【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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第三話 スキュラ

遥か深い海の底。

天の怒りにより、深海に沈んだ帝国。

 

 深い水圧と水による浸食の中でも原形を保つ黄金の城。

 内部は静寂の楽器に包まれた神秘な作り、

 その中央に奏者、ポセイドンがいた。

 

 彼女の演奏と共に周囲では、透明な純水精霊たちが優雅に舞い、

 彼らの光が暗闇を彩りながら、星々が夜空を飾るかのように。

 

 幼く誕生したばかりの精霊たちは

 まだ、自我はなく力もない存在。

 

 それでも、精霊たちの動きは悠久のリズムを刻み、

 その光景はこの世のものとは思えないほど美しく神秘的だった。

 

 やがて、黄金の主は演奏を終え子供たちを退散させて

 外のガラスに向け、何時ぞやの友に声を交わした。

 

「やっと来たか。スキュラ。」

 

「ワシに話があるとは珍しいの。

 ポセイドン。お主が儂に一体何のようだ。

 しかも、内密に」

 

「フォンテーヌの予言は知っているか。」

 

「ああ、レムスとエゲリアは確かそんなことを言っていたな。

 どうしたの。」

 

「予言を防ぐ」

 

「……正気か。」

 

 予言を防ぐ、その対策法も教えたが、

 それでも、龍の長たるスキュラが絶句した。

 理由はただ一つ。

 それを、告げたのは神も龍をも超越した存在。

 天理だからだ。

 

「ポセイドン。貴様も摩耗にやられたのか。

 妹に影響されたとはいえ、

 こんな、戯言を吐くとは」

 

 天理自らの手でフォンテーヌを滅ぼすこと。

 それを、逆らうことは天理を敵に回すことを意味する。

 

「俺はいつだって正気だ。

 だからこそ、言っている。」

 

「尚更、たちが悪い。

 貴様も天理の恐ろしさを知らぬわけなかろう。

 なぜ、フォカロルスを止めなかった。」

 

 遥か昔、天理による天地創造の前、

 世界を支配する七つの恐怖の王。

 

 龍王たちを蹴散らし殺した存在。

 それが、天理だ。

 

 スキュラが仕えた先代水の龍王も

 天理に為す術もなく殺された。

 

 ポセイドンも天理が母と妹を人質に捉えたことで、

 天理に反抗するも返り討ちにされ天理の飼い犬になった。

 

 例え、天理を欺けても一度敵に回したら

 その後、報復に出ない保証はどこにもない。

 

「知っている!だからこそだ。

 天理に勝てないなら、戦わないようにすればいい。」

 

 「何。」

 

「天理が仕掛けても、無傷にはいられない力。

 スキュラ、それは、貴様が一番よく知っている存在だ。」

 

「まさか。」

 

「そう、龍王。それも、完全なる元素龍。

 フォカロルスが神座を壊せば、

 古龍の権能を返却し天理に対抗する力となる。

 完全な力を取り戻した龍王ならば昔はともかく今の天理では挑めば無傷にはいられない」

 

 そして、お互い。

暗黙の不可侵条約を結ぶ。

 

 天理に抗うのではなく、

 天理と同じ土台に入る。

 

 それが、フォカロルスの計画の核心。

 

 権能を取り戻した龍王という神をも超える存在。

 

 日月前事をも超える爆弾。

 天上天下唯我独尊を気取る天理とはいえど、手を出す愚行を行わないだろう。

 

「スキュラ。かつて、世界を支配していた君たちは天理の犬として従って屈辱を味わった。

 今こそ恨みを晴らすチャンスと俺は思っている。

 ヴィシャップたちも王の復活には心を踊るだろう。」

 

「いや、種の純粋さを失い。

 龍への昇格を失ったワシらに忌々しい人の形をした龍を王を認めるなど、

 人に世界の支配権を奪われたワシらにとって滑稽なものだ。

 王の復活は必ずしもワシら願いではない。

 中には不満を持つ者もおる。

 それに、その方法では……」

 

「ああ、フォカロルスの犠牲はなくては成り立たない。

 古龍の権能を司る玉座である水神の神座の破壊は必要不可欠だ。

 俺はそれを、阻止する。

 フォカロルスを生かし、そして、神座を破壊する。」

 

 攻略条件は1つ、フォカロルスを生かしたまま

 天理に気づかれず、神座を破壊すること。

 これが、唯一にして絶対の攻略条件。

 

 そもそも、フォカロルスの計画は完璧だった。

 なぜなら、フリーナの人として精神的な弱さを除けば、

 確実に神座を破壊できるからだ。

 

 それに、天理には決してばれないことも大きい。

 

 神座とは古龍から奪った権能を収納する場所。

 

 それを、破壊すると奪われた権能は返還され、

 龍王は完全な力を取り戻し天理に反抗する。

 無論、天理もそれを熟知しており。

 

 天空の島には天理が直々に鎮座している。

 

 故に、フォカロルスの犠牲を除けば

 完璧な計画だった。

 

 これを、修正しフォカロルスを救いだすのは正直言って困難を極める。

 

 まず、フォカロルスの計画は成功するかもわからない。

 そして、フォカロルスを生かして神座を破壊するのはほぼ不可能に近い。

 

 神が死ねば神座を破壊できるのは半分正解半分間違い。

 それが事実なら今頃龍王たちが黙っていない。

 七神を襲い、是か非でも権能を取り戻したいだろう。

 

 フォカロルスが言うには、神と神座は繋がっており

 多少のダメージなら神座にも共有される。

 

 

 故にカーディナルを使い、

 神とそれに連携している神座が破壊されるまで高め。

 

 神もろとも神座を処刑する。

 

 

「だめだ。思いつかない」

 

 そもそも、この計画はフォカロルスが考え抜いた結果、

 自身を犠牲にすることで初めて意味を成す計画。

 

 覆すためにはそれを、上回る犠牲が必要だ。

 

 例えば、望まぬまま神となり、死んでも別にいい存……。

 

 

「ポセイドン!」

 

「あぁ、すまないぼーっとしてた。」

 

「ワシを考えるに淵下宮で見つけた日月前事を使うのはどうだ。」

 

「それは、ダメだ。

 契約をしている以上、破れたらペナルティを受ける。

 それに、根本的な解決にはなっていない。」

 

 

 解決策を見つけぬまま、ただ時間だけが過ぎていた。

 

 ▲■▲■▲■▲

 

 スキュラと会談し、解決策も見つかぬまま平行線を辿った。

 ポセイドンはじっくりと考えるとして

 

 スキュラに黄金の城を管理を任せたのち、

 ポセイドンは肉体を捨てフリーナに憑依した。

 

 フリーナに憑依して最初の演説から一週間が過ぎた。

 

 昼間の業務が終わり。

 フリーナは誰もいない、見ていない部屋に向かう。

 

 そして、ペットの上に座り、

 ポセイドンは水をつかった分身を生み出した。

 

「大丈夫か。フリーナ」

 

「うん、大丈夫。ほとんど事務作業だし、

 ポセイドンにも手伝ってもらったから。」

 

「いくら、肉体的な疲労はないとはいえ、

 精神的な疲労はないわけなかろう。

 自分ではない自分を演じるなど天才でも困難なことだ。

 どれだけ、優秀な役者もずっと演じ続けるわけない。」

 

 そもそも、フリーナが演じている神はフォカロルスでもなければ

 ポセイドンでもない。

 

 フォンテーヌが理想としている神だ。

 

 誰も見たことない神。

 誰もが望んだ神。

 

 それが、フリーナが演じているフリーナ(水神)だ。

 

 「明日、休暇にしよう。」

 

「えぇ。」

 

 「えぇ、ではない。行くぞ。

 そうだな。気分転換に山にでも行こう。」

 

「ポセイドン。それはだめだよ。

 みんなに見られたら怪しまれる。

 せっかく、軌道に乗ったのに、このままじゃあ台無しだよ。」

 

 「役者の健康管理も心のケアも仕事の内だ。

 今後、事務作業などは全部俺と分身がやっとく。

 君は水神という役に集中していろ。

 それに、俺たちは神様なんだぜ。」

 

 神様らしく傲慢に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回投稿5/11


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モケナ、カヴァオ君、030 
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