【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
ひび割れたドームの中で、
彼女は傷だらけの状態で地面に倒れ伏していた。
意識を取り戻すと、荒れ果てた空間の中で、
かすれた声が漏れる。
「私……なんで、
こんなところで寝ているの……」
旅人は腕を使って起き上がろうとするが、
右腕に鋭い痛みが走った。
仕方なく、左手で右腕を支えながら立ち上がる。
ふと視線を上げると、そこには機械の竜が見えてきた。
かつて強大な力を誇ったその姿は、今や無残にもバラバラに分解され、
頭部はぺちゃんこになって原型を留めていなかった。
だが、機械竜のパーツは次第に動き出し、
まるで逆再生するかのように組み直されていく。
紫色のオーラが竜を包み込み、
ぺしゃんこだった頭部も元の姿に戻っていった。
冷静にその光景を見つめながら、旅人は口を開く。
「しつこい……」
機械竜は完全に再生され、再び元の威容を取り戻す。
そして、竜は咆哮を上げた。
その轟音は爆風となって彼女を襲ったが、
髪がなびく中で、旅人は冷静に機械竜を見上げた。
「もう……動けないのか」
周囲を見渡すと、砕け散った剣が視界に入った。
旅人はその愛剣をじっと見つめ、
再び機械竜の方へと目を向ける。
竜は大きく息を吸い込み、
口元にはエネルギーが圧縮され始めていた。
「……殺すつもりか?」
竜からは無言の返答が続く。
彼女はその意図を悟ったようにうなずく。
「……そうか、もう価値がないってことか」
旅人の頭に浮かんだのは、兄のことだった。
まるで走馬灯のように、過去の記憶が脳裏を駆け巡る。
彼女は兄を失った――天理によって奪われた兄を。
「お兄ちゃん……?」
目の前に浮かんだのは、赤いキューブに閉じ込められた兄の姿。
その記憶に突き動かされるように、
旅人、否、蛍は一歩、足を踏み出した。
「はあああああ!」
彼女の掛け声とともに、腰に飾られた
「神の目」が虹色に輝き出した。
▲▲
その頃、誰もいない薄暗い部屋の中、
唯一の明かりはモニターの光だけだった。
モニターには虹色の光に包まれた彼の姿が映し出されている。
それを見つめる人物が、静かに笑みを浮かべた。
「崩壊エネルギー、既定値を突破……」
▲▲
虹色の光がドーム全体を照らし始める。
機械竜はその光の源であるに向かって、
全力のブレスを放った。
しかし、風が光をかき消したかと思うと、
蛍が居たところは巨大な虹色の卵へと変わっていた。
卵が割れ、中から現れたのは天使だった。
虹色に輝く翼、頭上に輝く王冠、
そして銀河のように広がる巨大な角を持つその姿は神々しかった。
彼女の瞳は黒く染まり、
赤く輝く眼光を放っている。
機械竜はその姿に向けて咆哮を上げるが、
蛍はただ前に手を差し出すと、虹色の光を放つ。
「……!」
光は一瞬で機械竜とその背後にある壁を貫いた。
爆音とともに、ドームに巨大な穴が開き、
その光は遺跡をも貫通して夜空へと駆け抜けた。
光は流星のように走り、
蛍はボロボロになった壁と大穴をじっと見つめていた。
「アァァァァァァァァァァァ!!」
蛍は人ならざる声を上げると、空を見上げた。
翼を広げ、上空からボロボロになった機械竜に向かって咆哮する。
竜もまた彼の呼びかけに応じるかのように吼え返す。
蛍は六枚の翼を使い、竜の背後に瞬時に移動した。
音速を超えたその動きに、竜は反応できなかった。
音すらも追いつかない速さで蛍は竜の背後を取ると、
一撃で地面に叩きつけた。
竜が叩きつけられた場所からは、
土が鎖に変わり、竜をがんじがらめに拘束した。
竜は風を使って鎖を壊そうとするが、
鎖は草に覆われ、簡単には壊せない。
蛍は夜空を照らす光を指さし、王冠が天を照らす。
そしてその光を下に向けると、虹色のギロチンが機械竜に向かって放たれた。
「GOOOOOOO!」
機械竜は再び吼えるが、虹色の光がその咆哮をかき消した。
夜空は蛍が照らす。
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