無事許可も取れたし、準備をしに戻ろう。チケットを取ったり時間を甚爾さんに伝えたりとやることは山ほどあるんだ。
帰るために屋敷を歩いていると私の耳に女の子の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあ!」
少し舌足らずな声で、まだ子供であることが想像できた。
流石に気づいた以上は無視をするわけにもいかず、そちらに向かう。呪力を探ってみると子供の呪力が二つと大人の呪力が一つ。子供二人はほとんど同じような呪力だ。恐らく双子なのだろうが、片方の子はかなり呪力が少ない。一緒にいる大人はその二人の呪力によく似ており、親子だろう。
子供二人が男の足元に倒れていて、男は拳を振り切ったような体勢だ。これは虐待だろうか。まあ珍しい話ではない。双子は凶兆とされているし、女で呪力も少ない。この家では虐待対象になることはある意味当然だろう。胸糞悪い話ではあるけど、まだ私よりはマシなのが酷い話だ。もっとも私は前世の記憶があるから彼女達よりは心が保てた。
「何をしておられるのですか?」
現場に着いたので三人に向かって声をかけたのだが、それまで私が近づいているのに気づいていなかったのか驚いたように私の方を向いた。
余程虐待するのに忙しかったんでしょうね。
「貴様は! 呪いの子が何の用だ!!」
「私が今質問したのですが、質問に質問で返すのはどうかと思いますよ?」
「何だと貴様ぁ!!!」
え、私そんなに変なこと言った? 質問に質問で返さないのは普通じゃない? 聞かれてるんだからちゃんと答えようよ。はぐらかしたいなら話は別だけどあなたは違うでしょ?
「はあ……。悲鳴が聞こえたので気になって来ただけですよ。」
「なら早く失せろ!! 貴様には関係のないことだ!!!」
そういうわけにもいかないんだよなあ。自分と似たような境遇の女の子がこんな目に遭っているのを見過ごしたら自分を見捨てるのと同じようなものだ。何とかできないものか。
「そこの二人、お名前は?」
この男は無視して双子に声をかけてみるが、どうやら急に現れた私を警戒しているようだ。まあ無理もないか。今まで助けてくれるような人なんていなかっただろうし、二人だけで耐えてきたんだろう。誰も頼れるような人がいない中で突然、得体の知れない呪いの子などと呼ばれている怪しい女が名前を聞いてきたのだ。警戒しないはずもない。
「私は禪院真希。コイツは妹の禪院真依だ。」
やっぱりかなり警戒されている。姉の方が妹を背中に庇った上で答えた。きっと妹想いのいい姉なんだろうな。前世で私も姉だったけど姉らしいことなんて全くと言っていいほどできなかった。だからこの二人は少し羨ましいな。
そういえば二人の名前に聞き覚えがあるのだけど、呪術廻戦で主要なキャラだったのだろうか。でなければ聞き覚えがあるはずがないし、双子の虐げられている人物なんて物語に出しやすそうだ。
ま、だからなんだって話だけどね。
「それであなたは確か当主様の弟さんの禪院扇さんでしたか。何故このようなことを?」
「出来損ないを教育して何が悪い!!」
「出来損ない、ですか。」
「何だ! 何が言いたい!!!」
いや、その、だって、あなた私と同じ術式なのにただ刀に炎を纏うぐらいしかできなくて応用は一切できていないって直毘人さんに聞いたんだけど。あなたの方がよっぽどじゃない?
「いえ、別に。ただ、そう言って虐げていた人に以前完膚なきまでに潰されていたのを思い出しただけです。」
「貴様ぁ!!! あれは貴様の指示だろう!!! 責任をとって今すぐ死ねぇ!!!」
「あれは本人の判断ですよ。あの人が他人の言うことを素直に聞くはずがないじゃないですか。」
やるって聞いた時は一緒にノリノリで計画立てたけど。
「ふざけるなぁ! 今すぐ剣を持てい! 叩きのめしてくれるわ!!!」
え? やるの? でも私にメリットが一切ないんだよなあ。
「分かりました。ならば私が勝った際には二度とそこの二人に当たるのはやめてください。それを約束してくれるならその勝負喜んでお受けしましょう。」
「ああいいだろう!! 目にものを見せてくれるわ!!!」
よし。乗ってくれた。これで問題なし。縛りも結んだしこれならこの二人の状況も少しはマシになるだろう。
それと二人が驚いたように私の方を見ているが、何だと言うのか。何か言いたいことがあるなら言えばいいのに。
それにしてもどこで戦うのだろうか。どこで戦うにしても許可は必要だろうし、また直毘人さんのところに行かなくちゃか。めんどくさいな。
みんな大好き扇さんが登場したよ!
主人公と術式お揃いの人だよ!