【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
パレ・メルモニア。
フォンテーヌ廷の最も高い処に位置する建物である。
空気差による耳鳴りとフォンテーヌ邸を見渡せるほどの絶景を耳と目が感じ取れる部屋の中。
フリーナ、旅人、パイモンはお菓子が用意された。
丸い円卓と豪華な椅子に座った。
「そんな、緊張しなくてもいい。肩の力を抜き、お茶と茶菓子もある、好きに食べてもかまわん。我が国、フォンテーヌの特産品だ。味は保障する。」
紅茶を一口飲み、旅人はお茶や茶菓子にも手を付けず、フリーナを見つめていた。
別に毒があるわけではない。この神はその気になれば自分たちを羽虫のように潰せる彼女にそんな小細工などは不要である。
食欲の権化であるパイモンですら食に手をついていないのは、単純にこの神に警戒心を抱いているからだ。
「なんでオイラたちをこんなところに連れてきたのだ。まだ、何も悪いことをしていないのに。」
「まるで、これから悪さをするような言い方だね。」
「ムキィ!!こいつ、めっちゃくちゃムカつく。」
「どうして、私たちをここに連れてきたの。」
言いたいことはパイモンが全て言ってくれたおかげで、短いセリフで済んだ。
「簡単な話だ。キミたちに絶対ここへ来てほしかったのよ。キミは自分の価値を知らなさすぎる。もう少し、警戒心を持ったほうがいいよ。ねえ、星の外側からきた異邦人。」
「私が降臨者だからか。」
「そうだ。やっと理解したか、うれしいよ。」
フリーナは紅茶を飲み干し、旅人は言う。
「私の…」
「兄のことだろう。もちろん、知っているさ」
「!!」
やはり、自分が降臨者という情報も自分とアビス教団の関係もこの神にはお見通しだろう。ならば、彼女と親交を深めることで更なる情報を入手できるだろう。
「大変だっただろう。寂しいよなぁ、なぜなら、この世界で一番大切なかけがえのない肉親を取られた気分は、さぞ苦痛だろう。」
旅人は動揺し、フリーナはカップをテーブルに置いた。
「確かに、俺はお前の兄の居場所を知っている。」
「本当に!!」
テーブルを叩き、起き上がる。
「ただし、条件がある。」
手をかざし、落ち着かせようとする。
旅人もそれに反応し、再び椅子に座る。
「簡単なことだ。私の依頼をこなし、達成した暁には君の兄が次に現れる場所を教える。」
「次に現れる場所。今いる場所じゃなくて?」
「本当は俺はキミの兄の居場所を知らない。彼ら、アビス教団は神出鬼没。俺ですら居場所の特定は不可能だ。だが、次にやつらの現れる場所は予想できている。依頼を達成したらその情報をくれてやろう。」
「依頼は?」
「交渉成立だな。もちろん、依頼達成するための資金や武器のサポートをしよう。ついてこい。」
▲■▲■▲■▲
パレ・メルモニアのエレベーターの中。
海岸エレベーターと同じ仕組みで動き、フォンテーヌ特有のエネルギーを原動力として画期的なシステム。
本来、人力で下る必要があった建物は、機械の力を使ったエレベーターだと僅か数分で目的の階にたどり着くことができた。
「フォンテーヌの予言は知っているか。」
「予言?」
巷では話題にあふれかえている予言。
この国について間もないごろから予言に関することで耳にタコができるほど聞いたが、肝心な内容までは知らない。
「あの少年から何も聞いてなかったのか、まあいい、フォンテーヌ人は生まれながらにして原罪を背負っている。そのせいで、フォンテーヌ人はやがて水の中に溶ける運命っていう話だ。」
「それって本当か?」
人は水に溶ける。そんなことは可能であるか、いや、フォンテーヌ人ということはフォンテーヌ人の体質のせいなのか。
「さあなぁ、俺は二代目だからな。先代は予言だけを私に託し、死んでしまった。以降、度重なる海面上昇によって陸を失い続けた結果。予言の信憑性が増し、無視できない規模になった。」
「それって依頼というのは?」
落下の重力が消え去り、扉が開くと目の前には外の世界とは比べ物にならないほど精密な機械群が広がっていた。中心には巨大なモニターがそびえ立ち、見たこともない機械や測定器が並んでいる。
キーボードや装置は、まるで外の世界とは隔絶された別次元のようだ。
「別に予言を食い止めろと無理難題を言っているわけではない。海面上昇などは俺の権能で何とかなる。問題は予言とは別に現在進行形でフォンテーヌに起きていることだ。」
「フリーナにも解決できない問題をオイラたちで解決するのか?」
「そうだ。そうでなければ君たちに依頼をするわけないだろう。今から丁度一年前、フォンテーヌの海面上昇と共に突如として現れた魔物がいた。」
モニターをつけて、その魔物の見た目を公開した。白色の四足歩行の魔物。生物なのか、スライムみたいな元素生命みたいな生き物だ。
今まで、多くの魔物を倒したけど、こんなフォルムの魔物は初めてだ。
「現在、多くの魔物が発見されている中で最も強度の高い骨格と生物学では説明つかない異質な姿。我が国が誇るフォンテーヌ科学院でさえ未発見の生物だった。度重なる研究のすえ、俺たちはこいつらのことを崩壊獣という名称で呼んだ。あのとき、フォンテーヌ中が総力を挙げ対処し無事に討伐した。幸い、人的被害は少なかったのが救いだ。」
「討伐できたなら、なんでオイラ達が必要なんだ?」
少なくとも、フリーナは旅人の何十倍も強い。わざわざ、旅人に依頼する意味はあるのか。
「俺が強いか弱いかという話ではない。問題はこいつらが消滅する際に発生するこの崩壊エネルギーはこの世に存在しない物質、そして、概念。この俺ですら浄化できないものだ。さらに厄介なのは、崩壊エネルギーは蓄積するとまた、新たな崩壊獣が現れる」
モニターには崩壊エネルギーから新たな崩壊獣の誕生を映し出された。
亀裂みたいなところから誕生した彼らは確かに厄介な存在だ。
フリーナは見つめていたモニターから後ろに待機した私のほうへ振り向いた。
「テイワットは元々、外部から来たものには滅法弱い。何てことのない知識が、禁忌の知識になったみたいに神ですら浄化できない猛毒となった。だが、キミは違う。旅人、キミにはこの未知のエネルギーを浄化することができる。風魔龍の猛毒を浄化したように、キミは神すらできないことを可能とする。俺はフォンテーヌを救うため、キミは兄と再会するため。俺たちは手を取り合うことにメリットはあるさ。」
利害の一致。フリーナの存在は最早、無視できないところまで切った。ここで、取り合わなかったら兄の真実から遠ざかるだろう。
「わかった。」
私は手を伸ばし、フリーナも手を伸ばした。
手を握りあい、握手した
「契約をしよう。フォンテーヌを救われた暁には君の望みを叶えよう。」
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