転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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や、やっと他キャラ視点終わった……。
今後のために書いた方がいいと思ったけど、多かったなとちょっと反省。


side禪院直哉

 俺は天才なんやって。

 みんな言っとる。

 父ちゃんの次の当主は俺やって。

 禪院家には落ちこぼれがおるんやって。

 男のくせに呪力が一ミリもないんやって。

 目の見えない女がおるんやって。

 どんなショボくれた人なんやろ。

 どんなカスみたいな女なんやろ。

 どんな惨めな顔しとるんやろ。

 

 

 

 

 

 目にした途端、圧倒された。圧倒的な強者。家の奴らとは一人違う怪物。俺も父ちゃんも含めて、きっと誰もこの人には敵わんと思ってしもうた。

 

 衝撃やった。こんな人がおるんやって。この家のみんなが束になっても敵わないって直感で理解させられたんや。

 

 しばらくの間その場で惚けておったけど、いつのまにか消えてしもうてた。そのせいで、いつもは山奥に一人でおるっていう目の見えない女を見損ねてしもうた。

 

 二人は父ちゃんのところに用があったみたいで、父ちゃんの部屋に入って行くのを見たってそこら辺にいた女に聞いたら言っとった。

 

 あの人と一緒におるっていう女は、俺の一つ下で、呪いの子とか大層な呼ばれ方をしとるらしい。なら、その女もあの人と同じでアッチ側の人間なんやろうか。

 

 もし、そうでないなら。

 それであの人の隣にいるのなら。

 

 

 

 

 ——俺が潰したる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして話が終わったのか、父ちゃんの部屋の戸が開いた。これからあの人とその女が出てくるんや。

 

 

 

 やっぱり、圧倒された。あの人を見た途端、どれだけ構えていてもどうしようもなく動きが止まってもうた。

 やけど、今はあの人を見てる場合やない。一緒にいるっていう女を見るんや。呪いの子なんてたいそうな呼び名なんやから、きっと——

 

 

 

 

 その女を見た瞬間、はらわたが煮えくりかえるような想いになった。そこにおったんは呪術の制御も出来ていない、歩き方も戦いを一度も経験したことのない奴のそれやった。

 

 杖をついて歩いとる。髪の毛と肌は白くて、ボロボロの服を着とる。見た目はなかなかのもんやけど、あの人の隣にいていいような奴やない。

 

 

 

 

 

 

 ふざけんなや。

 

 

 

 

 

 何でお前みたいカスがその人の隣におんねん。

 その人はお前みたいなカスが一緒にいていい人やない。

 お前は、お前は——

 

 

 

 

 

 そこに立つな。

 

 俺はその人と同じアッチ側に行って、並ぶんや。そこにお前はおらん。お前みたいなカスは死んでしまえばいい。

 

 

 

 気に入らない、気に入らない。あの女の全てが気に入らない。

 

 角から覗いとった俺に気づきよった。その後、興味なさそうに向きを変えてあの人と話始めたんや。まるで俺のことなんか眼中にもないとでも言わんばかりの態度。それが俺の神経を逆撫でした。そして、一つのことを決意した。

 

 ——あの女を殺す。

 

 

 

 

 その日、外出したあの人とあの女は帰ってこんかった。きっと外でどっかに泊まってるんやろ。そのことにはらわたが煮えくりかえるような思いをしたが、あの女を殺す時のことを考えて頭を冷やした。

 

 どんな声で鳴くんやろ。どんなふうに命乞いしてくるんやろ。謝ったってやめてやらん。

 

 ああ、楽しみやわ。

 

 

 

 あの女が帰ってきたらしい。もう昼になる。やけど今ことを起こすわけにはいかん。やるなら全員が寝静まった夜や。早く夜が来るとええな。

 

 

 夜、俺は家を抜け出した。深夜の一時ぐらいやった。今夜は満月で月明かりが差しとってほのかに明るかった。とはいえ、真夜中やから暗いことには変わりはない。やから呪力で目を強化しながら歩いてった。あの女は目が見えんらしいから、いつも夜みたいなもんなんやろ。こんな綺麗なお月さんも見れんとか可哀想やわ。いや、あんなカスにはこんな綺麗なもん見るのも勿体ないか。

 

 にしてもえらい不便な所に住んどるな。木を避けながらとはいえ、術式使って一時間近くかかるってどうゆうことやねん。家のカスどもは何をあんなカス一人を恐れとるんや。あんなん兄さん方でも倒せるわ。あんなんを呪いの子なんて呼んでもうて情けないなあ。あれの呪いで何人も死んだとか言うとったけど、そんなわけあらん。偶然や偶然。あんなカスにそんなことができるわけないやろ。

 

 屋敷が見えてきたけど、ボロボロの所に住んどるなあ。あれじゃ雨漏りも酷いやろ。まあ、あんなカスにはお似合いやろ。むしろ屋根があるだけ贅沢やと思わんと。

 

 見つけた。アホみたいにグースカ寝とる。これから俺に殺されるとも知らないで呑気なもんやわ。布団もペラッペラの紙同然のもんや。ほぼないものと同じとはいえ、布団すら贅沢やろ。

 

 まあいい。予定通り殺したる。呪術も使えないカスやし、呪力は使わんでも良いやろ。非術師なら呪霊に転じる恐れもないし、残穢が残らんように持ち出した包丁で一突きや。

 

(死に晒せやぁ!!!!)

 

 

 

 ドガァッ!!!

 

 

(―――は?)

 

 今、何が起きた?

 

 俺は間違いなくあの女を刺し殺したはずやった。あの女も眠っとって抵抗なんてできん。それなのに気づいたら吹き飛ばされて庭に打ち付けられていた。

 じゃあ何や? 呪いの子の力とでも言うんか? 自分に危害を加えようとする者を悉く殺したという呪いの子の。やけど話だと突然心臓が止まって死んだって話やった。どういうことなんや?

 

 

 

「誰ですか?」

 

 !? あの女の声や!

 

「……ああ、あなたは確か私に殺気を向けてきていた方ですか。」

 

 この女、呪力で人を判別しとるんか。あの時の一瞬で俺のことを覚えてるんか。

 

「まあ、誰だろうと関係ありませんね。私を殺しに来たみたいですから。ですが残念でしたね。私は眠っている間であろうと警戒を怠ってはいないんですよ。」

 

 成程、あん時は猫を被っとったんか。力があるのを隠して相手を油断させる。弱者のようやることや。どうして襲撃に反応できたのかは知らんが、こんな奴敵やない。

 

「死ねやぁ!!」

 

 さっきのは不意を打たれただけや。分かっていればこんな奴!

 

 

 

「はぁ……。」

 

 

 

 そして、気づいたら俺は再び地に伏していた。女が俺を見下ろしている。ふざけんなや。女が俺をそんな目で見んな。

 

「いつまでそこで転がっているのですか? 早く立ってください。邪魔です。」

 

 ふざけんなや!!! このドブカスがぁ!!!

 

「私はあなたに構っているほど暇ではないんです。だから早く帰っていただきたい。それに、そもそもあなた誰ですか?」

 

 は? 俺のことを知らんのか? 俺は禪院家の次期当主やぞ。

 

 怒りで頭がカッとなり、大声を上げて名乗ると、この女は興味なさげにこう返してきた。

 

「それで、直哉さんは何しにここにいらしたのですか?」

 

 何しに来たかやと? そんなん決まっとるやないか。

 

「甚爾くんから離れろやぁ!!」

 

「は?」

 

 「は?」やと? ふざけとるんか? お前みたいなカスがあの人の近くにいていいはずがないやろが! それも女が! 女は男の三歩後ろを歩いとけ!!

 

「私に言ってもどうしようもありませんよ。甚爾さんに直接私と関わらないように言えばいいのではないでしょうか。」

 

 私に言ってもどうしようもない? そんなこと聞いてないねん。死んであの人と俺の視界から消えろって言ってんねん。

 

「……ああ、成程。」

 

 目の前の女が何か納得したような声を出した。何を納得したのかはしらないが、腹が立つことには変わらなかった。

 

「力でどうにかしたかったようですが、体感したように私の方があなたより強いです。なので、話を聞いてほしければ私と正面から戦って勝ってください。」

 

 舐めとるんかこの女。術式も使っとらん俺に勝ったぐらいでいい気になりよって。見とけや。ボコボコにしたる。泣いて謝ったってやめてやらん。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 俺は負けた。術式も使って、全てを出し切った上での敗北やった。それなのにあの女は手加減をしてまだまだ余裕があるようやった。

 

「何や……。何でや。何で……。」

 

 その上あれだけ勝てると調子に乗って見下していた俺を認めるような発言をした。俺の中で、何かがポッキリと折れたような音がした。

 

「私とあなたでは環境が違ったんですよ。確かにあなたも修行はしていたでしょう。ですが私はしなければ死ぬという理由が大きかったんです。命懸けで修行をしているのですから、他の人より伸びるのは当然でしょう。」

 

 それを聞いて完全に理解した。いや、気づいていながら気づいていないふりをしていただけかもしれない。

 

 目の前にいる自分の一つ下の少女はあの人と同じ、アッチ側の人間なんやと。そう思うとさっきまでの怒りはどこかへ行ってしまい、本心から認めるような言葉が出て来た。

 すると素直に喜んだような言葉が出てきて、褒められ慣れてないんやと分かった。

 

(そういえばこの子の名前を聞いてへんかったな。)

 

「なあ、君名前は?」

 

「あれ? 知らずにここに来たんですか? まあいいですが。私は絳禰です。よろしくお願いします。直哉さん。」

 

 どこか驚いたような声を出しながらも名前を教えてくれた。

 

 絳禰ちゃんか。

 

 

 ———俺もいつかソッチ側に行ったるからな。




この後は主人公紹介。

それにしても他のキャラは最低でも二話は書いてもらったのに直哉くんだけ一話とか可愛そう
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