転生したら禪院家の女でした   作:苦鳴

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 転生特典でチートを貰えなくても転生自体がチートだと思う今日この頃。


修行と才能

 そして私はついに五歳になった

 

 しかし、未だに術式は発現していない。なのでもはや術式はないものとして修行している。フッ。別にいいさ。私は術式なんてなくても強くなって生き残ってみせる。術式など所詮はおもちゃだと思い知らせてみせるさ。

 

 

 

 

 

 

 ……嘘です。調子乗りました。もはやなんでもいいから術式欲しいです。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 本格的な体術及び剣術の修行に入ると決めていた五歳になったので、早速修行を始めて行きたいと思うけど、まずはいつもどおりの修行をこなしてからにしよう。

 

 

 

 

 

 

 フウー、フウー。

 

 絳禰は庭に座り、瞑想をしていた。呼吸を整え、呪力を知覚し、自分の体の中で循環させる。血管の一本一本に流れる血液と同じように呪力を効率よく循環させていく。その後呪力を周囲に放出し、自身を中心とした球の半径約三十メートルの中にあるものを全て捉えた。

 最初は半径約四メートルほどしか不可能だった。それを五年という僅かな期間で三十メートルまで広げてみせたのだ。距離が伸びれば伸びるほど難易度は跳ね上がっていく。三十メートルともなれば想像を絶するような難易度だ。それを今や涼しい顔で呼吸をするかのように行っている。

 

 この絳禰の驚異的な成長はある二つのことが大きく関係している。

 

 絳禰は生まれ落ちたときから目が見えず、周囲の様子を知ることなどは困難であった。しかし絳禰はそれを解決するために無意識下で呪力による知覚を行っていた。寝るときも絶やさず行ってきたそれは絳禰にとっては呼吸をすることと何ら変わりがなかった。そのことを認識した絳禰は、無意識下で行ってきたことを意識して行い、段々とその範囲を広げていったのだ。

 

 そして最も大きく関係していることは絳禰が一度死を経験していることだろう。死の間際に立った術師が覚醒をするように、死というのは呪術師の能力向上と密接に関わっている。一度死を経験し、生まれ変わった絳禰はそこで重大な問題に直面した。視覚がないという問題である。そしてその問題を解決するために死を経験した絳禰は呪力による知覚という特異な能力を手にすることになったのである。

 

 「んーっ!」

 

 次に絳禰は柔軟を始めた。運動をする前に体をほぐすという目的もあるが、主な目的は女性特有の体の柔らかさを活かすことである。柔軟性があれば、体の可動域が広がり、それだけ攻撃の幅が増えることになるのである。また、拘束をされた際にも柔軟性があれば抜け出すことが可能になるのではないかという考えもあったりする。

 

「フッ、フッ!」

 

 絳禰は柔軟を終え、次の内容に入っていく。自分にできうる限界まで筋トレをするのである。子どもの頃からそんなことをすると成長に悪影響を及ぼすという話があるが、絳禰にとってはそんなことはどうでもいいことだった。

 生身でできる思いつく限りの筋トレを全て行った。しかしここで勘違いしてはいけないことがある。筋トレによってついた筋肉と戦闘に使う筋肉は違うということだ。あくまでこれは体づくりの一環であるので、筋肉をつけすぎて重くなってはいけない。これはあくまで激しい修行に耐えられるだけの肉体を作るという修行前の下地作りである。

 

 その他にも様々な内容を経て、ようやくお楽しみの山岳走破に入る。この修行が一番過酷であると言えるだろう。

 不安定な道、落石、野生動物、その他多くの障害を乗り越えてノンストップで山頂まで全力で走るのだ。同じ道を通ることは禁止しているので走り方を覚えるなどという方法もとれない。

 そして忘れてはいけないのが絳禰は目が見えないということである。そのため木などの障害物を速度を落とさずに避けることは非常に困難である。周囲の知覚をできるとはいえ、他のことに意識を割きながらだと難易度は跳ね上がる。そして帰りは呪力の使用を一切禁止した上で行う。山頂に着いたら即座に呪力の使用をやめ、全速力で離れまで戻るのである。帰りは行きとは難易度が段違いになる。なにせ呪力による知覚が封じられた絳禰は完全な暗闇の中戻らなくてはいけないのだ。

 呪力の使用をやめた後、五感のうち機能する三つを研ぎ澄ます。聴覚によって風の音や反響する音を捉え、触覚により空気の流れを捉え、嗅覚により植物、動物のにおいを捉える。これら全てを駆使し、離れまで戻るのである。

 

 

 ◇

 

 

「はあーっ、はあーっ、はあーっ。」

 

 ……つ、疲れた。めっっっちゃきつかったぁ。何回も木にぶつかりそうになったし、ものすごい急な斜面を駆け下りたしこれは精神力がとんでもないぐらい削られたぁ。

 住まいに着いたところで、これから一旦休憩に入る。

 

 み、水を飲まなくては。死ぬぅ。

 

 

「ぷはぁー。」

 

 水が美味い。前世ではお茶が好きだったけど今世では味覚がないからどんな飲み物だろうが関係ないからねー。疲れていて喉の渇いているときに飲む水のなんと美味いことか。味覚がなくともこれだけは変わらない。

 

 水を飲みながらこの後から始める体術と剣術の修行に思いを馳せていると少し強い風が吹いた。心地いい風だった。暑くて汗を掻いていたから、涼しくて気持ちが良かった。

 

 そして、ようやく楽しみにしていた体術と剣術の修行に入る。

 

「ふん、ふん♪」

 

 ふふふ。結構前から木刀を何本も作ってあるし、準備は完璧だ。さあ、やろう。

 

「あ、でも最初は素振りから行うほうがいいんでしたっけ。とりあえず今日は素振りと蹴り、殴りの修行だけにしておきましょうか。最低でも二、いや三週間ぐらいはそうしましょう。」

 

 

 さあ、修行開始だ!




呪力による知覚は本人が勘違いしているけど自分の呪力は一切関係ない。
なんか勝手に生えた第六感。
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