いやー驚いてる驚いてる。結構前から気配を消しておいて正解だった。私のことをシメようとか言ってたから思わず杖で殴ってしまったけど悟なら大丈夫でしょう。
それにどうやら悟は同級生と仲良くできているらしい。さっきまで楽しそうに話してたし上手く馴染めているようだ。あんな性格だから一人になってないかと心配だったけど問題なかったらしい。まあ、仲良くなる前に絶対一悶着あっただろうけどね。
「なんで殴ったんだよ。痛えだろ。」
「私のことをシメようとか言っているのが聞こえたのでお仕置きに。」
「コイツらも反対しなかっただろうが。」
友人と初対面の相手だったらそりゃあ対応は変わるでしょ。初対面の人を殴ったらただのヤバい奴だからね。甚爾さんに初対面で斬り掛かったことはノーカンだ。あんなに怪しい動きしてた人が悪い。私は悪くない。
「あ、そちらのお二人は初対面でしたね。私の名前は道元絳禰です。どうぞよろしくお願いします。」
「おい待て無視すんな。」
悟が何か言っているが無視だ無視。
「あ、ああ、私は夏油傑だ、よろしく。」
「いやー、あんた面白いねー。あ、私は家入硝子。よろしくー。」
夏油さんに家入さんか、なるほど覚えた。ただやっぱりこの二人の名前も聞き覚えあるんだよね。漫画で出てたかな? ということは二人とも生き残っているんだろうけど夏油さんがなあ。どうも敵役だった気がしてならないんだよなあ。うん、ま、敵になった時に考えれば良いか。私の敵になるというなら叩きのめすだけだし。
「悟が溶け込めているか心配だったんですけど大丈夫みたいで安心しました。仲良くしてもらってるみたいでありがたいです。私以外に友人がいませんでしたから。」
「あー、確かにこの性格じゃねー。」
「絳禰もいねえだろうが。」
「悟の相手は大変でしょう。」
いやほんと悟の相手って大変なんだよね。すぐに何かしらの問題を起こすから私が対処することになったし。
「いや、そうでもないよ。楽しくやれてるからね。まあ、たまに喧嘩はするけど。」
ほほう、喧嘩しているということは悟とそれなりに戦えるのだろう。一般家系だろうに凄いなあ。術式が余程当たりなのかな。悟の友人をしているわけだし二人とも何かしら特別なものがあるのだろうな。
「じゃあお二人とも、今日はお願いしま——」
「待てよ!!」
夏油さんと家入さんに案内を頼もうと思ったのだけど、悟から声をかけられた。はて何だろうと思いそちらを向くと、不機嫌そうにしている姿があった。流石に無視しすぎたか。
「では、これで私をシメようなどと言っていた件については終わりにしてあげます。いくら何でも可哀想ですからね。」
「お前……。」
「あっははは! 二人はいつもそんな感じ?」
「大体はこんな感じでしたね。」
揶揄うと面白いからね。もっとも、揶揄って面白いからといって他の人にするつもりはないけど。
「で、説明はしてくれんだよな?」
「説明も何も、東京に来る用事があったのでついでにここにも来てみようかと思っただけですが。」
甚爾さんに恵くんの件で呼ばれなかったら今頃いつも通り修行してただけだろうしね。どうせ近くに行くなら友人の顔を見てみようと思ってここに来ただけだし。
「あとその髪は何だ? ていうかお前道元じゃなくてぜ——むぐっ。」
悟が余計なことを口走りそうになったので慌てて口を押さえた。流石に禪院家だとバレるのはマズい。バレないようにするのも条件に入ってるのだからバレるようなことは絶対に避けなくてはいけない。元々知っている悟はいいけど他はダメだ。これは悟に頼んでおかないとダメっぽいな。
「今日は禪院ではなく道元という名前で来ているので、できれば悟も私のことは道元として扱ってください。」
「あ? 何でんなめんどくせぇことになってんだよ。」
「私は一応公には存在していない扱いですから色々とマズいんですよ。ちなみに髪の毛は白だと目立つと思ったのでカツラを被ってきました。」
私と悟が小声で話しているとその様子を怪訝に思ったのか夏油さんと家入さんが疑問の声をあげた。
「どうかしたのかい?」
「二人だけでコソコソ話して内緒話? 私らも混ぜろよ。」
え、いや、この人たち距離の詰め方やばくない? 私と初対面なのに久しぶりに会った友人同士の会話に平然と入ってくる? 普通気まずくなって会話が終わるまで待つものじゃない? これが一般家系のコミュ力か………。
「ああ、コイツ髪の毛本当は白なんだけど何で黒になってんだって話。」
「え、アンタと同じ色なの? かわいそー。」
「それ以外は基本的に正反対なのでそこまで気にすることではないですね。それに今日はそうしているというだけで普段はカツラなんてつけずに出歩いてますよ。」
「というか二人はいつ知り合ったんだい? 結構長い付き合いのようだけど。」
「たしか、私が六歳で悟が八歳のときでしたかね。その時初対面で喧嘩売られたんですよね。」
今考えてもあれはおかしい。なんで初対面の人間にそこまで強くでれるというのか。私も敵なら容赦や遠慮なんてしないけどあの場面であの言動はおかしい。
「へえー。で、どっちが勝ったの?」
「引き分けですね、残念ながら。」
でもどちらかといえば私の方が負けていたかな。最後にぶっつけで無下限破る技を出せたけどそれがなければ私に対抗策は何もなかったわけだし。六眼の呪力操作には叶わないし効率も悟の方がいいからあのままだと私は攻撃を避けるだけで何もできずに終わってたんだよなあ。やっぱり五条家の神童は伊達じゃないな。
「驚いたな、悟と引き分けたなんて。私も一度悟と戦ったんだけど終わった頃にはボロボロだったよ。それでもなんとか引き分けに持ち込んだけどね。」
え、マジ?
「夏油さんって一般家系出身ですよね。なら呪術に触れてあまり時間が経ってないのに悟と引き分けたんですか? すごいですね。」
「コイツ術式大当たりだからねー。」
へえー。無下限がいるのに大当たりって言うということはそれに並ぶぐらいの術式なんだろうね。でも術式の情報は術師にとって重要なものだし話すわけないけど。
「ああ、コイツの術式当たりも当たりの呪霊操術なんだよ。」
!? い、言いやがった!? 人の術式をあっさりと日常の会話レベルでポロッとこぼしやがった! 何やってんの!?
「そうなんだ。私の術式は呪霊操術でね。術式としてはかなり格が高いらしい。」
え、本人も軽く言っちゃった。
「あ、ちなみに私は術式ないよー。ただ反転術式のアウトプットができるんだよねー。」
おおー、それはすごい。私も反転術式は使えるけどアウトプットはできないから今度教えてもらおうかな。どれだけ使えるように修行しても使えなかったからお手本がいるというのはとてもありがたい。
「いや、お二人ともそう簡単に自分の情報をさらすのはやめたほうがいいと思いますよ。」
私としては二人が敵になったときのためにもそういった情報を知れるのはありがたいけどね。というか悟は止めなよ。友人なんだからそういうのはちゃんと教えてあげないと。
「悟の友人なんだし大丈夫だと思ってね。」
「はあ。今回は仕方ないですけど気をつけてくださいね。」
「分かったよ。」「はーい。」
「別に知られたって正面から叩きのめせばいいだけだろ。」
……コイツ。
とまあ、悟との再会とその同級生との出会いはこのように終わったのだった。
相手は術式教えたのに自分は何も言わない主人公。立場的に情報を隠すのは当然だよね。