【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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新 第二十九話 悪い

朝の光がポアソン町を照らす中、上空に神々しい姿が浮かんでいた。

 

 その女神――フリーナは、ゆっくりと地上に降り立った。

 彼女の足元には、旅人が意識を失った少女を抱えて近づいてきた。

 

「フリーナ。なんでお前がここにいるんだ?」

 パイモンが不安げに問いかける。

 

「俺はフォンテーヌの神だ。民を守るのは当然だろう」

 フリーナは毅然とした声で答えた。

 

「そうじゃなくて、どうしてここにいるのかって聞いてるんだ!」

 パイモンが少し苛立った声で返す。

 

「危機を察知して急行したんだ。ポアソン町で異常な地殻変動と

 異質な水元素の力を感じたからだ。」

 

 フリーナは冷静に語る。

 「ここは危険だ。まずは上で話そう。」

 

 ▲◆▲◆

 

フリーナの目は町全体を見渡す。

 そこには、水に流されて壊れた家々と、避難する住民たちの姿があった。

 

 その光景に、彼女は旅人とパイモンと同じく胸を痛めているように見えた。

 

町を抜けて地上へと避難した後、朝日が差し込む空の下で、

 ポアソン町の住民たちが傷つきながらも命をつなぎ止めていた。

 

 フリーナは彼らに向けて蒼いオーラを放つと、まるで奇跡のようにその場で傷が癒えていく。

 血は止まり、折れた骨も元通りになっていった。

 

「そんな簡単に治療しちゃうなんて!」

 パイモンが驚く。

 

「バーバラでもこんなに早くは無理だろうに…」

 旅人も同調する。

 

「水は生命に最も近い元素だからね。

 その頂点に立つ俺には、死者蘇生以外のすべての病や怪我を癒す力がある」

 フリーナは微笑みながら説明する。

 

疑念を抱く旅人とパイモンに、フリーナは少し近づいた。

 「フォンテーヌの各病院には、俺の力を帯びた聖遺物が保管されている。

 それで多少の難病なら治せるんだ。」

 

「お前、そんなにすごいやつだったのか…」

 パイモンは感心しながらつぶやいた。

 

「だか、力には限りがあるから、

 緊急治療にしか使えないという法律が制定されている」

 フリーナは付け加える。

 

その時、ナヴィアが近づいてきた。

 「フリーナ様、ありがとうございます。おかげでポアソン町は救われました。」

 

フリーナは静かに答えた。

 「それが義務だからな。犠牲者はどれくらいだ?」

 

ナヴィアはためらいながらも、「五人です」と答える。

 

フリーナは無言のまま頷いた。

 

「フリーナ様のせいではありません…これは」

 ナヴィアはすぐに言い添えた。

 

「無理に言うな。君は休め。カーレスがもうすぐ到着するだろう。彼も君の働きを誇りに思うさ」

 フリーナは彼女に穏やかに語りかける。

 

ナヴィアはその言葉に感謝し、後から来たマルシラックとシルヴァと共に避難テントに向かった。

 フリーナは彼女の背中をじっと見つめていた。

 

旅人は静かにフリーナに声をかけた。

 

 「フリーナ。」

 

「何か言いたそうだな、旅人。」

 フリーナは背を向けたまま、冷静に言った。

 

「これが…予言なのか?」

 旅人が思い切って尋ねる。

 

「さあ、わからん」

 フリーナは肩をすくめた。

 

「わからんって、お前水神だろう?水の神様ならあの異常な水のことくらい分かるんじゃないのか?」

 パイモンが食い下がる。

 

「俺は水の神だが、全知ではない。

 もしそうだったら、ブエルに頼らないだろう。

 本来はエゲリアが対処すべき問題だったんだが、

 だか、彼女は何も教えず、カーンレイアの厄災で命を落としてしまった」

 

 フリーナは少し憂いを含んだ声で言った。

 

「エゲリア?」

 

 パイモンが尋ねる。

 

「初代水神だ。今のキミたちには関係ないことだ」

 フリーナは話を打ち切った。

 

「こんなことがいつも起こっているのか?」

 旅人がさらに尋ねる。

 

「ああ、もうフォンテーヌ各地で同様の異常が発生している。

 今、俺が地脈を補強しているが、恐らくあと数年は持つだろう」

 フリーナは告げる。

 

「崩壊と関係があるのか?」

 

「何か言いたいことが有るみたいだな。」

 

「崩壊とフォンテーヌの予言はとても関連性が見れない。

崩壊獣が本当にフォンテーヌに危害をもたらすのなら

あなただって。」

 

 

フリーナは冷たく笑った。

 

 「崩壊の力を使うことができるだった?」

 

 その言葉に旅人は驚きを隠せなかった。

 

「アルレッキーノから聞いたのか?」

 フリーナは旅人を見つめた。

 

「どうしてそれを…?」旅人は動揺する。

 

「考えればわかることだ。彼女が俺を襲撃したからだ。

 ファデュイも崩壊の力に興味があるのも俺は知っている。

 俺も崩壊の力を扱えるが、予言への対応やフォンテーヌの統治、そして地脈の補強で忙しい。

 それで、キミを雇ったんだ」

 

 フリーナは語る。

 

「私は降臨者だからか?」

 旅人が確認するように言った。

 

「そうだ。最初から言っていたことだろう。俺はもう行く」

 

 フリーナは言い残し、歩き出した。

 

「フリーナ。最後に一つだけ聞かせてくれ」

 旅人は彼女の背中に向けて問いかける。

 

「なんだ?」とフリーナは立ち止まる。

 

「あなたは何者なの

 ?」旅人の問いに、フリーナはしばしの沈黙を保った。

 

そして静かに振り返り、答えた。

 「俺は俺だ。フォンテーヌを守る者。

 もし疑いがあるなら、遺跡に行け。そこで全てを知るだろう。」

 

 そう言い残すと、フリーナは静かにその場を立ち去った。




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