ドブカ……禪院直哉と戦う事になったので、いつも甚爾さんと修行をしている場所に来た。奇襲しておきながら返り討ちにあったんだから大人しく認めろよと思わなくもないけど、無理みたいだ。どうにかするには完膚なきまでに叩きのめすしかないだろう。
「それで、勝利条件は何でしょうか?」
「ハッ! そんなん相手が降参したらに決まっとるやん。」
そういえばどうすれば勝ちか決めてなかったから聞いてみたのだけど、ものすごい醜悪な顔でニタニタと笑いながら私にそう言ってきた。
あれは自分が勝つことを一切疑っていない驕った表情だ。私みたいにボコボコにされたり常に命を気にしなくてはいけない状況にいたわけではないから、仕方ないと言えば仕方ないのかも。
戦いでは相手を過小評価することも過大評価することも命取りになるのだから、相手の力量を正確に見極める能力は必須だ。油断して格下に足元を掬われるなんてことあってはいけない。
「では開始の合図は……そうですね、この木刀を投げて地面についたときでどうでしょうか。どうやら直哉さんは武器を使わないようですしね。」
「それでええで。それにしても君は武器使うんやな。」
「? それが何か?」
これは戦いなのだから使えるものは何でも使うべきだろう。特に人間相手なら呪霊と違って呪具でなくても有効なのだから使わない理由がない。まあ、
使える手札が多いっていうのは器用貧乏になりかねない危険もあるけど状況によっては有利に働くものだ。
「いやな? ぶっちゃけダサいと思っとんねん。術師が得物持ち歩くの。それがないと勝たれへんってことやし。意外とおんで同じ考えのやつ。俺の兄さん方もブラブラとみっともないねん。よぉアレで甚爾くんのことやいやい言えたもんや。
で、君も刀なんて構えもうてなっさけないなぁ。術師ならその身一つで戦わんかい。」
「……私は使えるものは全て使うべきだと思いますが。」
何言ってんだコイツ。シン陰流全否定してないか?
「いや別に持ち歩くのが悪いとは言ってへんよ? ただ、実力もない奴がぶら下げて強者ぶってるのが気に入らんねん。得物頼りとか恥ずかしくないんかいな。」
「お望みとあらば素手でお相手いたしますが。」
「ええよええよ、無理せんで。大人しく
本当に大丈夫かこの人。眠っているところを襲ってきたくせに無様に這いつくばったことを忘れたのかな。何処からその自信が湧いてくるんだろう。やっぱり煽てられて調子乗っちゃってるのかな。まだ子供だし仕方ないか。
「あ、やっぱり先手を譲りましょうか? 流石にハンデは必要でしょうし、それぐらいは……。」
うん、よく考えたら一度勝っている上にこちらは術式まで知っているのだ。少しのハンデは必要だろう。
「舐めんなや!! クソ女がぁ!!」
あれ? おかしいな一応配慮してあげたんだけど。ああ、彼からしたら雑魚の女に舐められたって感じたのか。
だけど、そもそも女だからって考え方古いと思う。この家のことが世間に知れたらボロクソに言われること間違いなしだね、
「そうですか。では始めましょう。」
そう言って私は左手に持っていた方の木刀を真上に投げ上げた。
配慮(無意識煽り)
直哉が心を読めたら更に切れてた。