【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
ホテル・ドゥボール。
ナルポンヌエリアに建てられたフォンテーヌ内で最も有名な高級ホテル。
国内の貴族はもちろん、外国の要人。
さらに、最高権力者フリーナすら泊まった。
伝説を誇る。
芸術は美食の最高の調味料と謳い。
各界からの芸術家を招待し、この丁寧に設計された室内空間を活用して客を楽しめる。
旅人とパイモンは一階のテーブル席。
入口から左側に位置し、旅人は壁側、パイモンは旅人の反対側の椅子に座った。
「大丈夫か。旅人。」
パイモンは旅人を心配する。
昨日、水神フリーナとの模擬戦で怪我をして骨を二、三本を骨折してしまったからだ。
「大丈夫。手加減してくれたから。ほら、かすり傷もほとんど治ったし。」
「いや、おかしいだろう。部屋全体がひび割れていたし、
壁に激突して骨の二、三本折れていたよ。何で治るのよ。」
気絶した旅人は病室を運ばれた。
だが、その一時間で起きて、体の傷。
さらに、骨までもが治ってしまった。
フリーナも治癒しようとしたが、
ほとんど治ってしまったため、旅人は軽い身体検査をしてもらった。
「うん。多分、神の目のおかげかな。」
「律者コアのことか。確かに、すごいよな。全属性も使える上に、威力も上がったし。」
律者コア。
フリーナからもらった人工的な神の目。
ファデュイの邪眼とは別の技術で作られた神の目。
邪眼と違い。
身体的な負担はないと聞いたが、
果たして、どこまで信じていいのか。
パイモンは迷っている。
「それに、自動で回復もしてくれる。
フォンテーヌの科学力は私の想像以上かもしれない。」
「でも、邪眼のように老化しないか。」
「使った感じ、そんなことはない。
むしろ、体が軽い気がする。
フリーナも違和感があったら使うことを控えるように言われている。」
「でも、やはり使わないべきだ。
哲平のように、知らず知らずのうちに寿命を削ってしまったら。」
万が一のため。
パイモンは旅人に警告する。
「大丈夫。私、最強だから。
なんで」
パイモンを落ち着かせるために旅人は軽いジョークを言う。
「あら、ずいぶんと面白い。
ジョークだね。」
パイモンは声を向く方へ向く、
その向きは丁度、パイモンたちが入ってきた入り口のところだった。
明るい金髪と青い瞳。優雅で貴族風の服装。
黒と白を基調としたドレスを着こなす女性。
「あなたたちは。」
「失礼、まずは、自己紹介からだよね。あたしはナヴィア。
紛争の仲裁、保護の提供、難題の解決。どんなこともそつなくこなす。
何でもござれの民間組織―――
次期会長ナヴィア。こちらは従者のシルヴァとマルシラックだ。」
「侍従のシルヴァだ。よろしく頼む。」
「私はマルシラック、お会い出来て光栄です。
お噂は兼ねて存じております。金髪の英雄殿」
「君たちはフリーナが言っていた助っ人か。」
「そうよ。立っているのも何だし。
座ってもいいか。」
▲▲▲▲
「足が癒される。」
お茶を頼み、それを堪能する。
「急にフリーナ様に呼び出されてさ。
おかげで、ポアソン町からこっちまで来る羽目になったんだ。」
「ナヴィアも大変だな。
オイラたちもフォンテーヌについて早々、フリーナに連れて行かれたんだぜ。」
「あんたたちも苦労しているわね。
彼女、やることはいつも説明も過程もなく、
強引で勝手に決めるから。あたしたちはいつも困っているのよ。」
「あいつ、いつもあんな感じなのか。」
「いや、いつもはそんな感じ、じゃないのよ。」
「え!」
「そうなの。」
旅人とパイモンは驚いた。
「いつものフリーナ様は何で言うか。
お調子者というか、ポンコツじみた感じというか。
そうね、マスコットみたいな感じ。」
「嘘だ。」
「演技じゃないのか」
港でのフリーナの評判とよく似ているが、
旅人とパイモンは彼女の人物像と似ても似つかない。
おそらくは、情報操作によるものだと、
旅人は思ったのだ。
「演技と言ってもね。様々なタイプがあるのよ。
演技派、導入派。
でもね、フリーナのいつも、子供ぽい性格をしている。
まるで、本物のように。
そして、裏の顔も同じ。どれか、本物か偽物かわからない。逆に恐ろしいと思わない。」
「両方、あり得る。という線は。」
「それ、面白いね。
新聞社に持ち込めばいいネタになるじゃない。」
お茶を飲み干し、カップを机に置いた。
ナヴィアたちが持ってきたマカロニもあっという間に消えた。
「それじゃあ、仕事の話と行こう。」
待ってました。
と言わんばかりにパイモンはナヴィアに質問した。
「なあ、ナヴィア。崩壊獣とは何だ。
フリーナに討伐しろと言われたけど結局何なんだ。」
「そうね。一年前、フォンテーヌに現れた正体不明の魔物。
並みの兵器では歯が立たず、フリーナ様のおかげで倒した。
ほら、これがその時の新聞。」
ナヴィアは新聞を
旅人とパイモンが見やすいようにテーブルの中央に置いた。
「この新聞。モンドで見たことがあるぞ。」
「本当だ。」
「幸い、人的被害は出てきていないけど、インフラ整備に対する被害は甚大でね。
ポアソン町も大分やられてしまったからな。」
「それって、フリーナの依頼を受け入れたのか。」
「違う。私のパパとママはフリーナ様によって救われたから。
彼女からの要請には逆らうことができないの。」
そのとき、後ろに控えたマルシラックは
ナヴィアの耳に小声で言った。
「お嬢様、
それではまるで、脅迫したように聞こえますよ。」
「わかっているよ。」
マルシラックは再びお茶を注ぎ、
旅人とパイモンの分も注ぎ直した。
「あたしのママはあたしを出産するときにフリーナ様に救われ、
パパも不治の病を治してくれたフリーナ様にとても感謝している。
だから、あたしもフリーナ様にとても感謝している。
だって、世界で一番大好きなパパとママを救ってくれたから。
そこは、間違っていないはず。でも、……」
「ああ――、オイラ、マカロニが食べたいな。」
「私も。」
「え?」
「は!、すぐにお持ちします。」
マルシラックとシルヴァがマカロニをお持ちした。
「わあ、マカロニだ。オイラうれしい。」
「おいしい、おいしい」
旅人とパイモンはマカロニを食いつくす。
山のように置かれたマカロニをわずかな時間で食い尽くした。
お茶を一気飲みをしたパイモンはナヴィアに言った。
「そんなにつらく言うなよ。」
「そう、別に全部言う必要はない。
ナヴィアが言いたいときに言えばいい。
私たちは待っているから。」
「あんたたち……そうね。
じゃあ、相棒!!」
テーブルを叩き。
「いきなり、相棒!?」
「今からあんたたちに見せたいものがある。ついてきて。」
旅人の手を取り、ホテルの外に行く。
「お会計はお任せください。お嬢様」
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