「それでは、質問タイムにしましょうか。お二人は私に聞きたいこととかあるでしょうし、私も聞きたいことがたくさんありますから。」
それを聞いて夏油さんと家入さんは「おおー!」と楽しそうな声を上げた。やっぱり高校生だし、世間一般では一番楽しいと言われる時期なのだから楽しそうだ。呪術という一般の人とは関わりのない特別な要素があったとしてもそれは変わらないだろう。
よく考えたら私、前世も今世も青春っぽ青春してないな。いや別に? 寂しいとかいうわけではないけどね?
「はい。じゃあ何で室内なのにサングラス着けてんの?」
「私、目が見えないのでそれが傍目では分からないようするためですね。でも、もう大丈夫ですから外しましょうかね?」
「ああ、コイツ天与呪縛なんだよ。その代わりに他の五感が強化されてるっていう。」
悟? 何で勝手に私の情報を教えるのかな? 元々話すつもりではあったけど、君が私の了承も取らずに話すのはダメだと思うんだ。そんなんだから君の評価は一向に上がらないんだよ。
「そうなのか。こう言うと失礼かもしれないけどそうは見えなかったよ。」
「生まれた時からですので慣れているんですよ。」
ぶっちゃけもうなくても困らないんだよね視覚。ただ、美しい景色とかを見れないからそこは残念だ。それに甚爾さんや恵くん、津美紀ちゃん、瑠璃さんの一家四人の顔に友人の悟の顔が見れないのは少しだけ悲しい。まあ、こんなことを今言ってしまったら空気を壊してしまうだろうから言わないけど。
「あ、次私から質問いいですか? 家入さんに聞きたいことがありまして。」
「いいよー。あと、私のことは硝子でいいよ。」
「ありがとうございます硝子さん。」
同性で同年代の人と親しくしたことなんて一度もなかったし、この人とも友人になれたらいいな。
「反転術式のアウトプットのコツって何かありますか?」
「いやお前最初に出てくる質問がそれかよ。もっと他にあんだろ。好きな食べ物とか。」
それは私も思ったけどどうしても知りたいんだもん。どれだけ頑張っても全くできなかった技術を使える人に会えたんだからそりゃあ聞くでしょ。あと好きな食べ物の話は私の中で禁止カードだ。味覚ないし。
「んー、そうだねー。こう、ヒョイってやってヒュッ。ヒョイヒュッ。」
「???」
「分かんない? あんたもセンスないわねー。」
あれで分かる人の方が少なくない? え? 悟たちは分かるの?
そう思い二人の方を向くと二人とも頭の上にハテナが浮いていた。よかった、分からないのは私だけじゃなかった。うん。硝子さんに説明を頼むのは今後やめよう。多分実際に見た方が有益だな。
「次、私からいいかい? 質問というよりお願いになるんだが、私と一度戦ってもらえないだろうか。」
……どうしよう。
別に戦ってもいいのだけどそうなると学校側に許可を取らないといけないと思うんだよね。そうなると禪院家に戦ったことが知られて直毘人さんに文句言われるんだろうなあ。ま、いいか。
「構いませんよ。ただその前に聞きたいことがありまして。」
「ん? 何だい?」
「呪霊ってどういった風に取り込むのですか? 手から吸収するみたいな感じでしょうか。」
呪霊取り込むとかほんとにどうやってるんだろう。
「ああ、それなら簡単だよ。口から取り込むんだよ。」
夏油さんは少し顔を顰めながらもそう言った。
……それにしても口から、か。
「大丈夫なんですか? 呪霊って口に入れると最悪じゃないですか。」
「……何でそう思うんだい?」
「何でって、体内に呪霊が侵入時のために弱らせた呪霊で試していたので。味覚がないのでマシでしたが食感だけで最悪でしたね。味もしないのに気持ち悪さだけが口の中に残りましたね。不快感が直接感じられる最悪の感覚です。味が感じなくてそれなんですから夏油さんはその比ではないでしょう。」
「私は君がそんなことをしていることに驚きだよ。」
あの時の気持ち悪さと言ったらもう筆舌に尽くし難い。しかも呪霊の等級が上がれば上がるほどその感覚は増していく。まだ二級までしか試したことはないけれど、それが一級や特級になったらどんな感覚なのだろうかと想像するだけで吐きそうになる。二度とやりたくないと思うレベルには酷い。でもやる。
「それで、実際どのような味なのですか?」
「おい傑。正直に答えろ。」
「確かに食感は最悪だけど味はそこまでではないよ。とてつもなく苦いけどね。」
「そうか……。」
悟が夏油さんに問い詰めていたけど、まあそうなるよね。自分の友人が何も言わずにそんな辛い思いをしていたのだとしたら。でも本人がそこまでではないと言ったことでほっとしたってことか。でも、残念ながら——
「嘘はよくないですよ。辛いなら友人に相談するべきだと思いますよ。何かあってからでは遅いんですから。」
彼の言葉は嘘だ。
「な!? おい傑!」
私の言葉を聞いて悟が夏油さんに掴み掛かる。それが分かって私は軽く驚いていた。あの悟が他人のためにここまで怒ることができるのかと。それほど夏油さんは悟にとって大きな存在なのだろう。
「何故分かったのかは分からないが、その通りだよ。味は、そうだね。吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みしているようなものと言えばいいだろうか。」
うわ。
「何で今まで言わなかったんだよ!!!」
「人に言うことではないと思ってね。あくまでこれは私の問題だ。悟や硝子に話すようなことではないと思ったのもあるけどね。」
まあ、私でもそうしただろう。でもそれを二人がどう思うかは別の話だ。私が隠していても悟や伏黒一家に怒られていただろうな。
「あのねー。言ってくれれば私らも力になれたもしれないんだからちゃんと言いなさいよ、」
「私が言うのもなんですが、一人で抱え込まずに周りを頼った方がいいですよ。あまり抱え込みすぎると潰れてしまいますから。それに、この世界は残酷ですから繋がりというのは大切なんです。一人で戦ってるわけではなく、友人が、仲間がいるんですから。どんどん頼っていいんですよ。もちろん私も相談に乗りますから。」
「そう、だね。みんなすまない。」
そう言った後悟はニヤッと笑って一発夏油さんを殴った。でも、夏油さんは憑き物が取れたように楽しそうに笑っていた。