【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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第二話 初ステージ

俺の前世。

 なんで、聞いてくるの?

 

 え、気になる。うん……。

 

 まあ、一言で言えば愚かな男かな。

 

 希望もなく、知恵もなく、大事なものを1つも守れないちっぽけな男さ。

 聞いてもつまらないよ

 

 ■▲▲▲▲■

 

 皆に質問をしよう。

 神さまになったら何がしたい?

 

 

 

 

 

 

 前世で嫌いなやつをぶっ飛ばしたい?

 それとも、死んだ恋人を蘇らせたい?

 

 

 

 

 

 おっと、別に痛い話ではない。

 ただ、参考にしたいだけだ。

 だって、神になってしまってやることがないからだ。

 

 

 

 

 

 いきなり話ぶっ飛んだな。

 落ち着け、簡単に経緯を説明するね。

 

 俺は神様転生した。

 いや、違う神様(に)転生したというべきか。

 

 神様転生とは転生ものの類型の1つで。

 物語の冒頭で死亡した(あるいはこれから死亡する)主人公に対し、

 神やそれに類する力を持った超自然的存在が接触・関与して転生させるパターンを指す。

 

 神自身が転生して現世の存在になる話、

 神の関与無しに主人公自身が神になる話はまた別の区分なので注意。

 

 俺は後者で神の関与無しに神になった。

 生まれながらにしての魔神である。

 

 一応、誕生の経緯に(エゲリア)が関わっているとはいえ、

 母の意思とは無関係に神として生まれたから神様転生とは言えない。

 

 母にも不思議に思われたが生憎俺にもわからない。

 

 

 人間が偉業を果たし、神への昇華した神話なら

 世界各地に点在していたが。

 俺自身、前世でそこまで偉大な人間ではない。

 

 

 ただの人間だ。

 

 とは言え、神になったからなんだという話だ。

 

 神になったら傍若無人に振る舞う。

 それとも、世界を支配する?

 残念ながら、当時の俺にはそんな願望はなかった。

 

 死者蘇生が可能でも、すでに失った命が戻るわけもない。

 元の世界に戻れない。

 もう二度と故郷に戻れない。

 

 毎日、無気力に親しみながらも興味本位で神の力を高める日々、

 鍛錬する時だけが、この虚しさを和らぐ唯一の手段だから。

 

 それに、神になるのも悪くない。

 何者にも侵されない、何者にも奪われない。

 神を演じた時だけ、不思議と満足感と優越感を得られた。

 

 それでも、この虚しさは消えなかった。

 

 でも、良いこともあった。

 俺に妹ができたことだ。

 

 とてもかわいい。

 同じ顔なのに何故か、愛らしいと感じてしまう。

 

 わからないものを教えたし、

 色んなものを見せてあげた。

 

 だか、未だ、人間の存在を教えたときのことは心底後悔している。

 

 

 

 

 ▲■▲■▲■▲

 

 

「審判、それは、楽しみだね。」

 

鏡の前に立ち、独り言を言う。

 

 水色の中性的な容姿の美少女。

 青色のステージ衣装と太ももを大きく露出する大胆なスパッツ。

 

 かわいくも保護欲が湧いてくる愛らしい姿。

 

 その名はフリーナ。

 フォカロルスが内包し出来たばかりの人としての人格。

 

 精神年齢が文字通りゼロ歳の彼女に今、国の命運が押しかかろうとする。

 

「否、そんなものはない。

 あれは、君を救うものではなく、君を断罪する裁判。

 少なくとも喜び待ちわびるものではない。」

 

「わあ!だっ誰。」

 

 鏡の自分が消え、

 突如、声が聞こえた自身の後ろに振り返ったとき、

 そこには、誰もいなかった。

 

「え」

 

「ここだ。」

 

「!」

 

 下を向いたとき。

 今まで、気付かなかったことに気が付いた。

 

 地面が濡れ、床一帯が水浸しになった。

 最初からこの部屋にいた。

否、たった今生まれたからこそこの事態に気付かなかったのだ。

 

「うわ!」

 

 驚き、水による摩擦力の低下により、

 滑って転んでしまった。

 

 硬い床にぶつかった。

 その前に。

 

「気をつけろ。元神とは言え、今は人の身だ。」

 

 床の水が変形し、丸まってスライムのように変形し

 フリーナを支えた。

 

「キ、キミは」

 

「俺、俺の名はポセイドン。

 君のアシスタントだ。」

 

 

 ▲◆▲◆

 

 エピクレシス歌劇場、通称歌劇場。

 

 

 先月、フォカロルスの名により完成したばかりのフリーナのステージ。

 

 エリニュス島にあるフォンテーヌの主要裁判所として設計されたオペラハウスであり。

 今後、裁判のほか、マジックショーなど、さまざまな公演が行われている予定だ。

 

 『枢律庭がすでに君を水神として認めた。

 別に心配しなくていい。』

 

『いや、ただ、緊張して。』

 

『安心しろ。エリナス討伐という実績があれば、

 誰も君を認める。』

 

 数年前、フォンテーヌを襲った。

 漆黒の厄災、巨獣エリナス。

 

 山のような巨大と猛毒を吐き、

 悪意もなくただ、そこにいるだけで災害を放つ。

 生きる災害。

 

 フォカロルスもとい、

 ポセイドンがそれを、討伐し麓にある山もろとも手に持つオリジナルの武器

暴れる海洋(トライデント)で貫いた。

 

 だけど、死体から漏れ出す瘴気と猛毒により、

 フォンテーヌの水が汚染する事態となる。

 

 ポセイドンは暴れる海洋(トライデント)でエリナスの死体を貫いたまま、

 槍が持つ権能でフォンテーヌの水を浄化した。

 

 これを機に、ポセイドンもといフォカロルスの名は

 今やフォンテーヌ中に知れ渡る。

 

 注目されるのが嫌だという理由でフォカロルスの功績にしたが、

 まさか、ここで役に立つとは当時のポセイドンも思わなかっただろう。

 

『それは、ポセイドンがやったものでしょう。』

 

『俺は名誉なんて興味ない。

 使えるものなら使うまで。

 さあ、もうすぐ、演説だ。

 予定とおりにいこう。』

 

 功績もある、力もある。

 後はそれを使ってどこまで信用させるかはフリーナの技量次第だ。

 

『いいか、自然な感じではなく、

神らしくヒステリックな演説をするように』

 

 事前の打ち合わせで改良に重ねた演説。

 これくらいの試練を突破しなければ到底フォンテーヌを救うことはできない。

 

 「あれが、俺たちの新しい神か」

 

 「大丈夫なのかあんな、おどおどして」

 

 「頼りなさそう。」

 

 「確か、エリナス討伐に貢献したけ。

 そうみえない。」

 

 「ぜってい。嘘だ。」

 

 歌劇場の演説台に行くまで、様々な声を聴くか、

 共通するものは疑心、それと不安だ。

 

 この先、エゲリアなしで行けるのか。

 新しい神は本当に大丈夫だろうか。

 

 積み重ねた日常と信仰した神の失墜。

 当たり前の世界が一気にひっくり返したことによる無気力。

 

 そんなものが一気にフリーナに押しかかった。

 

「紳士淑女とも。

 こんにちは僕こそ新たな水神。魔神フォカロルス。

 堅苦しいのは嫌なのでぜひ、フリーナ様とお呼びください。」

 

『なんか、物凄く偉そうなんだが』

 

『偉そうじゃない。偉いのよ。謙虚になると逆に非効果的だ。』

 

「さて、諸君。

君たちに質問しよう。」

 

 今は神。

 傲慢不遜の神。

 

 誰にも侵されず、誰にも奪われない。

 絶対的な存在。

 

 海の無慈悲な存在だけど、慈愛の存在。

 それを、演じる。

 

 フリーナの一挙一動が観客たちは目が離せない。

 

「僕はここに来る以前に疑問を持った。

 ある日、弱々しい人形が突如としてここ、フォンテーヌの歌劇場の主と主張し、

 フォンテーヌ人は従うのか。

 ここに来るまでいろいろなことを考えた。

 普通のフォンテーヌ人の少女の演説して後からどんでん返し、

 あるいは神演説をして皆を従わせる案も考えたが。

 それを、やめにした。

 そこのキミ。」

 

 「はっはい。」

 

 「人と神との違いはなんだ」

 

 「えっと、圧倒的な力」

 

 「そうだ。ならば問おう。

 人と神の最たる違いは何だ。」

 

 観客たちは騒く、

 人知超える能力、圧倒的な元素力。

 

 でも、全員一致した答えが出た。

 

 「そうだ。権能。

 神が神であるための最たる力。

 それが、権能だ。

 これが、人と神の最大の違い。

 見せてみよう。これが、僕、水神フォカロルスの力」

 

 フリーナに纏う圧倒的な元素力は現在世に解き放った。

 

 その瞬間、世界が変わった。

 

 圧倒的な元素力。

 それが、フォンテーヌ中に降り注ぐ。

 

 なんてこともない。

 他の元素と比べ、傷の治療に長けている水元素が空中に解き放ったのだ。

 

 しかし、その効果は絶大だった。

 

 民の傷を癒え、微かに残っていた毒素を浄化し、

 それを、フォンテーヌという国家単位で軽々と実行して見せた。

 

 事実、効果も出ており、

 歌劇場にいる観客もその効果を実感した。

 

 「これは、」

 

「仕事中にできた傷が。」

 

「肩こりが治った。」

 

「虫歯が治っている。なんてことだ。」

 

 各自適切な治療法をする技量。

 まさに、神業。

 

 このとき、フォンテーヌ人の心は完全にフリーナに奪われた。

 

「さあ、我が民よ。

 改めて自己紹介をしよう。

 我が名は魔神フォカロルス。水と正義の神。

 我が権能と諭示裁定カーディナルさえ持っていれば、

 この世のあらゆるもの、この世の神々さえも断罪できよう。」

 

 

「「「「「「おおおおおおおお」」」」」」

 

 

 盛大な拍手と共にフリーナの初ステージ(演説)が終了した。

 

 




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