絳禰は念願の外出許可をもらい、浮かれていた。
帰る途中も行きと同じように散々言われていたが、一切気にしていなかった。途中で殺気まで飛ばされたのだが、あまりにも弱すぎて完全にスルーしていた。
「ふん、ふん、ふふーん!」
「嬉しそうだなお前。」
甚爾さんが何か言っているが知ったことではない。ようやく大手を振って外出できるようになったのだ。嬉しくてしかたがない。そのために私の簡易領域の情報を開示することにはなったが、別に知られたところで困るようなことは一切ないし、反転術式を使えることが最低条件なのでどうせ使える奴はいない。つまり私のオンリーワン性は保たれる訳だから私は一切の損をしていない。
「許可もらったわけですけど、何時行きましょうか?」
「あ? 今から行くに決まってんだろうが。」
「えっ!?」
嘘でしょ。聞いてないんだけどそういうこと多くない? ちゃんと私に相談ぐらいしようよ。報告・連絡・相談は大事でしょうよ。
「当たり前だろうが。家の奴らに何か言われる前にさっさと行くんだよ。」
ああ、成程。この事を知ったらうるさいだろうしね。そうするべきか。
「そうですね。行きましょうか。」
「まあ、何にせよ初めての外なんだ。楽しめよ。」
「はい!」
◇
というわけで、今、私は、外出しています! 生まれて初めてのお外です! 山と違って人が沢山いるので活気がすごいです! 何をしましょうか!
「おい、顔がうるせえぞ。」
「酷くないですか?」
いいじゃないですか。生まれて初めての外なんですよ? テンション上がるに決まってるじゃないですか。
「とは言ってもほぼ表情変わってないけどな。ほぼいつも通りの無愛想な面だ。」
「む、無愛想とは失礼ですね。可愛らしい顔でしょうが。」
見たことないけど。
「で、何処行くんだ?」
「とりあえず甚爾さんのおすすめの場所とかありますか?」
私はどんなところがいいとか分からないから甚爾さんにお任せしたい。
「お、いいのか? ホントに?」
「はい。お願いします。」
「うっし。じゃあ行くか。」
◇
『カシューアイ抜け出したー! カシューアイ先頭! カシューアイ先頭! カシューアイ1着ー!』
「クソが!」
「………。」
私は今甚爾さんに連れられて競馬場にいる。歓声やら何やらでとてつもなくうるさい。
普通競馬場に連れてくる? 行きたかっただけでしょ。案の定負けてるし。その馬はあまり調子が良くないよって言ったのにその馬にかけるから負けたんだよ。素人には分かんねえよとか言っちゃってさあ。
お任せの場所で競馬場に連れていかれるとは夢にも思わなかったよ。バカでしょ。
「よし、次は舟行くぞ舟。」
「ちょっと待ちましょうか。」
「ああん?」
いや、自然な流れで競艇に行こうとするのはおかしいでしょう。何でギャンブルに付き合わされることになるのさ。
「俺のおすすめでいいって言ったのはお前だろ。」
「流石に泊まりはまずいですし、そんなに時間ないんですから呪霊探しに行きましょう。」
「ジジイから場所は聞いてあんだろ。一人でさっさと行ってこい。俺は舟行ってくるからよ。」
「あなた私の護衛ですよね?」
嘘でしょ。流石に護衛対象一人にさせるようなことはしないと思ってたんだけどそれはダメでしょ。緊急事態とかならまだしも舟って。
「チッ! さっさと行って終わらすぞ!」
「確か二級でしたっけ。強さってどんなものなんですか?」
一度も二級呪霊と遭遇したことがないから強さが分からないんだよね。というか六歳児に勝てるのだろうか。
「知らねえよ。戦って自分で判断しろ。」
うん、まあそうだろうね。
主人公はとんでもないポーカーフェイス。戦闘中も一切表情が変わらない。付き合いが長くても甚爾ぐらいしか分からない。
顔がいいのと相まって敵からしたら軽い恐怖かもしれない。