シャドウガーデン第1のモブ   作:ことのはだいり

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現実主義者のゼータは自分の中にリリの魂が入り込んでいるとは思っていません。
リリと名乗る声は自分の罪悪感が生み出したもうひとりの自分だと思っています。
ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから、そう考えた方が現実的ですよね。
なお実際は「私の身体をみんなに貸すよ!」しちゃったのでしっかり入ってます。


第59話 ガーデンマスターシャドウ

 シャドウガーデンの目的は魔人ディアボロスの復活を目論むディアボロス教団を叩き潰すこと。

 つまり魔人の復活を止めることもガーデンの使命と言えるわけなのだが……私の失敗のせいでまた一歩魔人が復活に近付いてしまったらしい。

 私はゼータ様に土下座して、かくなる上はシグマ様に教わった『セプク』をいたしますと申し出た。

 セプクとはワコクにおける最上の責任の取り方であり、具体的には自分で自分の腹を切るのだ。

 ちなみに類似の行為で『ハラキリ』というものがあり、そちらはセプクとは似て非なるものだから注意しろと言われた。なんでも魂に干渉する儀式らしい。ワコクは外国との交流が少ないせいか独特な文化があって興味深い。

 

「よしなって。シータにそんなことされても誰も喜ばないよ」

 

 私がシグマ様の受け売りでセプクの説明をすると、ゼータ様はどことなく申し訳無さそうに止めてくださった。

 ……確かに普通の人ならともかく私は腹が裂けても治せるから責任の取り方としては不十分か。

 

「ですがこのままではアルファ様に合わせる顔がありません。どうか愚かな私に厳罰を与えてください」

 

「罰なんていらないよ。シータは悪くないから……本当に。それにこの状況は主のご意思なのかもしれない」

 

「シャドウ様の?」

 

「主はあの時も近くにいた。でも止めなかった」

 

 あの首輪事件の時、シャドウ様はスズーキ・ホープに変装することで教団の警戒を掻い潜り暗躍していたらしい。

 このことを私はウィクトーリアから教えられた。

 そして「嘆かわしい。たとえ変装していたとしてもあの御方から溢れ出る神聖な気配に気付けない奴がガーデン最古参とは。お前の目は節穴だ。両眼とも腐り果てている。そのまま全身腐って死ね」と煽られて殴り合って負けた。くそぉ……。

 それはともかく、全知全能のシャドウ様が近くにいたのに魔人の封印が解かれつつあったことを察知できないないはずもない。

 介入せず静観したのであれば、それもまたシャドウ様のご意思ということでは?

 

「リンドブルムでもそうだった。主は聖域を蒸発させたのに、魔人の左腕を消滅させなかった。左腕が宿ったクレア様に対しても何も行動を起こさなかった。つまり……」

 

「シャドウ様は魔人の復活を……いえ、永遠の命を望んでいる……ってコト!?」

 

 思い当たる節はあった。

 夏頃に私はシャドウ様からディアボロスの雫を奪ってこいと命じられた。

 それは人間の数倍の寿命をもつエルフ……アルファ様をひとり置き去りにして先に逝かないため、永遠に添い遂げるためだった。

 あの時は結局私が標的として指定されたラウンズのエーギルを発見できなかったせいで話が流れてしまったが……そうか、シャドウ様は恒久的に雫を確保する目的でずっと前から魔人の復活を画策していたのか。

 そうだよね、ラウンズから毎年奪うの面倒だもんね。自家生産できるならその方がいいよね。

 

「ん。私は確かに主から聞いた。主は永遠の命を求めている」

 

「そのことをアルファ様は御存知なのですか?」

 

 ゼータ様はゆっくりと首を横に振った。

 やはりな……アルファ様には雫の確保に成功してから伝えるつもりなのだろう。前回も伝えていたら確保失敗でがっかりさせてしまうところだったし。

 あるいはサプライズで伝えたいのかもしれない。

 シャドウ様から指輪の代わりに雫を差し出されて、「これからは同じ時間を生きよう」という言葉とともに結婚を申し込まれるアルファ様。

 魔人の復活なんて重要な話をずっと秘密にされていたことにぷんぷんして、ぷっくら頬を膨らませてシャドウ様をぽこぽこ叩くアルファ様。

 それから満面の笑顔でシャドウ様と抱き合い愛を誓うアルファ様。

 悔しい……でも尊い!

 

「落ち着いてシータ」

 

 興奮し過ぎて過呼吸を起こしそうになる私の背中をゼータ様がさすってくださった。

 

「アルファ様は魔人の封印を守ろうとしているのに、主は復活させようとしてるなんて、どうしたらいいのか分からなくなるよね」

 

 私の過呼吸の理由は全然違ったが、それはそれで確かに問題なので息を整えてから肯定する。

 

「……はい」

 

「原則として主の命令はアルファ様の命令よりも優先される。でもシータは……アルファ様を優先したいよね」

 

「……」

 

 実際そうなんだけど口に出すと大問題になるので私は何も言えない。

 ゼータ様はそんな私を咎めずに話を進めてくれた。

 

「大丈夫。この件については私もアルファ様が正しいと思ってる。理由はどうあれ魔人ディアボロスを復活させようだなんて教団の奴らと変わらない悪魔の発想だよ。こんな畜生以下の汚れた思考の持ち主なんてもうさっさと死ぬべきなんじゃ『そんなことはありません! 自分を追い詰めないで!』ああもう! うるさい!」

 

 なんかゼータ様がすごいことになってる。

 シャドウ様のことが大好きなゼータ様がシャドウ様の計画に対して悪口を言うなんておかしいし、特に変な音なんて聞こえなかったのにいきなりうるさいって叫ぶし……まだ体調が回復してないのかな?

 聞いた話だとさっきまで熱が40度くらいあったらしい。私のリカバリーは外傷なら治せるけど病気は無理なんだよね。ここは素直にしっかり休んで治すのが最善だろう。

 

「ゼータ様……やはり体調不良を魔力で強引に抑え込むのは無理があったのではないでしょうか。急ぎのお仕事があるなら私が代わりにやりますので、もうしばらくお休みになられてください」

 

「いや私は……『そうです! 無理しちゃいけません! お仕事も大切ですけど、もっと自分の身体を大切にしないと駄目です!』……わかった! わかったよ! ごめん、お願いできる?」

 

「はい! 必ずや失態を取り戻すだけの働きをお見せします!」

 

「それと魔人の件についてはまだアルファ様に伝えない方がいい」

 

「……そう、でしょうか」

 

 私の中の天使のコスプレをした私は「アルファ様に隠し事しちゃ駄目だよ!」と叫んでいる。

 私の中の悪魔のコスプレをした私は「さっぷらいず! さっぷらいず!」と手拍子を鳴らしている。

 

「そうだよ。私たちが何を言おうと主の意志は変わらない。シータは主とアルファ様が揉める姿を見たい?」

 

 魔人の封印の扱いについてシャドウ様のご意向とアルファ様のご意向は相反している。

 わざわざアルファ様とシャドウ様との関係を壊すような報告をするのが私の正義か?

 否!

 消えろ私の中の天使!

 天使のコスプレをした私は「いわああああく!」と絶叫をあげて悪魔の炎に焼き尽くされた。

 

「そうですね! アルファ様のためにも、今は口を噤むべきですね! あ、これは決して私の保身というわけではなく……」

 

「大丈夫。そんなこと疑ってないよ。そう、違うんだシータ……私が悪いんだよ……『ゼータさんは悪くありません! この時代や環境を作ったリリが悪いんです!』違う!『違いません!』英雄は間違ってない!『英雄でも間違えます!』悪いのは『ゼータさんじゃない!』……うにゃああああああああああ!」

 

 悪いものにでも取り憑かれたかのように頭を抱えて悶え苦しむゼータ様。

 見るからにもう限界だったので私は強引に会話を終わらせてゼータ様をベッドに叩き込み、ふかふかあったかな布団をかけた。

 

「いらない……子守唄はいらないよ……お願い……静かに……」

 

「ゼータ様早く休んで! なんかもう見てて怖いです!」

 

          ◯

 

 そういうわけで封印されし魔人の右腕が解放されてしまった件は一時的に棚上げして、私はゼータ様が抱えていた仕事をこなすことにした。

 とはいえやることは主に2つだけ。

 フェンリル派残党の殲滅。

 そしてアルファ様への報告書の作成だ。

 残党は人数だけ見るとそれなりにいるが、去年地道に削ったおかげでフェンリル派の強力な戦力はほとんど残っていない。少しだけ残っていたネームドもゼータ様とシャドウ様が始末したので残りは雑兵だけだ。

 

「じゃあ、任せたよみんな」

 

「誰に言ってんのよ」

 

「大丈夫」

 

「任せて!」

 

「手早く終わらせてご飯にしましょう」

 

 私は5人に分裂して残党の拠点を同時襲撃した。

 魔力や筋力が五等分されても今となっては魔力無関係の強力な重力操作が使えるので雑兵程度なら問題なく蹂躙できる。

 さらにそれぞれに選りすぐりのバケモンも同行させているので負ける要素がない。

 数時間後、私たちは再び集まり、成果を報告し合った。

 

「イツ、オリヴィエ組。制圧完了です!」

 

「ヨツ、ズルムケ、トモダチ組。ばっちりだよ!」

 

「ミィ、ゼニゴルド組。任務完了」

 

「ニィ、プラチナ組。当然だけど一匹も逃がしてないわ。プラチナを出すまでもなかったわね」

 

 他の私たちは特にトラブルなく襲撃を終えたようだ。

 一方で私……イッチは、残党の殲滅自体はちゃんと成功したんだけどトラブルはあったというか……。

 

「イッチ、バブリアス組。私たちは……もしかしたら『暗黒微笑』と遭遇したかもしれない」

 

「『暗黒微笑』ですか? 私たちの知らないところでゼータ様に倒されたと聞きましたけど」

 

「奴がそう名乗ったわけじゃないんだ。ただ……あの表情は間違いなく『暗黒微笑』だった」

 

 私が遭遇した全裸の男は本当にやばい奴だった。

 敵拠点に侵入した時点で私が始末するはずだった教団の連中は既に奴の手で皆殺しにされていた。

 所詮は雑兵ばかり、単独で殲滅したこと自体は驚くようなことではないのだが……その手口があまりにも悪辣だった。

 死体は酷く損壊されていて、服を剥ぎ取られた男たちはことごとく性器を切り落とされていた。

 そして奴はたくさんの卑猥な棒を手の中で弄びながら、「あれー、まだ残ってたんだ。良かった。じゃあ、死のうか」と言って暗黒微笑した。

 私ですら背筋に冷たいものを感じてしまうようなその笑みはまごうことなき『暗黒微笑』だった。ずっと酷いネーミングセンスだと思っていたのに遭遇した今となってはあれほど的確な異名はないと思えるほどだ。

 

「ゼータ様が倒した『暗黒微笑』は偽物だったってこと?」

 

「同士討ち……他派閥に取り入るためにやった?」

 

「ナツメ先生の作品でありましたね。必要な肩書きを手に入れるために人の心臓をたくさん送りつけて脅したって話。今回は男の人のアレですけど」

 

「そいつ本気で頭どうかしてるじゃない! 大丈夫だったの!? 戦力的にあんたのとこが一番低かったのに!」

 

 実際かなり危ないところだった。

 五等分の前に二等分していたので実質十分の一の能力しかなかった私。

 陸上だと本領を発揮できないバブリアス。

 対して『暗黒微笑』はどうやら『接ぎ木の秘術』の使い手だったらしく、大量の男のアレを全身に接いで襲いかかってきた。

 接がれた男のアレは鞭のように振り回され、自由自在に伸び縮みし、私たちのスライム武装のように軟化も硬化も思うがままで、銃弾のように先端から白濁した液体を放った。

 撒き散らされた白濁液の塊は空中で爆散して、そこから大量の巨大なおたまじゃくしのようなものが勢い良く飛び散ってそこら中に突き刺ささったかと思うと、陸に打ち上げた魚のように激しく動いて穴を広げていったのだ。

 巨大で的にしかならないバブリアスを即座に撤退させて、臭いといい生態といいてめぇはイカかよと悪態をつきながら私は必死で回避した。

 殺傷力的にも心理的にも絶対に接触したくなかった。

 普段よりもいっぱい回避に意識を割いた私は攻めあぐねた。

 

「でも途中でシャドウ様が来てくださって、暗黒微笑はひと刺しであっさり死んだんだ」

 

「イカ串みたいですね」

 

「お、いいなイカ串。イツ、今から釣りに行かないか?」

 

「オリヴィエ……あんた今の話を良く食欲に転換できたわね」

 

「実物を見てないから想像になるけど、イカよりウニの方が似てそう。あ、海にいる方だよ」

 

「やめてよミィ! ウニ食べれなくなっちゃう!」

 

「はいはいみんなそこまで! 食事の前に報告書の作成が先ってこと忘れないでよね!」

 

          ◯

 

 アレクサンドリア城の執務室にて、アルファはシータから届けられた報告書を確認していた。

 報告書を読み始めた瞬間、アルファは頭に疑問符を浮かべた。

 ……どうしてこんなに絵が多いのかしら?

 もちろんシータがアルファに見せる報告書で悪ふざけをするはずもない。

 これには止むに止まれぬ事情があったのだ。

 今回求められていた報告内容はミドガル学園の生徒誘拐事件から始まってフェンリル討伐に至るまでなのだが、シータは全体的にそれほど関与していない。だからゼータに話を聞いて代筆だけすればよいものを、寝込むゼータに気を遣ったシータはいまいち状況を把握していないくせに自分で考えて報告書を書くことにした。

 優れた洞察力を持つアルファは僅かな手がかりからディアボロスの右腕が解放されたことを見抜いてしまうはずなので伝える情報は慎重に選び、少しでも不安があれば記載しなかった。

 その結果、完成した報告書は書いた本人が頭を抱えるほどの酷いものだった。

 

『教団が学園の生徒を誘拐しました』

 

『ゼータ様とシャドウ様がフェンリル派のネームドを消しました』

 

『最後にシャドウ様がフェンリルを倒しました』

 

『誘拐された学園の生徒は既に死んでいました』

 

 何度読み返してもたったの4行しかなかった。余白部分に炙り出しが仕込まれているということもなく、本当にこれだけしか書けなかったのだ。

 こんなメモ用紙と見紛うものをアルファに提出するわけにもいかず、どうにかしようとして迷走したシータは気付いたらこの4行をもとに漫画を描いていた。学術都市の教授が書くような真面目な論文でも図や表を使っているのだから報告書全体を漫画にするのもなしよりのありかなって思ったらしい。ダメに決まってるだろ!

 女体化ラウンズ凌辱本をいくつも世に送り出してきた人気同人作家シーモ・ネータ先生の最新作、その衝撃の内容がこちら。

 

          ◯

 

『もう大丈夫、我が来た! 奥義! アイ・アム・アトミックスキュアー!』

 

 突きを放つシャドウの絵。

 

『ヒャッハアアア! さあ来いシャドオオ! 俺は1回刺されただけで死ぬぞオオ!』

 

 アルファをびっくりさせないようにモザイクをかけられた暗黒微笑の絵。

 

『グアアアア! こ、この暗黒微笑と呼ばれるネームドの俺が……こんな小僧に……』

 

 シャドウの剣に貫かれるモザイクの塊の絵。

 

『バ……バカなアアアアアア』

 

 イカ串の絵。

 

『グアアアア』

 

『暗黒微笑がやられたようだな……』

 

『フフフ……奴は我々の中でも最強……』

 

『どうやら我らに勝ち目はないようだな』

 

 それぞれ顔面に『闇蜘蛛』、『細柳(学園の司書長)』、『生徒に紛れ込んでた奴』と名前が書かれた手抜き感満載の顔なし人間たちの絵。

 

『アトミックスキュアー!』

 

『グアアアアアアア』

 

 さっきの3人がシャドウの剣に纏めて貫かれる絵。

 

『ふっ……部下は排除した……これでフェンリルのいる聖域への扉が開かれる!』

 

 汗ひとつなく余裕の笑みを浮かべるシャドウの絵。

 

『よく来たなガーデンマスターシャドウ……待っていたぞ……』

 

 扉が開く絵。

 

『聖域は……この学園にあったのか……! 感じる……ディアボロスの雫によって強化されたラウンズの魔力を……面白い!』

 

 スタイリッシュな決めポーズをとるシャドウの絵。

 

『シャドウよ……戦う前にひとつ言っておくことがある。ディアボロスの右腕の封印はまだ解けていないぞ』

 

『そうか』

 

 本物を一度も見ていないシータが仕方なく同人誌から流用した女体化フェンリルの絵。

 

『そして誘拐した生徒は死んじゃったからその辺に死体が転がっている』

 

『注……3人の遺体はアレクシアが回収してちゃんと親元に届けられました。行方不明者はもうひとりいたんですけど、後で人知れず実家に帰っていたと判明しました』

 

『あとは私を倒すだけだな』

 

 不敵に笑う女体化フェンリルの絵。

 

『ふ……容易いことだ。だが戦う前にこちらもひとつ言っておくことがある。我が伴侶となるのは金髪碧眼で七陰第一席の肩書きを持つ世界一美しいエルフだ』

 

『そうか』

 

 明らかに他よりも丁寧に描かれた超絶美麗なアルファの絵。

 

『いくぞ!』

 

『さあ来いシャドウ!』

 

 斬り結ぶシャドウと女体化フェンリルの絵。

 

『この後シャドウ様が圧勝しました!』

 

          ◯

 

 シータの報告書を読み終えたアルファは執務机の引き出しを開けて、そこから1枚の画用紙を取り出した。

 画用紙に描かれているのはお世辞にも上手とは言えないぐにゃぐにゃの人の絵だ。かろうじて金髪で目が青くて耳が長く尖っていることだけは判別できる。

 あの子ったら……昔に比べて随分絵が上手になったわね。

 そんなことを考えて口元に女神の微笑を浮かべたアルファは画用紙と一緒にシータの報告書を丁寧に引き出しにしまった。

 それから一転して真面目な顔になったアルファはデルタを呼び出して任務を与えた。

 

「ゼータを見つけ出して報告書を出すようにと伝えなさい」

 

「わかったのです!」

 

「あとシータにも『疲れてるみたいだからしばらく休みなさい』と伝えて」

 

「任せるのです! えっと……メス猫に休めって言って、シータは報告書!」

 

「デルタ、逆よ」

 

          ◯

 

 ゼータが倒したネームドは間違いなく本物の『暗黒微笑』であり、シータが遭遇した暗黒微笑する全裸男は『暗黒微笑』などではない。

 全裸男の名はル・ミノー・ル。

 異名は『究極の闇』。

 連続猟奇殺人犯だったミノーは性教十三性者に敗れて一度は性教に所属した。

 しかしどれだけ教育を受けても『アスある命を淫らに奪うべからず。アスを鍛えよ』という性教唯一神マラクレスの教えに従わず、かつてよりも変態性を増して猟奇殺人を繰り返した。

 そんなミノーは救いようのない異端者と断定され、性教十三性者によって討たれた。

 正確には……集結した十三性者が総力をあげて討伐したのだ。

 その際、性教加入後に与えられた『マラクレスの聖血』によって力を得ていたミノーは十三性者のうち7人を返り討ちにして殺害したが、最終的に数の力に敗れた。

 そう、確かにミノーは一度死んだのだ。

 だが、ミノーは蘇った。

 生き残った十三性者が去った後、ミノーが戦闘時に撒き散らした大きな白いおたまじゃくしもどきが這いずり、集まり、人の形になった。

 それこそがシータと遭遇したミノー……2人目のミノーの正体であった。

 その性質は2人目のミノーになっても消えていない。

 シータが去り、遅れて金目の物を回収したシャドウが去った後、3人目のミノーが誕生した。

 動けるようになった3人目のミノーは2人目のミノーの死体に縋り付いて泣き喚いた。

 

「あああああああああああ! なんでなんでなんでなんでなんで! おとーさん! おとーさん! おとーさん!」

 

 そして前の自分の肉体と名状しがたい行為に及びながら叫んだ。

 

「シャアアアアアアアアアアドオオオオオオオオオオ!」

 

 こうしてこの世界にまたひとり、人知れずシャドウの命を付け狙う者が誕生した。




この作品ではあまり出番がありませんでしたが、陰実世界には父親だと思い込んでいる存在をシャドウに殺されて復讐者となった少女がいます。同志ができて良かったですね。
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