【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
第一話 双生の魔神
双生の魔神。
これを、聞いてみなはどう思う。
一般的な人は双生と聞いて双子の魔神と思うだろう。
または、同時に生まれた魔神と思うだろう。
この認識は間違ってはいない。
事実、双生の魔神は人間で言うところの双子に非常に近い存在だ。
通常の魔神と同様に、
双生の魔神も元素、概念、自然現象が人間の信仰によって誕生したが、
過程は同じ、でも、唯一双生の魔神の特異性は1つの信仰、1つの元素から同時に生まれてきた魔神であること。
これは、人間の卵子が分裂して双子が生まれる原理に近い。
だけど、人間と違って。
同時に生まれた魔神は同じ概念を持つ。
それは、人間と同じ別々の存在ではなく完全に同一の存在または別側面として扱われること。
言わば、同一人物。
この特異性により、双生の魔神は二対一体の神として認識される。
例えば、雷神バアルは双生の魔神の良い例だ。
雷電影と雷電眞。
彼女たちは2つの側面が1体となって存在し、
片方がなくなっても信仰は消えず、この世界に残り続ける。
本来、神は単独で完結した存在として認知し孤独の存在とされたが、
双生の魔神はこの概念を覆し、2つの側面が共存し、1つの存在として崇拝される。
すごいでしょう。
だって、神でありながら家族を持ち、
人間と数少ない死以外の共通点を持っていると僕は考えているのだよ。
ねえ、君はどう思っているかな。
▲◆▲◆▲
深海に潜った私は、水面を抜けるとそこは別世界だった。
透明な水が私を包み込むように広がり、往日の海の美しい景色が広がっていた。
まず目に飛び込んできたのは、珊瑚礁の庭園だった。
水深の浅い場所には、ピンク、青、紫など様々な色の珊瑚が広がり、
それらは魚たちの住処となっていた。
小さな熱帯魚から大きなマンタやウミガメまで、様々な生物が珊瑚の間を自由に泳ぎ回っている。
次に目に入ったのは、海底に広がる古代の遺跡だった。
波に揺れる石造りの柱や壁が、かつてのレムリア王国の宮殿や神殿の跡を物語っている。
その神秘的な雰囲気は、海底の深淵に古代の歴史を感じさせた。
さらに深く潜ると、光の柱が海底に差し込んでいるのが見えた。
太陽の光が海面から差し込み、幻想的な光景を作り出している。
その光の柱を泳ぎ抜けると、まるで異世界に迷い込んだような感覚に包まれた。
そして岩場には、海中の洞窟が点在していた。
暗闇の中に入ると、美しい魚たちや蛍光色の藻が存在し、波の音が響く洞窟内はまるで別世界の秘密の場所のようだった。
これらの海中の景色は、言葉では完全には表現できないほど美しかった。
まるで夢の中にいるような感覚だった。
▲◆▲◆▲
それは、深い海底の中にあった。
天の都の主により深く海底に沈んだ。
それは、かつて人々の繁栄を象徴は今でも残っている。
黄金の城、芸術と音楽の都。
かつて、フォンテーヌで栄えた偉大なる帝国。
その滅亡から数千年間たっても原形を保っていることに感動した。
管理がうまかったにしても当時と変わらぬ美しさを誇ることに
フォカロルスは称賛した。
神の息吹に満ちる激流を抜け、この海峡な海底の中で1つの宮殿がいた。
その宮殿は、美しい水中の景観に囲まれ、神秘的で神聖な雰囲気を放ち。
神々しい神すら魅了する光を放つ建築物。
フォンテーヌで様々な優れた建造物を見てきた
2代目水神フォカロルスもこれには驚愕しえない。
レムリア帝国の王都。
その中枢に立つ城の中。
巨大な船を改造して建てられた宮殿。
中には大楽章を演奏するためにデザインされた楽器もあり、
ユニークなデザインとアイデアに詰まったここ安息の殿堂に二柱の神が居た。
そのうちの一柱。水神フォカロルス。
俗世の七執政の一柱にして水を司る魔神。
俗世の神になって先代水神から古代の水の権能を引継いた彼女は
以前の権能ではびくともしない神すら突破できない激流の障壁を難なく突破し、
この往日の海にたどり着いた。
ヴィシャップと原海アベラントが暮らす楽園。
この深海独自の生態系はここに存在していた。
「これは、これは、面白い客人が来たな」
あたり一面を見渡し安息の殿堂の玉座に座る
もう一柱の神。
それは、フォカロルスが会いに来た神だ。
そのものは力の化身であった。
この世で最も神らしい神にして、
この世で最も神を殺している神。
天空の支配者に従い、天変地異を自在に操り、
国も神も関係なく天に逆らうものは一切合切歴史上から抹消される。
なぜなら、彼が戦った場所はすべて滅んで海底に沈み、
書物もろとも歴史家を葬ったから。
その名はポセイドン。
フォカロルスの実の姉である。
▲■▲■▲■▲
「お出迎えご苦労。」
「ふん、わざわざ、この俺が出迎えたのだ。
何しに来たフォカロルス。
水神の神座を引き継いだと思えばこんなところで油を売っている場合か。」
「別に、おねえちゃんの顔を見に来てなにか悪いことでもあるかい?
せっかく、七神の座を引き継いだのに挨拶に来ないなんて
つれないじゃん。」
それは、フォカロルスと同じ姿だ。
同じ服を着て、唯一違いがあるのは手に持つトライデントと髪型のみ。
長い髪をロングにして組み上げており、東にいる雷神と同じと言えばわかりやすいだろう。
傍からは双子と見間違えするほどの姿。
当たり前だ。
双生の魔神。
二対一体の魔神。
似ているのではない。同じ存在だ。
ポセイドンがフォカロルスで
フォカロルスがポセイドンなのだ。
「くだらん。
エゲリアが死に貴様は天理の番犬になることを選んだときは
ついに狂いだしたのかと思ったぞ。
貴様はいつもそうだ。
同じものから生まれたにも拘わらず、
出た答えはいつも違っていた。」
水と正義を司るのがフォカロルスなら
大海と地震を司るのがポセイドン。
善悪二元論の神のように、
似ているのにも拘わらず決して相容れるもの同士がここで話し合う。
▲◆▲◆▲
「そもそも、あれが俺と同じ神か?
古龍の権能と神座を引き継ぎ。
以前よりましになったと思い
地上に出て見れば、この始末。
岩神は全盛期とは程遠く、雷神は戦士ではなく、
風神にいたっては力、地位までも乞食に成り果ててしまう始末だ。
いつから、七神はダメ集団になったのだ。
そのせいで、俺が苦労をすることになったのだぞ。」
「酷い言い方だな。あと、口調が崩れているぞ。」
数年前、天理の召集に応じ漆黒の厄災を打倒したが、
他の七神の力の衰えに口が開けないようだ。
「神とは完璧な存在であり絶対的な存在。
魔神戦争で座を得た勝者ともあろうものが、
己の力に満足し鍛錬を怠りなど愚の骨頂。
そのせいで、自然現象の化身である
「仕方ないよ。戦争が終わり。
力を必要としない世界になった以上。
必要以上の力なんて持っていても意味がないよ。
それに、摩耗もある。
エゲリアですら摩耗に抗えなかったのだから。」
エゲリア。
ポセイドンとフォカロルスを創造し、
思想の違いで離別をしたがポセイドンにとって数少ない心を許した存在だ。
「それで、本当は何しに来た。
七神となった貴様が今更こんな辺境に来て茶を飲んどる場合か。」
「違うよ。僕がそんな暇のように見える。」
「ああ」
「ひどい」
その後、フォカロルスからフォンテーヌに迫る予言とその対策法を教える。
「なるほど、天理を欺くね。
アホか!」
「そんな言い方ないじゃん。」
「事実を言ったまでだ。
恐怖の龍も傲慢不遜の神もすべてを蹴散らし神々の頂点に立つ存在。
それが、天理だ。
あきらめろ。神とは言えとあれに挑むとは正気か貴様。」
「僕は至って正気だよ。おねえちゃん。
お願い。手伝って。」
「断る」
「やっぱり」
予想した答えを帰った。
フォカロルスは正念場と意気込む。
フォンテーヌを救うにはフリーナは一人じゃあだめだ。
数百年にも及ぶ大演劇。
そこに立つ演奏者のためのアシスタントは何があっても必要だ。
決して裏切ず、天理にもばれない。
最高のパートナー。
「罪は個人が背負うものである。
それは神も人も例外ではない。
ましてや、全ての罪を貴様一人で背負い、
天理に立ち向かうなど愚の骨頂だ。」
「罪を贖うのであれば、
フォンテーヌ人は原初の海へと還らなければならない。
それは一個の生命の消失に等しく、僕は選ぶことができないよ。」
「興味ない。そんな者のために命を懸ける道理はない。
天理に立ち向かう人々なら前に立とう、
望まぬ運命に抗うものなら命をやろう。
だが、自ら望んだ結果によるものだ。
俺たちに関係ない。」
「心を持ち、悪意を持ち、愛を持ち。
彼らこそ僕が望んだ理想の人間だよ。
これは、僕が選んだことでもある。
それを、失うなんて僕は耐えられない。」
「いくら、見た目を似せようと所詮はうまくできた擬態に過ぎん。
溶けても元に戻るだけだ。
消滅するわけじゃない。」
純水精霊を原始胎海で包んでできたのがフォンテーヌ人だ。
ならば、溶けても外側。
中身が溶けるわけではない。
「いや、彼らが生み出した物語には価値がある。
心がある。感動がある。ロマンがある。
僕が求めた人間だよ。ポセイドン。
それは、ポセイドンが一番触れられたくない部分だった。
人のときを恥、自分を恥。
人を超越した神となったとき。
忌々しい人間の時の記憶を蓋をした。
「でも、それは、
それを手に入れるため、僕たちは人間になった。
だから、守りたい。
そのためなら僕は自分の命も惜しくない。」
「理解できん。
それは、貴様の命に勝るのか。
認めん。貴様の命がたかが擬態をしている同胞を救うだけなのか。
別に死ぬことではない。
フォンテーヌ人の死は死ではない。
肉体が溶けようと本体が無事なら生きていける」
融けてしまって意識を融合しようが、
それが、普通だ。
意識をつなぎ、大陸そのものに巨大なネットワークを形成してきた
純水精霊にとってさほどデメリットではない
「うん。わかっている。
でも、それは人間ではない。」
肉体は溶け、自我を失ったフォンテーヌ人は人とは呼べない。
「ポセイドン。こうしよう。
元人間だった君は人を信じることができなかった。
人を信じるも裏切られた君は人に強い不信感がある。
だけど、僕は止めない。絶対に救って見せる。」
「無理だな。そんなことを言ったところで俺は協力しない。」
「だから、ゲームしよう」
「ゲーム?」
「そう、昔のように。
ルールは簡単。僕が予言に立ちぬかう間。
おねえちゃんが僕を救う手段を見つけたらおねえちゃんの勝ち。
逆に僕を救えなかったら僕の勝ち。
やろう。おねえちゃん。
キミに僕を救えるかな?」
次回投稿5/7