【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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新 第二十三話 異変

フリーナの事務室には静かな緊張感が漂っていた。

 

ヌヴィレットが扉を開けると、目の前には厳粛で豪奢な装飾が施された部屋の中央に、

フリーナが立っていた。

 

「フリーナ」

 

ヌヴィレットがその名を呼ぶ。

 

彼は百年前、フォンテーヌの歴史に名を残した偉大な芸術家たちが創り上げた、

黄金の扉をそっと閉じた。部屋の中には、夜の静寂が静かに流れていた。

 

フリーナは軽く微笑んで言った。

 

「随分と遅くに来たな、ヌヴィレット。」

 

「私の到着を予測できたということは、

すでに事件の全貌は把握しているのだろう。」

 

「そうだ」

 

フリーナは簡潔に答えた。

 

「諭示裁定カーディナルが、タルタリヤ殿を有罪と判定した。しかし、その判決は法の支配に基づいていない。法の下で誰もが平等であるべきだ。たとえ彼がファデュイの執行官であっても」

 

ヌヴィレットは続けて言った。

 

フリーナは眉をひそめ、冷静に言葉を返した。

 

「彼はかつて璃月を壊滅寸前にまで追い詰めた。あの経歴を見れば、

これで全て片付けるのが妥当だ。」

 

ヌヴィレットは再び反論しようとしたが、フリーナが静かに制した。

 

「くどいぞ、ヌヴィレット。君は法を変えることはできるが、

法そのものを変えることはできない。カーディナルの最終判決は、

最高審判官の私でさえも覆せない。これで話は終わりだ。」

 

そう言い切ると、フリーナは立ち上がり、部屋を出た。

 

廊下を歩きながら、彼女は低くつぶやいた。

 

「ファデュイとはいえ、彼に全く罪がないわけではない。

しかし、フォカロルス、やり方が少々強引すぎるぞ。」

 

▲■▲■

 

ヌヴィレットは一人、フリーナの事務室に残されていた。

やがて彼は立ち上がり、自分の事務室へ向かうためエレベーターに乗った。

 

彼の心には疑問が渦巻いていた。

 

「フリーナはなぜ、あのような言い方をしたのだ?以前の彼女なら、

外交関係も考慮して行動していたはずなのに、今はそれがない。」

 

そんな彼の思索に反して、エレベーターは静かに目的の階に到着し、扉が開いた。

そこには旅人とパイモンが立っていた。

 

「こんにちは!」とパイモンが元気よく挨拶する。

 

 

ヌヴィレットは一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻し、

エレベーターを降りて二人に道を譲った。

旅人とパイモンがエレベーターの扉を閉めようとしたその瞬間、

ヌヴィレットはボタンを押してエレベーターを止めた。

 

「君たち」と、ヌヴィレットが声をかける。

 

「ひぃっ!」とパイモンが驚いた声を上げた。

 

旅人が落ち着いて尋ねた。「どうしましたか?」

 

「少し、時間をもらいたいのだ」

 

ヌヴィレットは申し訳なさそうに答えた。

 

▲■▲■

 

ヌヴィレットの事務室は、フリーナのそれとは対照的だった。

景色を楽しむ余裕はなく、過去の事件に関する膨大な資料が積み上げられていた。

彼は旅人とパイモンを招き入れ、共にお茶を楽しんだ。

 

「緊張しなくてもいい。遠慮せずに食べてくれ」と、ヌヴィレットはテーブルに並んだ菓子を勧めた。

 

旅人はそれを見つめながら、内心で思った。

 

『フリーナが出してくれた菓子に似ている…』

 

「なんで、オイラたちを呼んだの?」とパイモンが不思議そうに尋ねた。

 

「今朝の新聞を読んだか?スネージナヤの執行官が逮捕されたことだ」とヌヴィレットが説明を始めた。

 

「もちろん知っているぞ!タルタリヤが逮捕されたんだろう?あいつ、フォンテーヌでも何かやらかしたのか?」とパイモンが興奮気味に返す。

 

「いや、今回の事件にタルタリヤは無関係だということが証明された」とヌヴィレットは淡々と答えた。

 

「えっ!?」とパイモンは驚き、旅人も少し眉をひそめた。

 

「つまり、冤罪だということか?」と旅人が確認する。

 

「実質的には冤罪だろう。裁判と検証の結果、タルタリヤにはアリバイがあり、犯行が不可能だと結論付けられた。しかし、最終的には有罪とされた」とヌヴィレットは冷静に語った。

 

「それじゃあ、なんで有罪にしたんだ?判決はヌヴィレットが出すんじゃないのか?」とパイモンは不満げに問い詰める。

 

「厳密に言えば、私は裁判を進め、判決をカーディナルに伝える役割だ。最終判決は彼らが下すもので、たとえ私の判断と異なっても、その決定に従わなければならないのだ」とヌヴィレットは苦々しげに説明した。

 

「それじゃ、冤罪し放題じゃないか!」とパイモンが憤った。

 

「フリーナが作った法なんだろう?彼女に問い詰めればいいじゃないか」と旅人が提案した。

 

ヌヴィレットは小さく息をついて答えた。「私もそうしたが、彼女はうまくはぐらかした。君たちが彼女と親しいなら、何か理由を聞き出せるかもしれない。」

 

旅人は少し考えた後、頷いた。

 

「わかった。やってみる。」

 

▲■▲■

 

その頃、遠く離れた場所で、ポセイドンが薄く微笑みながら呟いていた。

「さて、もうそろそろかな」




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