転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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 この主人公生まれた環境とその後の環境がめちゃくちゃ悪い


恐怖心と楽しさと

 体力作りを始めてはや半年。なんかよく分からないけど修行が全部楽しくて仕方がなくなってきた。

 反転術式の習得のために少しでもミスったら死ぬような修行をし始めた頃からだろうか。命の危険に常にさらされるような修行を繰り返し始めた結果、恐怖が完全に吹っ切れて楽しくなってきてしまった。もともと一度死んだ身であるし、死への恐怖は人一倍強いと思っていたのだけど、ほぼ克服してしまった。

 

 

 

 

 

 

 いつ殺されるか分からない、いつ殺されてもおかしくない、そんな環境に身を置き、常に緊張状態にあった。緊張の糸を緩めることは許されず、眠っているときでさえ無意識下で警戒をしていた。この世に生まれ落ちた頃より命の危機にさらされ生き残るためだけに生きてきた。

 

 絳禰は休息の時間である睡眠の時も、日中もずっと死の恐怖と戦ってきた。生まれ落ちた時、何も見えない真っ暗闇の中で過ごしていた。感じられるのは何かの音のみだった。暗い暗い闇の中、願ったことはただ一つ。“生きたい”だった。

 それからあてもなく闇の中をさまよい続けた。光を求めて。

 

 光は得られなかったが、ぼんやりと外を認識することができた。未だに闇の中にいたけれど、確かに外の景色がその目に写っていた。

 それは確かに救いとなっただろう。

 

 しかし、絳禰はまた一つ辛い事実を知ることになる。

 

 何を食べても味がしなかった。前世で美味しいものを食べることが好きだった絳禰は深く悲しんだ。前世などなく、一度もおいしいというものを感じたことがなかったなら何も問題なかったのかもしれない。しかし絳禰は食の楽しさを知っていた。喜びを知っていた。食べることが好きなことの一つだった。

 絳禰は生まれながらにして人生の楽しみを一つ永遠に奪われたのだ。

 

 絳禰は色鮮やかな世界を見ることができない。食という芸術を楽しむことができない。

 そしてなにより、いつも命を失うかもしれないという恐怖がつき纏っていた。

 

 そんな状況で四年も過ごしてきたのだ。いつ心が壊れてもおかしくなかった。そしてついに壊れてしまった。

 

 体術と剣術のために体を鍛えてきた。それはまだ幼い絳禰には過酷すぎるものであり、いつ死んでもおかしくなかった。少しでも恐怖を感じて動きが鈍ろうものなら間違いなく死ぬものだった。

 

 このままでは死ぬ。そう判断した絳禰の体は恐怖心を捨てた。そうして恐怖を感じなくなった絳禰は修行をただ楽しむようになった。当然、死なないために、生きるためにという目的は忘れていないが、新しく“強くなる”という目標ができた。

 

 恐怖心の代わりに楽しいという感情が大きくなり、修行が加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近の修行の中で一番好きなのは走ることだ。ここの山を頂上まで全力で道なき道を駆け上がり、その後駆け下りるというものだ。これは体力もつくし、障害物の把握、荒れた場所での足運び、呪力による身体強化の修行など他にも多くのことを同時に修行することができる。

 この修行で一番伸ばせるのは空間把握能力だろう。耳で反響する音を聞き、肌で空気の流れを感じる。そうすることで周囲の状況を把握することが可能になる。そこに合わせて呪力により更に詳しく周囲の環境を把握する。たとえ把握できたとしても頭の中で周りの様子を描き切らなければいけないので、脳の訓練にもなる。呪力が使えない、あるいは聴覚が機能しない、触覚が機能しないといった事態が起こる可能性もあるため、日によって空間把握に使うものを変えている。私は目が見えないのだからその3つは何よりも優先して鍛えなくてはいけない。

 

 

 早く体術と剣術の修行に入るためにも頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 本格的に体術と剣術を修行をするなら早くても五歳を過ぎてからかな。

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