絳禰は二級呪霊を祓うために、ある場所に来ていた。
「ここがその呪霊がいるという場所ですか。」
ここは小さな廃病院。数十年前に潰されたが、なぜか今も残っている。
病院は人が多く死んだ場所であり、多くの無念を残している。ここはまさに呪霊がいるにはうってつけの環境だ。
「甚爾さん、念のため近くに待機しておいて下さいね?」
………
「……甚爾さん?」
絳禰の声が虚しく響いた。
「嘘でしょ!? まさかあの人、護衛対象放置して何処か行ったんですか!? 舟ですか!? 舟ですかね!?」
もしもの時のために少し遠くで見守っていてくれるという話だったはず。それなのにいつのまにか私に何の言伝もなく何処か行きやがった。決めた。次顔を見たら一発殴る。
「はあ。とりあえず入るしかないか。」
「あっと、その前に。【闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊祓え】っと。これでよし。」
病院の中は数十年経っているという割には綺麗だった。所々老朽化で塗装やら何やらが剥がれていたりはするけれど、ちゃんと形が残っていて、突然崩れるような心配はいらなそうだ。
「それにしても二級呪霊か。どのぐらいの強さなんだろう。」
そう言いながら絳禰は病院内をぷらぷらと歩く。もちろん適当に歩いているわけではなく、呪霊の呪力に向かっている。感じる呪力はさほどでもないが、隠蔽系の術式を所持している可能性もあるため警戒は怠らない。
探っていた呪力に動きがあった。こちらに気づいたのか、ゆっくりと私の方に移動してくる。やがて、曲がり道のところで立ち止まる。恐らく私のことを待ち伏せしているのだろう。もっとも、最初から分かっているので無意味なことではあるが。
(奇襲をかけるのもいいですが、あくまで今回は戦闘経験を積むという目的ですから正面からの戦闘の方がいいですかね。)
腰に差した刀を抜き、いつでも対応できるように構える。刀身に呪力を流し、簡易領域を展開する。これで迎え撃つ準備が完了し、呪霊が潜む場所へと進んで行く。
息を潜め、絳禰を襲おうとする呪霊。それを知って迎撃の体勢をとる絳禰。彼女たちはあと五メートル程で接触する。
四メートル、二メートル、一メートル。
そして、
「ウギャギャアー!!!!」
「ふっ!」
呪霊が奇襲を仕掛ける。しかしすでに潜伏がバレていたため容易く避けられる。そしてすれ違いざまに術式を発動した上で斬りつけた。
その一撃で呪霊は致命傷を負った。一筋の線が呪霊の体に走る。
線の場所から徐々に体がズレていく。真横に走った傷は呪霊の体を真っ二つに分けた。斬られた箇所からだんだんと肉体が崩壊していく。つまりこれで終わり。
「思ったより大したことありませんでしたね。」
普段相手にしてる人がおかしい。それに奇襲がバレてて高火力の攻撃を放てるならそうなる。
どうせ勝てるだろっていうのと最悪でも逃げることぐらいはできると思って絳禰を放置したみたいだけど、本人は信頼されていると喜べばいいのか護衛の仕事をちゃんとしろよと怒ればいいのかどうすべきか困ってる。