【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
「まさか、フォンテーヌにここまでの災難に見舞われるなんて思ってもみなかったわ。」
「それだけではないわ。」
近年、謎に増加する降水量、水没した土地が年々増加を遂げている。これも、予言の前兆だと巷では話題になっている。
「予言を変えるのね。正直に言うと私は可能だと思うわ。」
雲は光を遮断し、店の中を暗ますほどの時間を過ぎ去り、ひらめいた。
「神が見た未来。観測した結果を人々に告げるのが予言よ。でもね、予言とは見た未来を示すことであって、決して、作るものではない。」
「というと、」
「フォンテーヌの予言は、天理自らの力で起こす現象。ならば、人為的に作れるなら、人為的に消すこともできる。」
「それを、できれば苦労はしないよ。」
ナヒーダが言う理屈は分かる。神が作ったものなら、神なら壊せる。
だが、予言とは最も起こりうる結果を表すもので、決して、絶対に起こるわけではない。
事実、予言が外れたことも預言者シビラの口から告げられたことがある。だけど、フォンテーヌの予言は絶対に起こりうる。
本来、無数にある選択肢を無理やり1つの結果に集中させる。天理の権能にポセイドンでは太刀打ちできない。
権力はより強い権力にはひれ伏す。天理の予言を簡単に覆すことはできない。
天理に歯向かい、記憶を奪われた。ポセイドンは天理の力を一番よくわかっているはず。
「方法は2つある。1つは予言を利用する。」
予言は変えられない。だが、天理は変えられる。
フォカロルスは天理の死角を搔い潜り、予言の結果を変えずにフォンテーヌを救おうと考える。
「もう1つは予言自体を破壊する。」
一方、ポセイドンは予言の結果を変えフォンテーヌを救う。
「そんなことが可能なのか。」
「天理の予言はおそらく因果によるもの。内側、つまり、この世界に属するもので破壊できないわ。でもね、外側ならどう。」
盲点だ。
「この世とは一切関係ない。因果の外側にいる存在。あなたは知っているでしょう。」
「……ありがとう。おかげで道が見えた。」
「別にいいわ。」
席を立ち、店の外に出ようとしたとき、
「代わりにはあなたの名前を教えてくれるかしら。」
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あの時、ナヒーダは感じた。生まれて直ぐに幽閉され、孤独の闇に胸を焼かれながらも夢の中で過ごしていた。そんな、孤独の毎日に突如として終止符が打たれた。
それは、この世のものとは思えない力だった。傍から見れば権能によるものだと推測する。そこまではいい。問題は動力が違うことだ。
権能とは、神の力。その発動するには元素力を使用している。これは、どこの神でも同じことだ。
だけど、フリーナ、否、彼女が使った元素はこの世のものではない。
禁忌の知識やアビスと同質のものだ。
テイワットは外界の概念に文字通り「毒され」やすく、そしてそれ故にそれらを拒絶する性質を持つ。
例えば、禁忌の知識。ただの知識にも関わらず、外界から来た無害の知識が龍すらも蝕む毒となる。
そして、彼女が権能を使用したとき、わずかながら、世界は壊された。
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分身を解除し、ポセイドンは事務室にこもった。先ほどの会話でポセイドンの正体が見破られていたのだ。
フリーナだけでなく、おそらく、自身の出生についてもだ。
「侮っていたな。」
さすが、世界樹の化身。この世の全ての情報を探るだけでなく、わずかな手がかりでポセイドンの正体、そして、予言の対策法にたどり着くとは。
「こうも簡単に正解を出すなんて、俺たちが馬鹿みたいじゃないか。」
因果を破壊する。
なるほど、今までにない発想だった。そして、ブエルはヒントを与えた。それだけで十分だ。
外側の存在。おそらく、降臨者を使って因果を破壊する。
テイワットに属さない外来的存在の中で、最も強大かつ世界に匹敵するほどの意思の持ち主。
いい案だ。
俺の計算によれば降臨者単体ではなく、同士で衝突した場合、因果は完全に破壊することが理論上可能だ。
だが、それは両者の力が均一でなければならない。
カーンルイアで観測した第五降臨者の力は俺には程遠い。
これでは、衝突したときに出る衝撃は因果を破壊することには程遠い。
だからこそ、
「俺を恨むなよ。フォカロルス。キミは自分の好きにしたのさ。今度は俺の好きにさせてもらうぜ。」
手に持つ神の心を持ち、それに微笑みながら、目の前の宝玉にはめ込んだ。
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