「さて、真面目な話はここまでにしてこの後何をしましょうか。」
呪術師の戦う理由だとかそんなどうでもいいけど真面目な話は終わったし、この後やることは特になくなったわけだ。反転術式のアウトプットは体験させてもらったし、悟の様子も確認できた。ただ、まだ来てからさほど時間が経っていないわけだしそんなにすぐに帰るのは良くないことだろうからどうしたものか。
「あん? そんなん決まってんだろ。」
「そうだね、あれしかないね。」
「お、良いねー。」
え、何をするかもう三人の中では決まってるの? 私の事情も考慮するとできることは大幅に減ると思うんだけど何かあるわけ?
「行くぞ!」
「え、ちょ……!」
悟に腕をつかまれ、一緒に走り出した。どこに行くかは知らないけど、楽しそうだしまあいいか。
「………どこですか此処。」
「海だが?」
いや、そういうことを聞いているわけじゃないんだけど。
「まだ7月だからね、泳ぐには丁度いいんじゃないかな。」
「私水着なんて持ってないんですけど。それにそもそも何故海なんですか?」
「だって海ならあんたも楽しめんでしょ。」
だから水着がないんだけど。海に来て水着がないとかただの馬鹿でしょ、全員持ってきてる様子もないし。私のことを考えてくれたのはいいけどそこはどうするつもりなんだろう。
「ここの海の家で水着借りられるんだよ。」
へえ、そういうサービスみたいなことをやっているところがあるんだ。そういうのって珍しいのかな。え、待って? ひょっとして私も水着着るの? 生まれてこの方水着なんて着たことないんだけどどうすれば良いの?
「……私も着ろと?」
「当たり前だろ。」
「当然だね。」
「そりゃそうでしょ。」
私の貧相な体さらして何が面白いのかなあ。私まだ十四歳の子どもで世間で言う中学生の年齢だよ? ああいや、その方が良いのか。不躾な視線を誰かに向けられることもないだろうし。
それに―――
「お姉ちゃんこの水着どうかな!? …………あ、ごめん。………お姉ちゃんとも、いつか一緒に行きたいなあ。」
……
「ごめんね、一緒に遊べれば良かったのにね。」
「ん? なんか言ったか?」
「いえ、何も。」
たまには、こういうのも良いかもしれないな。まあ初めて水着を着るわけだし最初は地味めなのからかな。この三人にとんでもないもの着せられそうだし、頑張って自分で選ぶかな。
「よし! じゃあまずは俺らで絳禰の水着を選ぶぞ!」
え、は、ちょっ
「良いんじゃないかい? 初めて着るみたいだし誰かが選んだほうが良いだろうからね。」
待っ
「はあ? あんたら二人には任せらんないでしょ。同じ性別の私が選ぶべきじゃない?」
「いや、勝手に話を進めないでいただきたいのですが。」
何故私の水着を選ぶことで話が進んでいる? 私の意思はどこへ行った?
「じゃああんたあれだけある中から良いの選べるわけ?」
そう言われて水着がある方を確認する。
…………うん、無理だ。何あの数。馬鹿みたいな量あるんだけどそんなに借りる人いるの?
「……お願いします。」
「よし! じゃあ誰が一番似合う水着を選べるか勝負だ!」
「は?」
「これは負けてられないね。」
「素材がいいから逆に難しいよね。」
「いや、は?」
私これから着せ替え人形にされるのかな? 私は見世物じゃないんだけど。あと審判は誰がやるのさ。私じゃあ判断のしようがないし三人の投票だと全員自分の選んだものに票入れそうだからそれも無理。まさかそこら辺の誰かに頼むとかないよね。……ないよね?
で、こうなりました。
「キャー! 肌白くてスベスベー!」
「どんなお手入れしてるのー?」
「白髮の美少女、良い……!」
「良いわよね。恥じらう少女が大胆な水着を着るの。」
「私も参加できないかな………。」
悟がそこら辺で五人組の女子グループを引っ掛けてきた。男子にジロジロ見られるよりは全然いいんだけど、なんか二人ほど危ない発言してる人がいたような。あと肌は特に特別な手入れはしていないけどそれを言ったら暴動が起きそうだから黙っておこう。
「まずは誰のから着てもらう?」
「じゃあまずは私のからでいいかな?」
というわけで最初は傑さんの選んだ水着から着ることになった。さてどんなものを選んだのだろうかと全員の前でさらすことになったのだけど、その反応がこちらだ。
「おおぅ……。」「そう来るか。」「良い……!」などなど。
まあそんな反応だったわけだが、そこまで奇抜なものでもない。ドン引きするようなチョイスはしていないからまあいいだろう。
「じゃあ、とりあえず着てきますね。」
そう言って私は更衣室の扉を閉めた。
「じゃあ、いきます。」
身に纏っていたタオルを取り、人生初となる水着姿をさらす。
「なんというか大人っぽい?」
「そうね。色気みたいなものが出てる気がするわね。」
それで反応を伺ってみたのだけど、こんな感じでかねがね好評らしい。
傑さんが選んだのは黒色のビキニ。布の面積もそこまで小さいわけではないし、初めてでも着やすいと言えば着やすいだろう。ただ、普段と比較すると肌の出ている面積はかなり多くなっているわけだから恥ずかしいものは恥ずかしい。
「それで、これを選んだ理由は?」
「君のぱっと見で受ける印象は白だろう? 最初はそれに合わせて白色の水着にしようか迷ったんだが、逆に黒の方が映えるだろうし大人っぽさも出ると思ってね。」
「夏油さんでしたか。あなた………分かってますね!」
「え、ええ。ありがとうございます。」
「未だ成熟していないにも関わらず、大人顔負けの落ち着きを持っている少女をあえて大人らしく強調する。そして水着は下品ではない程度の布面積。それがまた良い……。」
怖っ。
何この人本気で評価しにきてるじゃん。これはあくまで学生のお遊び的なものだしそこまで本気になる必要ないんだけど。他の全い……一人を除いてドン引きしてるじゃん。
「じゃあ、次に行きましょうか。」
「あ、俺は最後な。」
は? そんなこと私が許すとでも思っているのか?
「いえ、悟の選んだものだと色々と不安なので先にやっちゃいましょう。」
「俺の最後の方盛り上がるから後ででいいだろ?」
ほう、つまり普通の水着ではなく奇をてらったものを選んだというわけだ。……だめに決まってるが?
「私はもう今着ているこれでも別に良いのですが、どうしますか?」
「ちっ! 分かったよ!」
そう言うと悟は手に持っていた水着を差し出してきた。さてどんなものを選んだのだろうかと畳まれていたのを広げてみると予想外のものが出てきた。
「スクール水着……!」
「あんた、これはないでしょ。」
「あなたもまた分かっている人でしたか!」
……
「さあ、着てこいよ!」
「……」
「今どきこんなのあるんだねー!」
「ねー!」
ふふっ。
「悟。」
「あん?」
「遺言は聞いてあげますよ?」
「はっはは! 冗談はいいからさっさと着てこいよ!」
へえ、これが冗談だと思うんだ。こんなクソみたいな水着を着せられそうになって私が何も思わないとでも? こんなの着て喜ぶのは一部のそういう性癖の人間だけじゃないかなあ? 本気でこれが私に合うと思ったっていうのかなあ?
「そうですか。遺言はそれでいいんですね?」
「あ、待って。これやばいかもしれねえ。」
「ま、悟の自業自得だね。」
「程々にしときなよー。」
許可も出たし、覚悟しなよ悟。
「ま、待て。話せばわか―――ギャーッ!」
「じゃあ、次は硝子さんのですね。」
あんな巫山戯たものを選んできた悟は私の権限で失格にしておいた。誰があんなもの着るかってんだ。後でバツとして持ってきたスクール水着を着て写真を取られることになっている。ちょっと可哀想だけど自業自得ってことで。
「私が選んだのはこれ。」
そう言って差し出してきたのはオフショルダーの水着。ちょっと暗めの青色で、これも落ち着いたイメージのものだ。
「あと、このラッシュガードを羽織ってもいいんじゃない? ついでにこの帽子も。」
なるほど。水着単体だけではなくこういった組み合わせなども考慮にいれるのか。セットアイテムってことかな?
「その手があったか。」
「まあ、とりあえず着てきますね。」
「どうですか? 私的にはすごくいいと思うんですけど。」
で、着てみたのだけど予想以上にいい感じな気がする。さて、反応は?
「優っ勝っ!」
「……眼福。」
「可愛いー!」
「きれー!」
「これは勝ち。」
あ、やっぱり反応もかなりいい。じゃあ、これで決まりかな。
「ということは硝子の勝ちか。」
「当たり前でしょ。」
「じゃあ、皆さん着替えましょうか。あ、悟はそれを着るのを忘れずに。」
「……まじで?」
当たり前じゃないか。
その後本当にスクール水着を着て出てきた悟に全員が爆笑することになっていたのは言うまでもないだろう。
この後地獄だから今のうちに青春を楽しまないとね。