転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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結構甚爾視点の話は長くなる。
あと主人公視点だと分からないことも色々と明らかに。


幕間
side禪院甚爾 其の一


 俺がそのガキのことを知ったのは偶然だった。たまたま家の奴らがそいつについて話しているのを聞いただけだった。

 

 曰く、呪いの子らしい。

 

 それを聞いて俺は馬鹿馬鹿しいと思った。髪の毛が真っ白、目が見えない、味覚がない、腕にあざがある。こんなくだらないことで呪いの子扱いしているのかとそいつらを馬鹿にしていた。その程度のガキをなぜ恐れているのか分からなかった。

 

 だが、俺はなぜだかそのガキのことが気になった。呪力の無い俺と同等あるいはもっと酷い扱いをされている奴。一体どんな奴なのか気になった。死んだような顔をしているのか、それとも全てを諦めたような顔をしているのか。興味があった。

 

 だが、そいつが何処にいるのかは詳しく知らなかった。わかったことは一人何処かに隔離されているということだけだ。だから会ってみたいと思っても会うことはなかった。

 

 

 

 ある日、直毘人のジジイに呼ばれた。その日の俺は機嫌が悪かった。賭けで大負けしたからだ。さっさと用を済ませたかった。そんな俺に直毘人のジジイはこんなことを言ってきやがった。

 

「お前に呪いの子の世話を頼みたい。」

 

 どうやら俺に件のガキの世話をさせるつもりだったらしい。当然俺は断った。ガキのお守りなんてやりたくはなかった。そこまでしてそいつについて知りたいとは思っていなかった。

 

「報酬は払うぞ?」

 

 だが、ジジイのその言葉で考えを変えた。それぐらいで金が貰えるならやってもいいかと思った。ただし、額による。

 

「いくらだ?」

 

「一億やろう。」

 

 俺は驚いた。このジジイがガキのためにそんな大金を出すとは思っていなかったからだ。それだけの価値がそのガキにあるとでもいうのか。

 

「賭けではあるがな。あれは稀に見る傑物だと儂は思っとる。」

 

 ジジイのこの言葉を聞いて、より一層興味が湧いた。そこまで言うほどのガキなのか、呪いの子と言われるガキに何を期待しているのかと気になった。

 

「……話はそのガキを見てみてからだ。それまでは何もしねえ。」

 

 話は魅力的ではあったが、呪いの子とか言われている奴だ。素直に関わっていいものか判断がつかない。よくよく思えば見た目だけで呪いの子呼ばわりされるはずがないのだ。ならば相応の何かがそのガキにはあるということだろう。それを見極めない内は下手に手を出すわけにはいかない。

 

 それから暫くの間そのガキについて調べてみた。調べるのは思いのほか簡単ではあった。なにせ毎日誰かしらが朝昼晩と食事を届けに行くのだから。

 そいつらの話を聞こうと思ったのだが、呪力の無い俺に話を聞かせてくれるような奴は一人もいなかった。だから、盗み聞きをして情報を集めた。全員が愚痴のようにベラベラと周りに話しているもんだから何も困らなかった。

 

 そうして色々な情報を得たのだが、俺がそいつの世話係になると知ったのか、接触してきた奴がいた。どうやら俺にそのガキを殺して欲しいらしかった。

 

「あの呪いの子を殺せ。金は払ってやる。五千万払えば満足か?」

 

 正直、迷った。ガキのお守りなんて面倒なことをしなくてもそれだけ貰えるなら十分なのではないかと思った。

 

 結局、俺は答えを出せず、そのガキを見に行くことにした。

 

 ジジイから聞いたそのガキの住処は山の中だった。禪院家の本邸からかなり離れた山の中にポツンと建っている山小屋。そこにそのガキはいるらしい。それを知った時の感想は『正気かよ』だった。今は確か六歳だったか、そんなガキを一人で住まわせているというのはあまりにも異常だ。

 

 赤子の時は本邸で面倒を見ていたらしいが、ある程度成長してくるとそこに移されたらしい。幼い子供を面倒を見る人間もつけずに放置した。朝昼晩と食事を持って行き、風呂に入らせて着替えをさせる。それだけをしたらすぐにここまで戻ってくる。誰も呪いの子などと呼ばれているガキのところには行きたくないようではあったが、関わりすぎて問題が起きては困るということで毎回行く人間は変えていた。

 

 そのガキに運ぶという食事を見てみた。味覚がないガキにどんな食べ物を食べさせているのか気になったからだ。

 味覚がないのだからと安いものだろうか。それとも呪いの子であるそのガキを恐れて高級な料理を出しているのだろうか。

 

 だが、現実は俺のそんな予想とは全く違っていた。

 

 

 

 その日の飯を運ぶ係の男をつけて行った。そうすればどんなものを食べているのか分かるからだ。もし美味そうなものだったら少し食ってやろうと思いながらついて行った。

 

 そうして男が持ってきたのは食事などと言えるようなものではなかった。残飯の混ぜ合わせなんてものが可愛く思える様なもの。ゴミだと言われた方が納得するようなものだった。あんなものは人が食べるようなものではない。家畜ですらもっとまともなものを食べている。

 

 これをそのガキはいつも食べているのかと愕然とした。味覚がないとはいえ、匂いは分かるはずだ。俺は鼻が良いが、それがなくても臭いだろうことは想像がついた。現に男も少し顔を顰めている。それに、食感も最悪であろう。俺ならそんなものは絶対に食いたくなかった。

 

 こんなものをガキに食べさせる禪院家にも、食べているガキにも吐き気を覚えた。

 

 ガキ一人に何をしてる。こんなことをしてどうなる。

 何でこんなものを黙って食べている。何で文句を言わない。

 

 そんな俺の思いが届くことはない。男はそのゴミを持って呪いの子の元に向かった。

 

 

 

 

 すぐさま俺は直毘人のジジイのところにどういうことか聞きに行った。呪いの子として恐れられているガキ相手に何故そんなことをしているのか疑問に思ったからだ。だが、それに対する答えは簡潔なものだった。

 

「なに、奴らはあわよくばそのまま死ねば良いと思っとるだけだ。あのゴミを食べ続ければ食事を受け付けなくなって餓死するかもしれんだろう?」

 

 くだらないと思った。そんなことをやっていても未だにあのゴミを出しているということはそのガキがゴミを食べ続けているということだ。

 

「だとしても呪いの子を恐れてる奴らのすることとは思えねえな。それこそ何かあったらどうする気だ?」

 

「最初からそれを食べていればそんなことに気づくことはないだろう。」

 

 確かにそれしか食べたことがないのなら疑問を抱くことはないだろう。だが、このジジイはそのガキに期待をしているのではなかったのか。その様子だと死んでしまいそうになっても関与しないと言っているようだ。

 

「ん? ああ、そのことか。その程度を乗り越えられんような者が大成するはずがなかろう。」

 

 俺がそのことについて聞くとジジイはそう返してきた。期待しているようなことを言っていても死んだらそれまでと思っているようだった。なら、俺がそのガキを殺しても問題ないだろうか。そのガキを殺せば五千万貰えるんだ。だが、当主の不興はなるべく買いたくない。

 

「俺がそのガキを殺すかもとは考えないのか?」

 

「お主なら殺したとてそこまで問題ではなかろう。そうすべきだと判断したのなら構わん。」

 

 俺が他の奴に呪いの子を殺せと言われたことも知っているだろうにそうくるか。

 

 せいぜい見極めさせてもらうさ。




主人公視点だと一切触れてないけどゴミ食べてるんすよ。で、本人は死ぬほど嫌がりながら栄養取るために食べてる。食事というより最悪の栄養補給。たまに山菜探して採ってるからそれも食べる。ゴミだけを食べるのは流石にキツい。
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