転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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修行

 直哉が医務室に連れて行かれた。まあ、大きな怪我はないように戦ったから問題はないだろう。流石に次期当主候補筆頭に一生の傷を負わせようものならどうなるかは分かったものではない。それゆえにああしたのだが、彼にとってはそれすらも屈辱だったかもしれないな、なんて考えたけど、大丈夫だろう。彼はそういうのを受け止めて前に進める人だ。

 

 だから、大丈夫。

 

 

 

 

 私に追いつこうとしてくる人なんていないから、直哉の存在は貴重だ。どうかそのまま上だけを見て腐らないでほしい。上を目指して挫折して、諦めた人なんてこの世に大勢いるから。

 

 私が何かを諦めることなんて未来永劫ありえないけど、それは一度死んでしまっているからだ。他の人が同様だとは思えない。私みたいにそこまで何かに執着することのできる人の方が少ないだろう。そういう人が大成するとはいえ、なかなかいないものだ。

 

 その点で言うと直哉は珍しい部類の人間だ。多分死ぬまで突っ走るような人だろう。ある意味では私の同類か。

 

 

 

 

 

 

 そんなことはさておき、ここでやることは終わったし、東京行きの準備でもしに行くかな。荷物をまとめたり新幹線の座席を予約したりとやることがたくさんあるんだ。できればこの後面倒ごとが起きるのは避けたいけど、私の戦いを見て正面から突っかかってくる奴なんていないだろう。いたら流石に正気を疑う。

 

 もしいても相手をしてやるつもりはない。直哉と戦って満足したんだ。それ以上私に魅せてくれるのは悟か甚爾さんぐらいしか私は知らない。この家の人間に興味なんてない。誰かを蹴落とすことに注力して自分の研鑽を怠るような連中に興味を抱くはずがないのだ。

 

 帰る前に直毘人さんには挨拶をしておくか。

 

 

「では当主様、私はお暇させていただきます。」

 

「ああ、今日はいいものが見れた。儂も鍛え直さんとな。」

 

 そんなことを言うが、あなたは酒を飲んでいても当主の仕事の合間を縫って修行しているでしょうに。老いはあってもあなたは一級術師の名に恥じない実力ですよ。

 

 ああ、等級だと私も一級ですかね? 国家転覆は今のところ出来そうにないしね。まあ、家が私の術師デビューは今のところ認めていないし私の勝手な考えだけど。

 

「直哉さんが起きたらまたやりましょうと私が言っていたとお伝えください。」

 

「分かった。言っておこう。」

 

「では失礼します。」

 

 さあ、帰ろう。

 

 

「あ、あの!」

 

 帰ろうと思っていたら声をかけられた。まだ子供の女の子の声だ。この戦いを見ていたということはあの双子かな?

 

 呪力も同じだし、そうだね。

 

「何?」

 

「ど、どうすればあなたみたいに強くなれますか!」

 

 強く、か。

 

 どうだろう。私の場合は転生しているから赤ちゃんの時から呪力操作とかをしてきたわけだし、一日のほとんどの時間を修行に使ってる。この子達は仕事があるからそんな暇はないだろうし難しいんじゃないかな。

 

 でもなあ。それをはっきり言うのもなあ。

 

「うーん、そうですねぇ。修行を他の人以上に行うこと。あとは、使えるものはなんだって使うことですかね? ああ、体調管理には気をつけてましょうね。修行のし過ぎで倒れてしまったらそれだけ時間が減りますから。」

 

 ここでお節介な人だったら自分がいつでも相手になるよとか言うのだろうけど、私にそんな暇はない。それに多分私は人に何かを教えるのに向いてない。

 

「まあ、折れずに頑張ってくださいね。」

 

「なあ! 今度私たちに修行をつけてくれねえか!?」

 

 げ。

 

「あんたに教えてもらいたいんだ! 他にこんなこと頼める奴はいねえし!」

 

 そうか、この子達は女の子だし凶兆と言われる双子なのだからそんなことをしていたら目をつけられるかもしれないのか。他の人間に頼んだら修行と称して嬲られるのが目に見えている。

 

 かと言って私が教えるわけにもいかない。私が教えるとなると私が山から降りてくるか二人が山に来るかのどちらかだ。

 

 子供があそこまで歩いてくるのは厳しいだろうし、私はそう何回もここに来れるわけではない。

 

 甚爾さんから連絡が来たけど長期間頼みたいことがあるらしい。だからそちらを優先することになるし難しいだろう。昨日初めて会った子たちと今までお世話になってきた人のどちらを取るかと言われたらほとんどの人間が後者だろう。もちろん私もそうだ。

 

「教えてあげたい気持ちもありますけど、私もやることがありますから難しいかもしれないですね。」

 

「そ、そうか……。」

 

 あ、しょんぼりしちゃった。二人ともどこか寂しそうだ。私、こういうのに弱いんだよなあ。

 

 仕方ないか。

 

「……たまになら見てあげられると思います。」

 

「「本当(か)!?」」

 

 私がそう言うと先程まで項垂れていたのはどうしたのかと思うぐらい嬉しそうな声を出した。漫画だったらパァァァァァァァァァァみたいな擬音が背景に描かれるだろう。それほどの笑顔を二人とも浮かべていた。

 

 なんだ、そんなに私から教わりたいのか。ま、一度やると言った以上やるけど。

 

「私が見てあげられるのは月に一、二回程度ですしょうし、他は誰かに頼みましょうか。」

 

「ま、待ってくれ!」

 

 私が誰かに頼むと言うと急に慌て出した。私に教わるのはいいけど他の奴らは信じられないって感じかな。

 

「大丈夫ですよ。直哉さんに頼めばやってくれますよ。あの人なら私の頼みですからあなたたちに危害は加えないはずですから。」

 

 私がそう言っても不安な様子はなくならない。余程男に対する———というより人間に対する不信感が強いのだろう。まあ、この家で過ごしてきた以上仕方ないことだろう。

 

 ん? なら私は?

 

「あ、あんたが言うなら信じるけどよ。ちゃんとたまには教えてくれるんだよな?」

 

「はい。もちろん。」

 

 基本直哉に丸投げするけどね。彼も暇ではないだろうけど人に教えることで新しい発見があるものですよとかなんとか言っておけばいいでしょ。

 

「しばらくは私は忙しいですから、二人で頑張ってくださいね。」




誰も助けてくれなかったところを何の見返りも求めずにカッコよく助けたんだから憧れられるに決まってるじゃないですか。それも同じ女性で自分たちよりも扱いが悪いはずなのにねえ。
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