転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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面倒な相手

 今回のターゲットは何人も殺しをしている凶悪な呪詛師だ。まあ、調べたところ金持ちたちに依頼されて殺しをやってたみたいだし、私への依頼は証人を消すという意図もあるのだろう。ほんと、人間って醜いよね。

 

 とはいえ、相手は呪詛師には変わりないし、今まで大勢殺してきた人にかける慈悲なんて持ち合わせてないけど。それにそもそもこれは依頼だし大して気にすることでもないんだけどね。私はただ依頼を遂行するだけだ。

 

 今回の依頼について再度確認する。

 

 標的は計34人を殺害した呪詛師兵藤一斗、現在36歳。愛知県名古屋市で生まれ、それなりに裕福な家庭で生まれ育った。が、ある時両親が離婚し、母親に引き取られた。

 

 そこから生活は一変。浪費の激しい母が離婚時に得たお金を早々に使い果たし、生活は父より月に一度送られてくる養育費で賄っていた。母はそれから殴る、蹴るなどの暴行を加えるなど虐待を行っていた。教育委員会などにその事実を知られることもなくある時家を出た。

 

 それから各地を転々と移動し暮らす日々。そんな折、幼い頃より見えていた呪霊に初めて襲われた。当然戦闘になり、その戦闘中に自身の術式を自覚した。

 

 そうして術師となった後は裏の社会で仕事を請け負う何でも屋として生活していた。最初は軽い犯罪ばかりだったが、徐々に殺害依頼などもこなすようになる。

 

 当初は人を殺すことに忌避感を抱いていたが、人を殺すことの喜びに目覚めた後は積極的に殺しの依頼を受けるようになった。生来の性格か、あるいは環境がそうさせたのかは定かではないが、今は立派な快楽殺人者だ。

 

 それでも無差別に人を殺さないのは警察などに見つかるリスクを減らすため。依頼であれば依頼者が隠蔽などを行ってくれるため気兼ねなくできる。そういう理由から兵藤一斗は殺人を生業とする呪詛師となった。

 

 まあ、家庭環境などを見れば世間からは同情されるかもしれないが、ただの快楽殺人者である。私よりも環境は良かったとはいえ、堕ちるだけの理由は十分。そして自身の快楽のために殺人を犯している時点で同情は得られないだろう。

 

 それにしても、毎度のことながらよくここまで情報を集められるものだと感心せざるを得ない。行きつけの店とか女性関係とかいらない情報だろうになんでそこまでするかな。私としてはいらない情報を渡されたところで扱いに困るんだけど。

 

 現在10時37分。私がいる場所は八王子の山中。兵藤はここの小屋で寝泊まりしているらしい。人払いの結界も張られていないし不用心だ。人払いの結界を張っておけば近隣住民からの目撃情報は減るだろうし、基本的に良いことしかない。術師が見ればバレるかもしれないが、ピンポイントでここに来ることなんてそうそうないから大した問題じゃない。

 

 今は街中で買い物をしているらしい。街中でことを起こすわけにもいかないし、ここで待つしかないのだ。といっても、普段通りであればあと10分もすれば帰ってくるだろう。

 

 ベストな殺害方法は初手で気づかせることなく仕留めること。欲を言うならばそれで終わらせたいところだが、兵藤が所持している術式のせいでそうもいかない。

 

 兵藤の術式の内容は反射だ。自身に向かってきたあらゆる攻撃を反射することができる。流石に上限はあるだろうが、少なくともある一定の威力まで全て反射する。そして恐らく反射できない分は普通に喰らうだろう。

 

 じゃあ最初から最大火力で攻撃すればいいかもしれないが、兵藤には反転術式がある。野良の術師のくせに高度な技術である反転術式を使用可能なのである。つまりは致命傷を与えたとしても即座に再生される。

 

 反射とかいう怪我をする機会が少ない術式を持っているくせになぜ反転術式を覚えることができたのかという疑問はあるが、中々に倒すのがめんどくさい相手だ。

 

 

 と、そうこうしているうちに兵藤が帰ってきたようだ。呪力の様子から考えるに術式は既に発動しているらしい。いつ襲われるか分からないからだろうが、随分と臆病なことだ。

 

 だが、今回ばかりはそれが正しい。術式を使っていなければ今すぐにでも仕留められたのだが、そうはいかなくなった。

 

 まあ、初撃で決めるのは無理だろうが、やるだけやってみよう。

 

 勝手な推測にはなるが攻撃を認識しているかしていないかで反射の上限が変わると思われる。常時最大出力で術式を張ることなんて誰であっても不可能だ。だから普段は反射できるのは減っているはずだ。

 

 ならば呪力を込めただけの刀でも首を刎ねられることができるはずだ。術式を使えば流石に察知される可能性が高いから使えない。なのでわざわざ呪力のみで攻撃する。ただ、攻撃の威力が反射されることを考えて、自分の守りも万全にしておこう。自分の攻撃が反射されてなんの対策もしてなかったので死にましたなんて笑い話にもならない。

 

 

 刀を構え、呪力を込める。脚、腕、指と全身に余すことなく呪力を行き渡らせ、準備を整える。

 

 目標を捕捉、狙いは首。

 

 空気を吐き出すと同時に、襲いかかる。一呼吸の間に間合いを潰し、背後からの強襲。対象が反応する様子はない。

 

 そのまま首へと一直線に刀を振るった。

 

 直後、私の腕と刀を凄まじい衝撃が襲う。

 

 

 なるほど、これが反射の術式か。厄介極まりないな。この様子だと攻撃の殆どが反射されてしまったらしい。何気に全力の攻撃だったのだけど、それでも通ったのは僅かで、薄皮一枚程度しか切れていない。認識外から攻撃したというのにこれだと一体どれぐらいの威力が必要なのだろうか。

 

「……っつ! なんだテメェ!?」

 

「これは少し時間がかかりそうですね。」

 

 簡易領域で徐々に解析するしかないかな。

 

 まあ、頑張るか。




この呪詛師の術式シンプルに強い。

あと、この場面だけ見ると完全に主人公が悪役。
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