【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
澄み切った青空の下。
隣接する砂漠気候と同じ気候でありながら、涼しく湿った空気が流れる真逆の環境が流れる。
淡水の湖を一つ越えるだけで、環境が変わることを感じられるのも旅の醍醐味だ。
ロマリタイムハーバーは、テイワットの中でも随一の展望台を誇り、迫力満点の滝とテイワットの中で最も巨大な海岸エレベーターがあり、その風景は圧巻だ。
港にはスメールやナタなどの外国の船が集まり、人々が賑わう中、旅人とパイモンは観光をしながら通行人に話を聞き取り、その情報をまとめている。
「水神って、思っていたより親しみやすいやつかもな。」
「想像しているのとは全然違う。」
聞き込みしながら、水神の評価を聞き出す。他国で言われた冷酷非情や強力無比な存在と異なり、まるでアイドルや一流のスターみたいな扱いで温度差が激しい。
挙句の果てにはマスコット扱いをするものも現れ、今まで出会ってきた神の中でも最初の印象がガラリと変わってしまう。
「そうだよな。さすがに自国の神をマスコット扱いなんて、オイラ初めて聞いたぞ。」
おそらく、自国の神をマスコット扱いをする国は後から先までこの国だけだろう。
「そうね、非常食よりかはマシだな。」
「おい!だからオイラは非常食ではないだろ。」
冗談を入れながら話すと旅人とパイモンの目の前にスライムのような水色の生命体が通りすがる。
それは、今まで出会って戦ってきたあの精霊にそっくりだった。
「なあ、あれって純水精霊だよな。」
フォンテーヌ以外では珍しいがけっこうな数に出会っており、人前では姿を現さない存在だが……
「本当だ。」
「人がいる場所で純水精霊に会うなんて初めてじゃないのか。すこし聞いてみようぜ、何かわかるかもしれないし。」
純水精霊と話をする。今までも、純水精霊と話したことはあるが、こんなに人混みで話をするのは初めてだ。
「おい、そこの精霊さんたち。すこしお話があるんだけど。」
純水精霊たちは驚いて振り向く。まだ、小さくて手のひらサイズに収まる彼女たちだが、おそらく、生まれて間もないだろうと推測する。
「なに?」
「話って、ぼくたちのことですか。」
意外と流暢に話すことができ、出会ってきた純水精霊は話すことができない個体もあり、すこし心配をしたが余計なことだったと反省する旅人。
「そうそう、オイラはパイモン。こいつは旅人。」
そんな心配を跳ね除け、旅の翻訳家であるパイモンは簡単な自己紹介をする。
「こんにちは!私、セレニア。セレって気軽に呼んでね。こいつはアクアリス。私の友だちだよ。」
飛び回り、自己紹介をする元気一杯のセレニアと
「セレのバカ、なに呑気に自己紹介しはじめているの。」
何だか、見覚えがある仕草をするアクアリス。ここまで感情表現ができるほどまでに学習してきた精霊もなかなかいないだろう。
「でもいいじゃん。ルール違反してないし。」
「こんな怪しい人に答えてはいけないって先生が言っていたのよ。」
「あの、すみません。」
「大丈夫、大丈夫。アクアが心配性なだけだから、ところでお話はなんですか。」
パイモンは話した。
「水神ってどういうやつなんだ。」
「フリーナ様のこと。知ってる知ってる。フリーナ様はね、とても面白いやつだよ。」
「面白いやつ?」
今までは得られない評価だ。これまでは、強さ、性格などにも言及してきた者もいたが面白いやつという評価は初めてだと感じたパイモンはセレニアの話を聞き続けた。
「そう、いつも僕たちを褒めてくれるしポイントもくれる。」
「だめだよ。それ以上しゃべるとポイント減点になっちゃう。」
ポイント。初めて聞くキーワードだ。アーカーシャ端末と同じその国独自の技術だろう。
「ポイントって何?」
「ぼくたち純水精霊が日頃の労働などによって付与される、いわゆるお給料だ。」
「それって、何に使うんだ。」
使い方を聞こうとしたその瞬間、アクアリスがパイモンとセレニアの間に入り込む。
「主にカチャ。これ以上は言えない。ほらセレニア帰るよ。」
「ええ、もったいぶらないで教えてよ。」
それでも、諦めないパイモン。旅人もさすがにそれ以上は聞いてはだめと思い、パイモンに注意しようとした。その時、旅人を通りすがり、
「だめだ。」
「ごめんね、パイモンちゃん。フリーナ様との契約だし。」
パイモンに話しかけた。
「そうですよ、そこのお嬢さん。あまり精霊様を虐めちゃだめですよ。」
パイモンは振り返りとそこにはマジシャンがいた。
黒と赤の洗練されたマジシャンスタイルを身に纏い、白いシャツの上に黒いベストと赤紫のアクセントが付いたロングコートを着用し、大きなトップハットにはカードが飾られており、動きやすさとエレガンスが際立つ服装だ。
よくイメージするマジシャンの典型的な服装だ。
「あなたは?」
「僕の名はリネ、知らないマジシャンです。」
▲■▲■▲■▲
純水精霊と別れた旅人とパイモンは、出会ったばかりのマジシャンの少年リネと交流をする。
話がうまいせいで直ぐに仲が良くなり、フォンテーヌに纏わる話、特にフリーナのことについてそこらの通行人よりも有意義な情報を手に入れることに成功する。
「なるほど、フリーナ様に会いたいですか。」
最後に水神と会う方法を聞くと。
「そうなんだ。ねえ、リネ。どうすれば、水神に会えるんだ。」
「以前ならともかく、現在のフリーナ様は予言の対策で無理じゃないのかな。でも民の交流は続けているし、歌劇場に行けば案外なんとかなるかもよ。」
「予言?」
「まあ今のキミたちには関係ないか。」
「わかった。歌劇場に行けばいいんだよね、よかったら案内してくれないか。」
「いいよ、ちょうど僕も歌劇場に行くつもりだったんだ。ついてきて。」
▲■▲■▲■▲
ロマリタイムハーバーの海岸エレベーターに乗るその時。リネは立ち止まる。
彼に止まった理由を聞こうとしたその瞬間、全身の毛穴から寒気が出てくる。
「君たち、フリーナ様に会いたいと言っていたけど。どうやら、あちらから二人を出迎えに来てくれたみたいだよ。」
リネに冷や汗が流れ始め、やっと、旅人とパイモンは海岸エレベーターの入り口を見つめる。
入口から大勢の兵士と多くの純水精霊たちが隊列して並ぶ。
人と精霊が共同で軍隊敬礼をすると、海上エレベーターから派手な装飾が施されたステージ衣装を身にまとい、太ももを大胆に露出した派手なスパッツを着た女性が現れる。
彼女の一挙手一投足に皆の視線が集まる。物珍しさや尊敬の眼差しが注がれる中、旅人は違う理由で目を離さない。
スカラマシュ、淑女、公子。ファデュイの面々と今まで戦ってきた龍とは明らかに別格の存在。
全身から恐怖のサインが出され、雷電将軍とは別の次元が違う存在感を出している。
その時、感じたのはベールにつづまれた感覚と恐怖は僅か一瞬で消えたことだった。
「富める者も貧しき者も、グロシを持つ者も持たざる者も、杯を掲げよう!グロシが無い者は代わりに腕を。」
『グロシって何。』
『新しいトレンド用語か。』
「ふふん。」
『い、言い間違えたすごく恥ずかしい。グロシって何。僕は何を言っているのだ。』
言い間違えたことでフリーナは戸惑いながら話を続ける。
「ご、ごほん。諸君らの見ての通り、見知らぬ旅人が我らの国を訪れた。さあ、彼らに祝福を!遠路はるばるやってきた旅人とその仲間のために、祝杯をあげようじゃないか!」
「あなたが水神フリーナ?」
『さっきとは全然雰囲気が違う。あの全てを見透かすような雰囲気はいったい』
「神の名をそう簡単に口にするとは、だが、許そう。キミたちはいくつもの国を荒してきたことはすでに聞いている。それでも歓迎しよう。いや、それどころかこの僕、水神フリーナが直々に会いにきたのだ。」
手に水元素を出し、空中に素敵な絵を披露するフリーナ。フォンテーヌの水中生物など様々なかわいい絵を披露し、その幻想的な世界にフォンテーヌ人は魅入られる。
芸術の国とも呼べるフォンテーヌに住む人さえも魅了するパフォーマンス、規模は他の神に劣っても水元素を巧みに操れる力は常人ではまねできない。
「大丈夫。恐れなど、小さきものが抱く本能だ。キミたちのことはアルカイルからよく聞いているよ。そんなに警戒しなくてもいい。」
幻想的な絵はやがて美しい花火となり、旅人を歓迎する。
「ようこそ、フォンテーヌへ。キミたちの旅の価値と意義をこの魔神フォカロルスが認めよう。さあ、思う存分、喝采を叫ぶがいい。」
「オイラ、まだ、状況がわかっていないぞ。」
「何かがおかしい。」
「それに、この水神。『前置き』がちょっと、それに、なんだか『大袈裟』っていうか。」
「こんなところでフリーナ様に出会うなんてめずらしい。」
「いつもはパレ・メルモニア最上階にいるんじゃなかったのか。」
「わざわざ、降りてきて歓迎するなんて。」
「おい、あいつら異郷から訪れる金髪の旅人じゃないのか。」
「どおりでフリーナ様が直々に出向くわけだ。行く先々の国を滅茶苦茶にして指名手配されたあの伝説の。」
「フハハハハハ。岩王帝君の暗殺。稲妻で反乱勢力に息を吹き込み、意図的な戦火の拡大。スメールでの国家転覆。至る所で指名手配されるお騒がせ野郎。ここまでの悪ネタが揃うなんて最早才能だよ、キミ。」
全て、事実のことだが、聞けば聞くほど自分がやってきたことの重大さがよくわかってくる。
「最後にもう1つ。アビス教団の指導者の双子の妹。」
「……。」
「な、何を言ったんだ。フリーナ様は」
「フリーナ様、最後何を言いましたのか」
「聞こえなかったよな。」
「何が言いたいの?」
高まる元素力。周辺一帯の水が一斉に停止する。
滝も波の音も一斉に。
全身を震え上がる恐怖はここに。
「キミに興味があっただけだよ。僕いや、俺と一緒に来てもらおう。第五降臨者。」
水が万物に変化する。
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