転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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絳禰の目が見えないという設定があるから“見る”とかそういう表現を使えないから困る時がある。極力使わないようにしているけど、つい使ってしまう。


対人

「私の勝ちですね。」

 

「はあ、はあ。クソが!」

 

「ちょっと速すぎないかい?」

 

「一人だけスピードおかしいでしょ。」

 

 私に勝負を挑んだこと自体が間違いなんだよね。身体能力が関わる場面で私に勝てる人間なんて殆どのいないんだし。甚爾さんでも私が全力で呪力強化すればギリギリ勝てるし、私に勝てる人間なんて術式を全力で使用してスピードに乗った直毘人さんぐらいなものだろう。

 

「というわけで傑さん、終わったら水を奢って下さいね。」

 

「水でいいのかい?」

 

「何を飲んでも同じですし、それなら安いものの方がいいでしょう?」

 

 だって何を飲んでも味なんて感じないし、高いジュースなんてものを飲んでも虚しいだけだろう。ほんと、この天与呪縛は碌なものじゃないな。ああ、私も食事を楽しんでみたいなあ。

 

「何を飲んでも同じ? それは一体どういうことだい?」

 

「ああ、コイツはな———」

 

「悟。」

 

「ん、ああ。」

 

 悟が余計な事を口走ろうとしたので、思わず静止の声を上げた。天与呪縛で何を食べても味を感じることができないないんて、わざわざいう必要はないだろう。そんな事を知ってしまったら二人に気を遣わせてしまう。それは私としても本意ではないし、悟には黙っていてもらおう。

 

 私と悟の様子から何かを察したのか、傑さんと硝子さんも何も触れないでくれるらしい。ありがたいことだ。

 

「よし、全員揃っているな。今日は予定を変更して対人格闘を行う。」

 

「さっき話しただろ。」

 

「悟、何か言ったか?」

 

「何も?」

 

 悟も学ばないなあ。もはやそういう生態なんだろうな。きっと大人になってもこんな感じなんだろうな。何もキッカケがなければ、だけど。

 

「敵が呪具を使用している場合もあるため、武器を所持した相手との戦闘を想定して行なってもらう。とりあえず最初は悟が武器を使え。武器は何でもいい。適当に選べ。」

 

「武器ぃ? んなもん使ってる奴に負けるわけねえだろ。てか俺武器なんて使ったことねえんだけど。」

 

「私も同感ですね。呪具なんかに頼っている人間に負けるほど私たちは弱くない。」

 

 ……

 

「文句を言わずにやれ!」

 

「はいはい。」

 

 ……

 

「それと硝子は俺の呪骸が相手だ。」

 

「はーい。」

 

「分かっているとは思うが、当然全員術式の使用は禁止だ。」

 

「では、始め。」

 

 夜蛾さんがそう言うと、待ってましたと言わんばかりに悟が傑さんに襲いかかった。悟が選んでいたのは木刀だ。まあ、大体の人がそれを選ぶだろう。

 

 悟は今まで武器を使ったことなどないなどと言っていたが、全くそうは思えない動きをしていた。これが才能というものだろうか。それとも、センスと言うのだろうか。

 

 どちらにせよ、羨ましいものだ。私は寝る時間を削ってずっと修行をしてきて、甚爾さんにも死ぬほどいじめられてようやくこのレベルだというのに。才ある者はそんな積み重ねを易々と追いついてくる。

 

 悟、君は一体何を持ち合わせていないのだろうか。術式、肉体、センス。それら全てに君は恵まれている。私とは大違いだ。

 

 私は生まれながらに天与呪縛というクソッタレな呪いのせいで目が見えず、味も感じない。術式も特別優れたものではない。ただ炎を出すという術式を発想でやりくりしているだけだ。

 

 そうだな、認めよう。私は悟に嫉妬をしているのだ。

 

 とはいえ、それはどうでもいいことだ。嫉妬なんてしたところで、どうにでもなるものでもない。転生なんてしてる私と真の意味で分かり合える人間なんていないわけだし、そもそも私はこの世界の異物なのだから何を考えたところで無駄なのだ。

 

 私は異物だとしても私の幸せを第一に生きるだけ。それなのに他人に嫉妬なんてしてたら、疲れるだけだ。

 

 それに、悟だって苦労がないわけではないだろうしね。 

 

 

 

 

「私の勝ちだね。」

 

「慣れねえもん使ってんだから当たり前だろ。」

 

「何か負け犬の遠吠えが聞こえるね。」

 

 結局勝負は傑さんの勝利で終わった。いくら悟に才能があると言っても、傑さん相手では厳しかったようだ。傑さんは趣味が格闘技らしく、かなり強かった。

 

 ……呪霊操術の使い手が格闘戦も強いとか反則だと思うんだよね。そういう召喚系の能力持ってる人間って本体が弱いのがお約束でしょ。

 

「アンタらはいいねー。普段から動いてるわけだし、かなり楽でしょ。私は普段反転術式で治療やってるだけだからメチャクチャキツイんだけど。」

 

「てか先生ー。」

 

「何だ?」

 

「これ意味なくね? だって俺らは武器使うのに慣れてねえし、人を呼ぶなら俺らと実力が同レベルの奴じゃなきゃやるだけ無駄じゃん?」

 

「……一理あるな。」

 

「じゃあさー「では!」」

 

 悟が何かを言おうとしたところに言葉を被せて発言する。このままだと悟が何か余計な事を言い出して私は何もできなさそうだし、ここで言うのが最適だろう。それに———

 

「何だ?」

 

「私が相手をするというのはどうでしょうか。私なら普段から刀を使っていますし、丁度いいかと思います。それに、もう少し授業の様子を確認していようと思っていましたが、そろそろ私も体を動かしたくなってきてしまったので。」

 

「ふむ。許可しよう。」

 

 よし!

 

「それではお二人とも、よろしくお願いします。」

 

「よろしく頼むよ。」

 

「お前が相手か。」

 

「ええ。お二人同時にお相手します。」

 

 私はそう言って二人挑発する。さてどんな反応をするか。

 

「あ?」 

 

「ははは。私たちも舐められたものだね。」

 

「あっははは! アンタもなかなか煽るねー! そのままその馬鹿二人をボコボコにしちゃいな!」

 

 硝子さんに応援されてしまった。応援されたからには頑張らなくては。

 

 

 私は先程まで悟が使っていた木刀を手に持ち、正眼に構えた。呪力で肉体を強化し、木刀にも壊れない程度で呪力を込める。

 

「ああ、そういえば先程、武器を使っている人間に負けるわけない、などとおっしゃっていましたね。つまり私に負けるはずないということですよね。ふふふ、舐められたものですね。」

 

「やべえぞ傑。本気でいかなきゃ即終わる。」

 

「……確かに、これは不味そうだ。それに2対1だからね。負けたら言い訳できないよ。」

 

「いいぜ、やってやるよ!」

 

 気合いを入れ、私に向かってくる二人を確認して、私は刀を振り上げた。




この話書き終わったのが19時15分ぐらい。だいぶギリギリを攻めた。
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