シャドウガーデン第1のモブ   作:ことのはだいり

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第8話 薬物鬼つええ! こいつで逆らうやつら全員洗脳してやろうぜ!

 私はシャドウガーデンの仲間たちと良好な関係を築くよう心がけているが、デルタ様とゼータ様を見て分かるように、生まれつき相容れない相手も存在する。

 私の不倶戴天の同僚、その名はウィクトーリア。559番という新たな名前を与えられたにも関わらず七陰からもっぱら本名で呼ばれ、さらには彼女のために近く七陰に次ぐ新たな地位まで用意されると噂の大型新人だ。

 ウィクトーリアは部隊に入れると私が隊長であることに不満を隠さないし、拠点で顔を合わせるたびに舌打ちするし、公然と私のことを変態呼ばわりするし、とにかく私に対する敵意がすごい。

 しかし私はウィクトーリアが私に敵意を向ける理由が分からないわけでもないのだ。

 かつてのウィクトーリアは表社会の最大宗教である聖教の聖女であった。聖教はディアボロス教団の隠れ蓑であり、悪魔憑きは救いようのない哀れな存在なので見つけ次第殺しましょうと民衆を扇動してきたクソである。そんな聖教の異端審問部隊を率いていたウィクトーリアは、かつてシャドウガーデンに弓を引いた。

 最初にウィクトーリアと交流もとい交戦したのはゼータ様だった。ゼータ様は聖教の暗部の諜報中にウィクトーリアに見つかり、友達だからという真っ赤な嘘を理由に見逃されるという屈辱を味わった。

 やられっぱなしは性に合わないが、私怨のために自由行動ができるほど七陰は暇ではなかった。

 そこでゼータ様は私を呼びつけた。

 

「シータ? 頼みたいことがあるんだけど、すぐ来れる?」

 

「うっす!」

 

 ゼータ様の指令は威力偵察のためウィクトーリアに適当にちょっかいをかけてこいとのことだった。

 

「殺す必要はないよ。むしろ殺せそうならあえて見逃してやって。聖女サマに敵から情けをかけられる屈辱を教えてやるんだ」

 

 やり方は一任するというゼータ様の言質をとった私は、全力で聖教をおちょくるために策を練った。聖教に慈悲の心を向ける悪魔憑きは存在しないのだ。この機会に潰してやろうとも思っていた。

 だから、ちょっとだけやり過ぎてしまったのだ。

 

          ◯

 

 カルト宗教にはカルト宗教をぶつけてやんだよ!

 そんな結論に達した私は、まず新たなカルト宗教を作り出すところから始めた。

 この世界には無法都市という薬物中毒者がはびこるヤバイ場所が存在する。私はそこで使い捨てを前提に信徒を集めることにした。

 

「おお! 神よ! そこにおられたのですね!」

 

 無法都市の大通りのど真ん中で、襤褸切れで全身を覆った私は見えちゃいけないものが見えてる人を装い叫んだ。これだけならば無法都市ではよく見る光景である。しかし私には何かと役立つ宴会芸があった。

 

「神よ! 私の身を捧げます! この現し世に降臨してくださいませ!」

 

 私の考えたカルト宗教は、主神マラクレスが現し世に降臨する奇跡から始まった。筋肉を開放し、スライムを全身に纏って浅黒い肌に擬態させ、腰蓑からはみ出る大きさのスライム棒を装備した私は、まさに雄々しき巨人の神であった。

 最初に興味を持つ者が数人いればそれで十分、私の呼びかけにほいほい着いてきた連中をイータ様の特性媚薬で洗脳した。この媚薬の完成に一役買った私は、「私……感度3000倍にされて死んだ甲斐があったな……」と感極まった。

 カルト宗教といえば性行為だが、私も年頃の女の子である。見ず知らずの女性が浮浪者のおっさんに犯されるなんて看過できなかった。だから男同士でやらせることにした。そういう趣味はなかったが、仕事なので割り切っただけだ。断じて私にそういう趣味はなかった。

 

「異性との交わりが許されるのは子供を授かる時だけだ。しかしそれでは性欲を持て余すことだろう。 ゆえにこの性の神マラクレスは貴様ら罪深き生き物にアスを授けたのだ。アスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

 信徒に浮浪者を勧誘あるいは拉致させ、イータ様の媚薬で満たした酒場を改造した仮拠点『ハッテンバー』に連れ込み、互いにアスを掘り合わせた。

 快楽漬けにした信徒が増えたら、続いて戦力増強のために無法都市名産の犯罪者どもを数の暴力で拉致し、薬漬け洗脳。無法都市の支配者の一角であるジャガノートを拉致った後で逃げられたのは惜しかったが、他国で指名手配された凶悪犯を大量に取り込んだので、性教は少数ながら聖教との戦争ができるほどに成長した。目的を達したら切り捨てる予定ではあるが、超新星と呼ばれる億超え賞金首の数人すらも手中に収めたのはささやかな自慢話だ。

 ついにアス、ではなく明日聖教に戦争をふっかけると決めて、私は信徒を集めて決起集会を執り行った。

 無法都市で集めた信徒たちは皆、聖教の炊き出しに入り浸りすぎて「いい加減働きなよ、仕事紹介しようか?」と言われたり、人道に反する行いを繰り返して神の名の下に指名手配されたり、別に接点ないけど莫大な寄付金に嫉妬していたり、何かと聖教への恨みを抱いている。聖教との戦争を目前に信徒たちは頼もしい熱量を見せてくれた。

 

「債務者を一家心中に追い込んだ外道よ、女子供の臓物抉り捌いた畜生よ」

 

 うーん、自分で集めといてなんだけどクズだなこいつら。

 

「平等と救済を唱う聖教にすら見放された、脆弱で孤独な人の子たちよ」

 

 私は聖教嫌いだけど、こいつら見捨てるのは正しいことだと思うよ。

 

「我とアスで繋がった穴兄弟たちが! 必ずやッッあのくだらぬ邪教を破壊する!」

 

 どう考えても邪教はこっちだけどな!

 

「せ……聖教ぶっ壊したら……昔みてーにまた堅気……ガジりてえなあ〜!」

 

 なんでこいつ一般人を齧りたがるんだ?

 歯型付けるのが好きとかそういう性癖か?

 性癖は人それぞれ自由だとは思うが、この性の教えに特殊な性癖を混ぜると性癖性の違いで団結が崩れかねないので許してやれない。

 

「いいわけないだろ! そんなことしてる暇あったらアスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

「邪魔なブタ……シズめて……いいんすかァ!?」

 

 なんで豚を沈めたがるんだ?

 動物虐待? 趣味悪いなこいつ。

 シャドウガーデンで食肉用に繁殖させてるけど、屠殺する時は結構心が痛むんだぞ。

 

「かわいそうだろ! 豚にだって穴はあるんだぞ! アスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

「ガキモツ! トバしてええのか!?」

 

 いいわけないだろ!?

 知ってんぞお前、超新星のひとりで連続児童誘拐と臓器売買で指名手配されてる奴だろ!

 トバすって売り捌くってことだな理解したぞ!

 

「ガキモツトバしてる暇があったらアスキメて自分をトバせぇ! アスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

 駄目だ、こいつらと話してると頭がおかしくなる。さっさと話を纏めてしまおう。

 

「明日、世界は我らを知る。真に正しいセイ教はひとつのみ!」

 

 待ってろ聖女! 聖教を性教で塗り替えて貴様を性女に貶めてくれるわ!

 これぞまさに、性教革命!

 

          ◯

 

 ウィクトーリアはあの日のことを今でも悪夢に見る。

 あれは穏やかな昼下がり、青空を眺めて最近出会った新たな友人のことを思い描いていた時のこと、顔を真っ青にした聖騎士たちが駆け込んできたのだ。

 

「大聖堂に敵が押し寄せています!」

 

 珍しいことではあるが、聖教を敵視する異端者が聖女の命を狙って攻めてくる事態は何例か記録されている。そういう事態に備えて訓練してきたはずなのに何をそんなに怯えているのかと聞けば、ウィクトーリアのいる大聖堂を目指して進軍中の敵集団は、倒れた聖騎士をとてもではないがウィクトーリアの前で言葉にできないような悍ましい拷問にかけているのだという。

 

「許し難いですね。もはや女神ベアートリクスすら慈悲を与えないでしょう。女神の名の下に、この聖女ウィクトーリアが異端者を討滅いたします」

 

「えっ、聖女様が出陣なさるのですか!?」

 

「聖女様のお力は存じておりますが……今回ばかりはやめた方が……」

 

  聖騎士たちの戸惑いを聖女である自分の身を案じてのものと切り捨ててしまったウィクトーリアは、ついにそれと対面してしまった。

 そう、全裸の男たちを背後に従え、浅黒い肌と筋骨隆々の雄々しい肉体を見せつける、なぜか腰蓑から巨大な黒い棒を垂らした女に。

 一瞬男かと思ったが、聖女の目は騙されない。骨格から判断して一応は女だと見抜いた。

 そして女である以上、たとえ大胸筋と見紛うそれであっても隠さずに晒せば露出犯だ。

 つまりこの集団は露出魔の集まりであるとウィクトーリアは看破した。

 

「止まりなさい、咎人よ」

 

 ウィクトーリアだって女の子、大量の露出魔と相対するのは怖いし気分が悪い。それでも聖女としての責任感で勇気を振り絞り、露出魔の集団に立ちはだかった。

 ちなみにシータの名誉のために補足するが、彼女もしっかり女の子なので大胸筋であってもちゃんとスライムで覆っていた。色々と曝け出していたのは背後の男衆だけだ。

 

「ここがどこだと思っているのですか。女神ベアートリクスが見守るこの地でそのような不埒な装い……恥を知りなさい!」

 

 ウィクトーリアに剣の切っ先を向けられた露出女は不敵な笑みを浮かべた。

 そして露出女の軍勢の後方から複数の鼓を叩く音が鳴り始めた。

 ドン。

 ドドドドッドッド。

 ドン。

 ドドドドッドッド。

 ドン。

 

「何が至教か!」

 

「何が至教か!」

 

「何が至教か!」

 

 露出魔の軍勢が声を揃えて叫ぶ。

 ドドンドドンドン。

 

「性教!」

 

 ウィクトーリアは戸惑った。異端者と思っていた露出魔の軍勢が急に聖教を讃え始めたのである。不気味なものを感じて動けずにいると、先頭に立つ露出女が名乗りをあげた。

 

「我、性行為を司る神、マラクレスである!」

 

 聡明なウィクトーリアはマラクレスの名乗りで露出魔の軍勢の言うセイ教が聖教ではなく性教であると察した。

 

「なるほど……やはり異端者ということですね」

 

 ウィクトーリアはちょっと安堵した。信徒には平等に接するべきだが、目の前の異常者集団を他の信徒同様に扱うのは聖女であってもできそうになかったのだ。異常者たちが異端者で良かった。

 

「その通りだ聖女よ。このセイ戦に勝利した方が世界を導く主教となるのだ。貴様を打ち倒し、そして我は世界に宣言しよう。アスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

 追いかけてきた聖騎士や密かに参戦した異端殲滅部隊テンプラーが変態のくせに妙に屈強な性教信者と衝突し、はからずもウィクトーリアはマラクレスと一騎打ちとなった。

 

          ◯

 

 悔しいがウィクトーリアは強い。その才能は間違いなく七陰クラスだ。

 私が最初にウィクトーリアと戦った時も、殺してはいけない標的に対してシータとしての手札を見せるわけにもいかず、不得意な肉弾戦を仕掛けて終始翻弄された。私は魔剣士としてはカスみたいな強さで、ウィクトーリアは当時であっても世界有数の魔剣士であった。

 あっという間に四肢を動かす筋肉を斬られ、地に背中を付けた私はウィクトーリアに胸を踏み付けられ見下された。

 

「最期に言い残すことはありますか?」

 

 ウィクトーリアは勝利を確信し、油断していた。

 あのままでは本当に殺されかねなかったため、私はやむを得ず自らにかけた制約を破り、ウィクトーリアの隙をついた。

 私の秘技はスライムの圧縮と解放による射出だ。

 そしてあの時、ちょうどいい感じに圧縮したスライムの塊が、ちょうどウィクトーリアの背後に存在した。

 収束率を高めたスライムカッターではゼータ様に殺さず見逃せと命じられているウィクトーリアの頭に風穴を開けてしまう。かといって収束率を下げたスライム散弾ではウィクトーリアを行動不能にできず私が反撃で殺される。

 行き詰まった瞬間、私の頭の中にイータ様の声が響いた。

 

「感度3000倍にする薬〜」

 

 いい感じに薄めて気化させて使用すると媚薬になるその薬の原液を、私はスライム触手で瓶を開けて股の間の圧縮スライム塊にぶっかけ、それから散弾として発射した。

 

「んあっ、ひうっ、ああっ!」

 

 効果はすぐに現れた。私がイータ様に原液を注射された時は肌が衣服に擦れただけで死にたくなるような激痛が襲ってきたほどの劇物だ。スライムと共に少量を打ち込まれただけでも性教信者共を洗脳した時以上の媚薬効果を発揮するだろう。むしろ快楽で止まって痛みに至らなかっただけウィクトーリアは幸運だった。感度3000倍とか普通に死ねたからな、私は心停止後イータ様に蘇生されて助かっただけだ。

 私はスライムを操作して無理矢理四肢を動かすことで立ち上がり、勝鬨をあげた。

 

「見よ! 聖女は我が性棍に背を掘られ、性の力によって征服された! 我らの勝利だ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

「聖女よ、貴様の敗因はアスを鍛えていなかったことだ。アスを鍛えよ!」

 

「うおおお! ナイスアス!」

 

 最大戦力の聖女を戦闘不能にした後は消化試合だった。聖騎士は悪いことはしていないので初めては奪っても命までは奪わなかった。テンプラーは聖教における悪魔憑き殺しの実行犯なので、初めてを奪ってから命も奪った。

 それからしばらくして、周辺国家の連合軍が性教の征伐に乗り出した。性教なんて認めたら少子化で国が滅ぶという名目だったが、実際はディアボロス教団が聖教を失いたくなかったためだろう。

 腹立たしいので真面目に戦ってやろうかとも考えたが、聖女は幼児退行するまでしっかりシャドウガーデンの力を理解らせたので任務は完了済み、性教に集めた危険な犯罪者を世に放つわけにもいかず、征伐軍との戦いの中で適当にマラクレスの死を偽装せざるを得なかった。

 間もなく指導者を失った性教は無事に敗戦した。

 マラクレスの性棍像に磔にされて晒し者となっていたウィクトーリアは無事に救出され、しばらくの療養の後で聖女に復帰した。

 報告のためにも私は療養中の様子もしっかり撮影してきたが、あのウィクトーリアが「あのね、あのね、変態がね、ウィクトーリアのこといじめるの」などと言ってお付きの人に縋りついている様子を見ることができて胸がすく思いだった。

 報告を聞いたゼータ様は腹を抱えて足をバタバタ、尻尾をブンブンさせながら爆笑し、「かわいそうに……今度会ったらちょっとだけ優しくしてあげようかな」とウィクトーリアに対する敵意を薄めた。それがウィクトーリアのシャドウガーデン加入に寄与したかどうかは神のみぞ知る。

 最終的に性教は跡形もなく消滅し、今でも残っているのは不意打ちと毒で自分を辱めた私に対するウィクトーリアの敵意だけである。

 ……ところで後で知ったのだが、ウィクトーリアは聖教のお偉いさんたちの手で髪の毛の色が変わっちゃうくらいに薬漬けにされてたそうだ。

 聖教の歴代聖女は薬の力で聞こえちゃいけない声を聞かされて、聖教中枢の悪い奴らはそれで聖女が信託を受けたということにしていたのである。

 つまり薬の力で性教を作った私はこの上なく正しかったのだ。

 やっぱりカルト宗教は怖いよね。私は関与しないように気を付けないと。アルファ様を神として信仰するなら別だけどね!

 

          ◯

 

 ウィクトーリアは8番が嫌いだ。

 それはかつて、不意打ちと毒という卑怯な手段で自分を負かし辱めたから……ではない。

 あの変態が間違った信仰をしているから、つまりはシャドウよりもアルファを神のように崇め奉っているからだ。

 元聖女と呼ばれていてもウィクトーリアは神を信じなくなったわけではない。

 ただ、本当の神が女神ベアートリクスではなくてシャドウであると知ってしまっただけのことだ。

 ゼータはウィクトーリアと同じ志を持っている。

 ゼータ以外の七陰も、少なからずシャドウを神聖視している。

 あの変態を除くその他大勢も、大半はシャドウと面識がないながらも七陰の教えによってしっかりシャドウを天上人として認識しているし、一部のシャドウの力を知る機会があった幸運な者は圧倒的な力への恐怖という最も原始的な信仰心への原動力を刻み込まれている。

 8番だけがシャドウガーデンにおいて異端者なのだ。ついでにはっきり言って異常者だ。

 8番には恐怖心が欠如している。イータの人体実験を筆頭に何度も臨死体験をしたせいだ。おかげでシャドウの神の御業を目撃しても「はえ〜、すっごい眩しい」で済ましてしまう。

 七陰であっても心の奥底に少しは隠し持っているシャドウの力への畏敬の畏の方を8番は一切持ち合わせていない。

 しかもシャドウに対する恋心もないので、シャドウを相手に憚ることなく素の姿を曝け出せてしまう。

 だからシャドウはデルタが相手の場合に近い気安さで8番に接し、その姿がさらにウィクトーリアを苛立たせる。

 まあ要するに、ウィクトーリアと8番との間にある確執は、厄介ファン同士の最推しの違いに起因するという結論に達してしまうのだ。

 

          ◯

 

 ところでシータは知らないことだが、性教は滅んでなんかいない。

 シータがちゃんと処分しなかったために超新星を筆頭とする性教の主戦力は征伐軍の猛攻から逃げ延び、陰に潜った。

 彼らの目的は溶けるようにして天に送還された性教唯一神マラクレスの再臨。シータがスライム人形でマラクレスの死を偽装し、その死体を残さなかったせいで、そのような希望的観測をする余地が残ってしまったのだ。

 性教は奪わず、殺さず、ただアスを掘る。その存在を知る者は性教の在り方を世界一クリーンで汚いカルト宗教と呼ぶ。

 超新星に薬師がいたために薬漬け洗脳で人員補充するやり方は続き、今ではかつて聖教に戦争を仕掛けた時を遥かに超える規模へと成長し、ついにはディアボロス教団と潰し合ってすらいる。ちなみにディアボロス教団の尖兵であるチルドレンは誘拐した子供や孤児を薬漬けにして増やしているため、やはり争いは同レベル間でしか成立しないわけだ。

 ディアボロス教団に抵抗する組織はこれまでにもあったが、どれもすぐに潰されてしまった。シャドウガーデンがまだ陰に潜んでいる現状、よりにもよって性教が史上初のディアボロス教団に拮抗する組織として裏の世界に知れ渡ってしまった。

 性教の活躍を掴んだゼータは、笑いを堪えられずに吹き出しながら、なんだかんだ仲良くなったウィクトーリアにも教えてやった。

 性教の活躍に釈然としないものを感じたウィクトーリアはゼータに進言した。

 

「勝った方が我々の敵になるだけです。あの変態に責任を取らせるためにも、自分で作った宗教は自分で潰すよう命じるべきかと」

 

 ウィクトーリアの言い分はもっともだが、かつて聖教の教えの下にディアボロス教団によって同胞を皆殺しにされたゼータは唇の端を僅かに吊り上げてその進言を拒んだ。

 

「もうちょっと鑑賞しようよ。だって間違った神を信仰する者同士で争っているんだよ? そんなの……そんなの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ——面白いもの、ねぇ。

 

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