転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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徐々に再開していきます。


危ない集い

 鬼ごっこと太極拳を2人にやらせた後、疲労困憊な2人を抱っことおんぶで家まで運んだ。恵君は恥ずかしそうだったけど津美紀ちゃんの方は楽しそうだった。対照的な反応をするものだなあとつくづく思う。性格が反対の方が片方に何かあった時に良いらしいから丁度良いのかな。

 

 例で挙げるなら性格が同じような恋人は普段は心強いけど弱点も2人とも同じだから何かあった時にはどちらもボロボロになるけど、性格が反対な2人だったら一方が打ちのめされていても一方が原因をぶっ飛ばしに行ってくれるから結婚生活は性格が反対の人の方がうまくいく。みたいな話があった気がする。

 

 いや、この例はよそう。義理とはいえ姉弟関係の仲でそんな背徳的な関係になるなんて極一部を除いて存在しない。義姉弟カップルなんてフィクションの中だけに決まってる。法律的に問題ないとはいえ実際にそんな人たちがいたらマジか、みたいな反応をせざるを得ない。大丈夫大丈夫。2人なら距離感を間違えることはないはずだ。

 

「おう、帰ったか。」

 

「2人のことちゃんと見ておいてくださいね。」

 

「は?」

 

 おっと、そんなどうでも良いことを考えていたせいで甚爾さんの言葉に適当なことを返してしまった。

 

「いえ、十種影法術なんてものを持ってるんですからハニトラとかありそうですし、非術師の津美紀ちゃんが人質にされるなんてこともあるかもしれないので。」

 

 ハニトラ、ホテル、一夜の過ち、そこからなし崩し的にズルズルと、なんてことが起きたら洒落にならない。2人にはしっかり情操教育をしておいてもらわないと。

 

「はっ、お前が心配する必要はねえよ。」

 

「そうですか。」

 

 まあそこら辺は甚爾さんならちゃんとしてるか。私が心配するまでもなかったかな。

 

「で、今日も行くか?」

 

「当たり前じゃないですか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4人用の卓に私と甚爾さんが座り、最近ともに打っている賭博仲間のおじいちゃん2人も待ってたぜという言葉とともに椅子に腰掛けた。今日の予算は四十万円。呪具と一緒に払ってもらった報酬の極一部だ。かなりの額を持ってきているように感じられるかもしれないがここではこの程度が最低額だ。

 

 違法賭博。一回の賭け金が馬鹿みたいに高い金持ちだけができる道楽みたいなものだ。金を持った人間はこんなことにも本気を出す。警察など各所に根回しを済ませ、堂々とやっている。誰かからの紹介を得た者でなければ信頼がなく入ることすらできない。金だけ持ってる隠居した老人が主な参加者だが何人か若い人間もいる。私と甚爾さんは依頼主に連れられてここに来たことがあるので忍び込んだわけではない。

 

 ちなみにここではイカサマはなんでもありだ。バレなきゃイカサマじゃない理論を採用しているわけだ。でなければ私や甚爾さんが勝つことなんて不可能に近い。イカサマをしてもいいがそれがバレた場合は持ち点の半分を他の全員に分配することになっている。その制度を利用して私と甚爾さんは最初の方は勝っていたのだ。

 

 が、相手も学習するわけで。イカサマなんてするよりも普通に打った方が勝てると気付いてからはこの卓は一周回って健全になった。なお、たまに私や甚爾さんがイカサマを仕掛けては爺さんたちに見抜かれて巻き上げられている。

 

 今度こそバレないイカサマをしてやるからな。

 

 とまあ、違法賭博で一周回って健全なヨットをしているわけだが、当然ただ遊びに来ているわけではない。最近賭け事の楽しさに目覚めたことは否定しないがそこまでして来るほどではない。では何が目的かというと、この爺さんたちが雑談感覚で垂れ流して来る情報だ。割と重要な情報を会話の流れでボロっと溢す。酒が入っているからというのと私たちにしれっと流しておけば何かいいことがあるかもしれないからという理由だろう。

 

「最近じゃ呪霊の被害が増えてきて、落ち落ち夜も眠れんよ。ついこの間まではもっと少なかったんだがなあ。2で。」

 

「ここ十年そこらだったかね、呪術師の死亡率も高くなっていると聞く。ほんと、何があったんだか。5と3のフルハウス。」

 

「ああそれか。五条家の六眼のガキのせいで呪霊と術師のバランスが崩れたせいだって話だ。まあ、あのガキの影響ならおかしくはねえ。チッ、1だ。」

 

 なんて迷惑なやつなんだ五条悟。おのれ貴様のせいで呪霊が強くなってしまったではないか。責任とって鏖殺してきてください。あ、ショートストレート。

 

「ああそういえば五条悟と言えば六眼が有名だが、星漿体周りの因果と絡んでるって話だが、そろそろ天元様の同化が行われるってんで盤星教の奴らがここのところ騒がしくて叶わんよ。5が4個と6のフォーダイス。」

 

「宗教とか碌なものじゃないですからね。天元様に不純物が混じるのが嫌とか、星漿体のことを何も考えてないですよね。んー、3で。」

 

「一人の小娘のことなんて気にするような奴はおらんよ。」

 

「嫌な話ですね。」

 

 天元、六眼、星漿体。確か甚爾さんがその因果を壊したんだったか。頭を撃ち抜かれて倒れる映像を覚えている。それまで感動的なシーンだったというのにあれだからまあ印象に残っている。どうせ記憶が薄れていくならと一部の重要そうな記憶を残して封印した。その代わりに残りの記憶は強固に固定されている。これもまた縛りだし忘却することはない。

 

 額に縫い目のある男、両面宿儺、閉じない領域、◾️開、領域展延、ハロウィンの渋谷、死滅回遊、人外魔境新宿、などなど。私が重要だと感じたものを除いて殆どの記憶を封印した。例外は日常の光景など、私が忘れたくないと思ったものだけ。そうでもしないと本当に全てを忘れてしまう。

 

 まあ、つまりその中に星漿体天内理子が銃殺された映像もあったわけだ。どうにかできればそれが一番いいのだろうけど、下手に関わって大まかにしか覚えていないとはいえ原作を壊すのはまずいんではなかろうか。いやまあ私がいる時点でボロボロと言われたらそうなんだけど。

 

 んー、まあ深く考えても仕方ないか。まだ少し先の話だしその時の私に委ねるしかないかな。あ、一回でフォーダイス。

 

「いくしかないですね!」

 

「はっ! そう簡単にヨットなんて出せるかよ!」

 

「儂らも数える程度しか出したことないし、まあ出るわけないわなあ。」

 

「ミスれ、ミスれ、ミスれ。」

 

 やだなこの大人たち。十代の女の子に大人気ない。まあ出なかったとしても6のフォーダイスだし美味しいからそこまで痛くないけど。それでも出たら私の勝ちがグッと近づくから天にでも祈っておこう。ダイスを掲げて腕をぐるぐると回して真円を描く。そして放つ!

 

 ダイスは踊るように台の中を跳ね回る。全員がダイスの行く末を見守っている。そしてダイスが止まる。出た目は———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「6です! 勝った! 第三部完!」

 

「んなっ! イカサマだろテメェ!」

 

「そうだ何をした吐け。」

 

「見損なったぞ。」

 

 これが負け犬の遠吠えというやつか。ふふ、聞く方は案外心地いいものなのだな。水の味も案外化けるものだ。まあ、味わかんないけど。

 

「私に毟られる覚悟はできていますか?」

 

「絳禰、お前は運を今ので使い切った。これからお前は落ちぶれていくだけだ。」

 

「そうして愉悦に浸っていられるのも今のうちだあ。老いぼれの経験値を見せてやるわ。」

 

「ま、このあと儂がヨットを出すから見ておれよ。」

 

 かかって来い! 私は運がいい日はとことん良い人間だ。つまりこの後は上り調子に勝っていくだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボロ勝ちした。

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