直哉が私のところに来てから暫く経ったけど、あの日からここに来たことはない。きっと当主になるために修行に打ち込んでいるのだろう。是非とも頑張ってくれ。そして私に絡んでこないと助かる。
◇
今日の甚爾さんはどこか様子がおかしかった。ソワソワしているような、嬉しそうな感じだった。一体どうしたのだろうと首を傾げていたのだが、どうやら意を決したのか私の方に向き直った。
「ああ〜、言うかどうか迷ったんだが、実はな、本気で結婚を考えてる奴がいるんだ。」
「!!!」
ええ!? 甚爾さんにそんな相手が!? プロのヒモをやってる甚爾さんを本気にさせる女性がいたのか!?
「それはおめでとうございます?」
「何で疑問系なんだ……。まあ、礼は言っておく。」
それにしてもお相手はどんな女性なんだろう? 甚爾さんが惚れ込むぐらいだし、よほどいい女性なんだろうし、会ってみたいなあ。
まあ何にせよ、とてもおめでたいことだ。まだ結婚したわけではないけど、今からでも目一杯祝福しておこう。
「あ、となると何時ごろ家を出ていくのですか? 彼女さんをここに呼ぶなんてことは絶対にダメですし。」
「ああ、暫くしたら出てくつもりだ。だが、そうなるとお前の護衛やら何やらが難しくなるがいいのか?」
んー、それは確かに痛いかもしれないけど当人の幸せとは比べるまでもないしね。誰よりも幸せを掴みたいと思っている私が他の人が幸せになろうとしているのを邪魔するのは違うだろう。私の幸せの邪魔になるならまだしも、そんなことをするつもりはない。
「ふふふ。それなら問題ないですよ。それと、結婚式には行けないもしれないですが、できる限り祝福させていただきます。」
「あー、いや、なんだ。その、結婚式はしないつもりでな。」
ええっ!? 結婚式しないの!? それじゃあこっそり家を抜け出してお祝いに行くということができないじゃないか。
でも、そういうのは本人たちが決めることだしね。
「では、ウェディングドレスを着るぐらいですかね? まあ、今度会わせて下さいね?」
「式も挙げねえのにドレス着る必要はねえだろ。」
分かってない。それは分かってない。式を挙げないというのとドレスを着ないというのは違うんですよ。やっぱり女性は一度はあのドレスを着てみたいと思うんだよね。
「じゃあ、聞いてみてください。きっと着たがると思いますよ?」
「まあ、お前がそう言うならそうしてみるか。」
「ええ。それが良いと思います。」
「では今日はその人との出会いからどんなところに惹かれたのか洗いざらい話してもらいましょう。」
「嫌に決まってんだろ。」
私だって女の子なのだから、恋愛話に興味を持たないはずがないというのに、聞き出そうとすると甚爾さんは心の底から嫌そうな顔をした。だが、その程度で諦める私ではない! 絶対に聞き出してみせる!
結局今日は聞き出すことも叶わず、いつもより気持ち厳しめな甚爾さんに延々といじめられて終わったのだった。
原作で甚爾がどのタイミングで結婚したのか知らないんだよなあ。