転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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 街に行きたくなったらしい。


外出してみたい!

 ある日甚爾さんは私にこんなことを言ってきた。

 

「お前、街に繰り出すつもりはねえのか?」

 

「街、ですか。」

 

 そういえば生まれてこのかた一度もこの山から出ていない。力をかなりつけてからじゃないと無理だろうと思っていたからだ。

 だけど、甚爾さんという護衛を手に入れた今なら行けるのではないか? ならば行ってみたい。

 

「そうですね。是非行きたいです。」

 

「じゃあ行くか!」

 

 私がそう答えると甚爾さんはニヤッと悪い顔で笑った。

 

「でも、禪院家に許可とか取らなくてはダメなのではないですかね。」

 

 流石にこの山からいなくなったら気づくだろうし、こっそりと街に行くなんてことは出来ない。そんなことをしようものなら間違いなくジジイどもが殺しにくるね。わざわざそんなリスクを増やすべきではない。

 

「ハッ! いいじゃねえか。正面から乗り込んで許可を取りゃあいいんだよ。」

 

「……そうですね。この際いい機会ですからゴミどもの顔を拝んでみることにしましょう。」

 

 他の術師のレベルとかも体感したいしね。

 

「となると、どうして急に私がそんなことを言い出したか上手く話を作っておかないといけませんね。」

 

「ああ? んなもん適当でいいんだよ適当で。」

 

 ええ……。

 

「まあ、色々と準備はしておいた方がいいですから、一週間後に行きましょう。」

 

「お前がそれでいいならそうするか。」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 というわけで一週間! 私は今、ドブカスの巣窟である禪院家にいます!

 

 さあドブカスども何処からでもかかってこい! いくらでも相手をしてやるぞ! ……甚爾さんが。

 

 いやだって、ここで私が力を見せてしまったら警戒されるからそんなことできない。

 なので今私は呪力の操作を何の訓練もしていないかのように偽装して、歩き方とか立ち振る舞いを弱者に見せかけている。今の私は修行もロクにしていないか弱い子供に見えていることだろう。

 私は演技力も鍛えてきたから自信があるんだ。見破れるものなら見破ってみろ!

 

 甚爾さんの後ろについて禪院家の邸宅を歩いていく。目が見えない人間が杖を持っていないのは不自然なので、杖をつきながらだ。

 

 カツ、カツ。

 

 杖をつく音だけが響く。

 

「甚爾さん、今は何処に向かっているのですか?」

 

「禪院家当主の所だ。」

 

 え、聞いてないんですけど。禪院家当主ってあの人でしょ? 相伝の術式である投射呪法を持っている禪院直毘人。アニオタとかいうものすごいギャップの人。でも、禪院家の他の人間よりはマシってイメージがあるからまだいい方か。

 

 

 

 段々と人が多くなってきた。全員がこちらを見ながらものすごい小声で色々と言っている。聞こえないようにしているのだろうけど、残念ながら私には筒抜けだ。天与呪縛で強化された私の聴覚を舐めるなよ。

 

 

「あのガキが呪いの子か……。」「何しにここに来やがったんだ。」「しかも一緒にいるのは呪力なしの無能だぞ。」「大人しく死んでおけばいいものを。」「私達に無能が伝染るだろ、近づくなよ。」「あれが例の……汚らわしい。」「生まれてこなければ良かったのに。」「気味が悪い。」「なんで生かしてるんだ。早く殺せばいいのに。」「気持ち悪いったらありゃしない。」

 

 

(ハハハハッ! 随分言われてるなあ。うーん、思ったよりも私の立場は悪いらしい。ま、それはどうでもいいとして、ここにいる術師の実力はこんなものか。普通に強い人もいるにはいるけど、全体的に見るとだいぶ質が悪いな。ちょっと期待してたんだけど呪力の操作がまるでなっていない。この世界って強い人たちは強いけど、才能が物を言うから、他の人たちはあんまりだから仕方のないことかもしれないね。)

 

 そんなことを考えると甚爾さんが小声で話かけてくる。

 

「……お前は気にならねえのか?」

 

「気にならないと言えば嘘になりますけど、今更じゃないですか。生まれたときから分かっていることに大した興味はないですよ。それにいずれ全員叩き潰すつもりですから言わせておけばいいんですよ。」

 

「ハッ。そうかよ。」

 

 

 

 その後も私達に対する罵詈雑言を聞きながら、当主の元に歩いていった。

 

 結構歩いたはずだけど、かなり遠いな。この家がでかいことは分かっていた事だけど、ここまでとは思ってなかった。果たしていつ着くのだろうか。

 

「正面のあの部屋だ。」

 

 そんなことを考えていたら甚爾さんがちょうどいいタイミングで場所を告げてきた。あまりのタイミングの良さに私の思考でも読んだのだろうかと考えてしまうがそれはない。

 

「入るぜ。」

 

 え、当主相手にその態度でいいの?

 

「おう、入れ。」

 

 あ、全然大丈夫そう。

 

 甚爾さんは乱暴に襖を開けた。……もう少し丁寧に開けたほうがいいと思うなあ。

 

「して、今日は何用だ。」

 

 そこには酒瓶を持って酔っ払ったジジイがいた。それにしてもこの部屋酒臭い。普段から酒を飲みまくっているのがよく分かる。これは早死するな。間違いない。

 

「こいつが外に行ってみたいって言い出してな。許可を取りに来たんだ。」

 

「……ほう?」

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、いざ勝負!




酒の飲み過ぎには気をつけましょう。
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