初めて外出して呪霊との戦いに温泉を堪能してから帰ってきた次の日、とてもめんどくさいことが起きた。
「うう……。」
私の足下には私と同じぐらいの歳の少年が転がっている。念の為言っておくと、この少年が寝ていた私に攻撃を仕掛けてきたので返り討ちにしただけだ。つまり私に非は一切ない。
「いつまでそこで転がってるのですか? 早く立ってください。邪魔です。」
「ド、ドブカスがぁ。」
初対面の人に向かってドブカスとは失礼ですね。甚爾さんがいない日を狙ってきたのですからある程度情報は得やすい立場なのでしょうか。禪院家の屑どもに煽てられて自分が一番だとでも勘違いしたのでしょう。というか、寝ているところを襲うとはあなたの方が余程ドブカスでしょう。
「私はあなたに構っているほど暇ではないんです。だから早く帰っていただきたい。それに、そもそもあなた誰ですか?」
「じ、次期、当主の顔も知らんのか!」
へえ、そんなに強くなかったですけど、本当ですかね? 周りの人間に煽てられてるだけなのでは? それとも術式がそれほど強力だったとかかな。
「私はほとんど人と会ってませんのであなたとは初対面でしょうし、知らなくて当然だと思いますよ?」
「じゃあ、覚えとけぃ! 禪院家次期当主、禪院直哉や!!」
え、マジ? 『人の心ないんか?』のセリフでお馴染みの禪院直哉? 弱くない? 私の一つ上だよね? 術式ガチャ当たりの投射呪法持っててあれ?
ええ……。
「それで、直哉さんは何しにここへいらしたのですか?」
別に私が当主になる可能性は万に一つもないんだから殺しにくる理由はないと思うのだけど。それともただ単に女の私が普通に生きているのが腹立ったからとか?
「甚爾くんから離れろやぁ!!」
「は?」
甚爾さんから離れろ? どういうことだ?
「何でお前みたいなカスに甚爾くんが構わなあかんねん!? 女は大人しく男の後ろを歩いて縮こまっとけや!!」
別に構ってる訳じゃないだけどなあ。あくまでそういう契約だから修行つけてくれたりしてるだけだし、見当違いもいいとこだ。
「私に言ってもどうしようもありませんよ。甚爾さんに直接私と関わらないように言えばいいのではないでしょうか。」
「アホか!! そんなん言えるわけないやろ!!」
「……ああ、なるほど。」
甚爾さんにはとてもじゃないが話しかけられないから弱いと思っていた私の方に脅しにきたのか。私のほうが直哉よりも強かったから無駄だったけど。
もっとも、脅されたところで私が従うはずがないのだけどね。
「力でどうにかしたかったようですが、体感したように私の方があなたよりも強いです。なので、話を聞いてほしければ私と正面から戦って勝ってください。」
「舐めとるんかぁ!? 今すぐ屈服させて許しを請うても甚振り続けたるわ!!」
はっ! やってみろぉ!
直哉の喋り方が上手くできているかとても不安。