚爾さんと戦うことだ。当然フィジカルギフテッドのゴリラに勝てるはずもなく、毎度毎度体中が痛い。修行の最中は反転術式の使用を禁止されているので治すこともできないのでずっと痛みが蓄積していっている。もはやただのいじめである。
「ゲホッ! ゴホッ!」
「何うずくまってんだ。早く立て。」
「ちょっ!?」
倒れていた私に容赦なく蹴りを放ってきた。即座に飛び退いたためなんともなかったが、元いた場所が軽く蹴りで抉れている。やっぱり甚爾さんは化け物だった。
その後も甚爾さんに殴られ続け、ようやく今日の修行が終わった。
「やっぱり甚爾さんって化け物ですよね。正直言ってフィジカル明らかにおかしいですし。なんですか呪力を全て捨て去った代わりに超人的な身体能力と感覚器官を得るって。人間相手ならほぼ無敵じゃないですか。」
「お前も視覚と味覚を失った代わりに身体能力と残りの感覚器官が強化されてるだろうが。呪力もっててそれとかふざけてんだろ。」
そう、私の視覚と味覚がないのは天与呪縛だったのだ。感覚器官の二つが機能しない代わりに超人的な身体能力と他の感覚器官の強化という縛り。身体能力よりも感覚器官にだいぶ偏ってはいるが、それでもありえないぐらいの能力らしい。てっきりこれが普通だと思っていたから自分では気づかなくて、修行を始めた時に甚爾さんに言われて始めて知ったのだ。
でもフィジカルギフテッドって、本来あるはずの術式がなかったり呪力がなかったりといった呪縛のはずで、私みたいに感覚器官がないという呪縛で同じものを得るはずはないと思ったんだけど、甚爾さんが『感覚器官を二つ失ってんだからその他の器官が強化されるのは妥当じゃねえか?』とか言われて納得した。というかぶっちゃけどうでもいいことだった。私がフィジカルギフテッドである事実が分かれば十分だ。
「二週間修行をつけてきたが、お前の課題は体力のなさだな。」
「え? 私かなり体力あるはずですけど。」
伊達に四歳から体力作りをしてきていない。体力にはかなりの自信があった。それなのに体力がないとか六歳児に求めるハードルが高すぎではないだろうか。
「その身体能力の割に体力が少ねえんだよ。別に今のままでも十分ではあるが、全体的に見てみるとそこだけ足りてねえ。だから体力をつけろ。」
「…………。」
「おい、返事は?」
甚爾さんが何か言っているが、少しだけ待ってもらおう。何か違和感を覚えた。
「あっ!」
「何だ?」
私が急に声を上げたから甚爾さんが訝しんだ顔をしている。だが、私はあることに気がついた。なんでこんなことに今まで気づかなかったんだろうってレベルだ。
「甚爾さん、フィジカルギフテッドって身体能力を強化しているわけですから当然体力も同じように強化されていますよね?」
「……ああ! そういうことか!」
天与呪縛で身体能力が強化されているなら体力だって一緒に強化されていないはずがない。だけど私は普通の術師と同じぐらいしかない。それはつまり何処かで何かしらの強化がされているはずということだ。
「体力が少ないのが縛りだってんなら逆に何か増えてる可能性が高い。これは多いなってもんはねえのか?」
「いえ、特にこれと言ったものはないですね。呪力の総量が増えていたとしても分かりはしませんし。」
本当に何が強化されているというのか。それが知れれば己の能力の開示で力を上げるということもできるので確実に知っておきたいのだが。
「待て、肉体的な強化でないとすれば呪力に関連するなにかだと考えられる。なら―――」
なんか甚爾さんがものすごい考えてくれている。私も考えなくては。
「………呪力の自然回復速度ってのはどうだ?」
「!!!」
やはり天才か? 私では絶対にその考えは出てこなかった。他の術師と会ったことがないから一般的な回復速度が分からない。この答えは甚爾さんだからこそ出たものだ。
という訳でちょうどいいので修行の傷を治すのに反転術式を使用して呪力を消費してみる。果たして速度はどのぐらいか。
「確かに早いです! きっとこれですよ甚爾さん!」
「そうか。ってことはお前は生まれつき虚弱体質でその代わりに呪力の自然回復速度が上がったってわけか。んでその虚弱体質がフィジカルギフテッドのバカ体力で相殺されて普通の術師と同等になったってことか。んだよそれ。ズルくねえか?」
「となると私は天与呪縛を二つ持って生まれたってことですね。天は一体私になんの恨みがあるっていうんでしょうか? 特に味覚を奪ったことは大罪ですよ。他の人たちが美味しい美味しいって言ってるものを一人だけ楽しめないんですよ? どんな嫌がらせですか。全然ズルくないですよ。」
本当に天は一体私になんの恨みがあるというのだ。前世では誰かに殺され、生まれたところは最悪、景色を楽しむことも食を楽しむことも封じるなんて。それにフィジカルギフテッドがなければ前世同様に虚弱体質だったとか嫌がらせにもほどがあるだろう。
「はっ、知らねえよ。前世でよっぽど悪いことをしたんじゃねえか?」
してませんよ!!
前世では普通に穏やかに過ごしてました! 最後は殺されたけどね!
……じゃあ前々世で何か大罪でも犯したのかな。
主人公の身体能力と感覚器官は身体能力がパパ黒の四割程度で感覚器官は七割程度になる。
なおそれを呪力で強化してくる模様。
そして視覚と味覚がなくフィジカルギフテッドになっていなければ虚弱体質のせいでとんでもないことになっていたことが発覚。
危なかった。
虚弱体質は前世でもそうであり、今世でそれが引き継がれ天与呪縛として発現し、主人公を殺しに来た。が、なんとか回避した。意外と天は助けてくれているのかもしれない。
転生してるんだし天与呪縛を二個持たせてもいいよね理論でやった。後悔はしていない。