転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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青春の1ページ③

「じゃあ、次は何処行く?」

 

 かき氷を食べて、もう後は帰るだけだろうなと思っていたところに硝子さんがそう言った。

 

 私は時間に余裕があるからいいけど三人は良いのだろうか。

 

「もう三時だしあんま時間かかるところには行けないね。」

 

 この後どこかに行くのだとすれば、多分帰る頃にはもう夜だろう。私は甚爾さんの所に泊まらせてもらう予定だけど、あまり遅くなると心配されるだろうから連絡を入れるか早めに帰るかのどちらかなんだけど。

 

「服でも買いに行けば良いんじゃね? コイツ殆ど服持ってないはずだし。」

 

「へえ、そうなの?」

 

「まあ、そうですね。」

 

 だって正直オシャレとかどうでもいいし。見ることができるわけでもないのにわざわざそんなことを気にしてどうするというのか。私は最低限動きに支障がでないのであれば何でもいい。

 

「それはダメでしょ私が言うのもなんだけど、もう少しオシャレには気を遣った方がいいんじゃない?」

 

「そうするだけの理由がないんですよ。服なんて数着あれば事足りますし。」

 

「それは服を買いに行くべきだね。もう少しそういうことを気にした方がいいと思うよ。」

 

「えぇー、正直面倒くさいのですが。」

 

 嫌じゃ嫌じゃ。別に困ってないのに服を買いに行くなんて面倒なことやりとうない。そういうのは若いピチピチのJKがやるものでしょ。私は前世と合わせて精神年齢推定アラサーだぞ。若い子には付いて行けません。

 

 見た目と体は若い子だということからは目を逸らすが。

 

「んじゃ決まりだな。どうせならクッソ高い店に行こうぜ。」

 

「最初はあまりしないものからの方がいいんじゃない? 多分そっちの方が合わせやすいと思うよ。私たちもアドバイスとかしやすいだろうしね。」

 

 ユニ○ロかG○で良くない? どこにでもあるんだしそれが最善でしょ。

 

「まあ、私はそういうの分からないので皆さんにお任せしますけど、変なのはやめて下さいね。」

 

「それは私に任しときな。この馬鹿二人がふざけ始めたら止めてあげるから。」

 

 うん、硝子さんに任せておけば安心かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

「あ、次はこれとかどう? いや、こっちも良い。どうせならどっちも着ちゃおうか。」

 

 ……舐めていた。今時の女子高生はここまで服選びに時間をかけるとは。硝子さんはそういうタイプの人ではないと思っていたのだけど、そうでもなかったらしい。もしくは人の服を選ぶことには強い関心があるか。

 

 悟も水着の時の反省を活かしているのかは分からないが、そこまで奇抜な服は選んでいない。傑さんも無難なものではあるだろう。なんにせよ、私はただなされるがままに着せ替え人形になるしかなさそうだ。

 

 

 

 

 

 そして服を選ぶこと約2時間。最初の方は楽しそうにしていた悟と傑さんも途中から疲れたようにベンチに座っていた。もちろん私はその間ずっと着せ替え人形だ。

 

 何着買うかは決まっていないけど、お金ならあるし、何着でも買える。普通であれば、沢山買ったら邪魔になるけど私なら術式で体に収納できるからその点も問題ない。

 

「それで、気に入ったのはあった?」

 

「そうですね……この辺りが良かったですかね。」

 

 私はそう言って何着か選んでみた。正直見た目はどうでも良かったから動きやすいと感じたものを選んだのだけど、それはバレバレだったらしい。

 

「動きやすさで選んでんでしょ。そういうのしかないじゃん。」

 

「そうは言われましても、動きやすいのが一番じゃないですか。特にあれとか無駄な装飾でゴテゴテしてますし着るのも大変だったんですよ?」

 

 硝子さんは数着ふりふりのフリルとか付いたワンピースやら何やらを選んでいたけど、そんなの邪魔でしかない。戦闘中にどこかの突起に引っ掛かりでもしたらどうするんだ。世間の若い女の子たちはそういうのが好みかもしれないけど私は遠慮願いたい。

 

「まあ、本人の好みが大事だし仕方ないか。それで、どれを買う?」

 

 そう言われて少し考える。着てみて一番動きやすかった服にしようかと思ったのだけど、折角ならと一番三人の反応が良かった服にしよう。どうせならその方が良いよね。

 

「じゃあ、これとこれとこれを。」

 

「いや、一つジャージじゃん。」

 

 いいじゃないかジャージ。動きやすいし、普段着ても違和感はない。毎朝のランニングとかにピッタリだ。まあ、基本的には和服の方が落ち着くからそっちを着るだろうけど。

 

「でもこれは皆さんが一番反応良かった服ですよ。」

 

「……なら良いか。」

 

 落ち着いた色合いのワンピース。私にはそういう服は似合わないと思っていたのだけど、そうでもなかったらしい。私には派手目な明るい色よりも落ち着いた色の方が似合うだろうとのことで、そういったものを中心に着てみたのだけど、割とどれも好評だった。

 

 その中でも反応が良かったのがこの服だ。あの悟が素直に褒めてきたと言えばそれが分かるだろう。ちょっと嬉しかった。人間誰しも褒められると嬉しくなるものだ。それは私も変わらない。いや、人一倍そういう欲求は強いのかも。

 

「じゃあ、買ってきます。」

 

「アンタまさか自分で買う気?」

 

「え、ええ。そのつもりですが。」

 

 まさか買ってくれるとでもいうのだろうか。流石にそれは申し訳ない。服一式を三セットも買えば値段はそれなりだ。お金なら任務でそれなりにもらっているかもしれないが、それでも高校生には手痛い出費なはずだ。

 

「これは今日の思い出とか記念とかそういう物なんだからさ、私らに贈らせてよ。」

 

 ここまで言われたら断るのは逆に失礼になるな。

 

「……分かりました。」

 

「じゃあ外の馬鹿二人呼んでくるからちょっと待ってて。」

 

 ということで選んだ服以外を綺麗にたたみ、元あった場所に戻して待っていた。悟と傑さんはすぐ近くのベンチで話をしていたから呼ぶのに大して時間はかからなかったらしく、やっと終わったかみたいな雰囲気でこちらに歩いてきた。きっと今頃女性の買い物は長いって本当だったんだなと痛感していることだろう。もちろん私もだけど。

 

「ようやく終わったか。長えんだよ。」

 

「女性の買い物は長いと聞いていたが、ここまでとは思ってなかったよ。」

 

「こんな素材が良い子見て時間かけないとか失礼でしょ。」

 

 それはない。絶対にそんなことはない。

 

「で、いくら? 面倒だし俺が全部払ってやるよ。」

 

「「は?」」

 

 あ、またこのパターン? かき氷の時みたいに誰がお金を払うか争いになるの? 普通こういう場合って払いたくなくて争いになると思うんだけど。

 

「途中でギブアップしたくせに何カッコつけようとしてんの? ここは三人で割り勘じゃない?」

 

「まあ、それが妥当だろうね。」

 

「じゃあ、お願いします。」

 

 三人仲良くレジの方に行き、ゴタゴタとしながらもお会計を済ませていた。そして傑さんが紙袋を持ってこちらにやってきた。

 

「はい、どうぞ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「じゃあ帰るか。」

 

 三人が楽しそうに前を歩いていく。今日は楽しかったね、なんて話をしているらしい。

 

 私は前を行く三人に声をかけた。

 

「皆さん。」

 

「あん?」

 

「何だい?」

 

「どったの?」

 

「今日はありがとうございました。お陰で一日楽しかったです。」

 

 お礼とともに精一杯の笑みを浮かべる。はたして上手く笑えているのだろうか。

 

「……楽しかったなら良かったよ。」

 

「ま、来たくなったらいつでも来なよ。」

 

「今度は完膚なきまでにボコしてやるよ。」

 

 少しの空白の後、私は言葉を返した。

 

「ええ! また会いましょう!」

 

 そう言った私の顔には自分でも気付かぬうちに満面の笑みが浮かんでいた。こんな日がまた来れば良いなと思いながら。




最後の笑顔は今世で一度も浮かべたことがないぐらい満面の笑み。喰らえば普段とのギャップで相手は死ぬ。
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