【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
ヤヌスの門
水中に広がる静寂の中、門がゆっくりと開いた。
旅人とヌヴィレットは、流れる海流に従い、
その門の奥へと進んでいった。
「ヌヴィレット、ここで合っているの?」
旅人は水の中で、静かに声を発した。
「おそらく、この先にある結界を破壊できるだろう」
ヌヴィレットは答える。
彼は腕を軽く振ると、水流を操り、
迫り来る巨大な落石を粉々に砕いた。
旅人はその様子を見て、内心驚きながらも声を漏らす。
『あれだけの落石を一撃で破壊して、水流にも全く影響を与えないなんて…』
「やはり、水龍の話は本当だったんだ。」
「私にとっては、呼吸と同じくらい簡単なことだ。
もうすぐ、着くぞ。」
二人は流れに乗り続け、ついにトンネルの出口へとたどり着き、
海流から解放された。
■■
海底に沈む黄金の城
トンネルを抜けた二人の目の前には、海底にそびえる黄金の城が現れた。
長い時を経てなお、その外装は崩れず、苔に覆われることもなく、
まばゆいばかりの輝きを放っていた。
「綺麗…」
旅人は思わず呟く。
ヌヴィレットもその光景を見つめ、頷いた。
「文献にあった通りだ。これはかつてフォンテーヌで栄えた大帝国、
レムリアの残骸だろう。
伝説によれば、神王レムスが黄金の輝く船とともに建国したと言われている。
これほどまでに原型を留めているとは、驚きだ。」
「じゃあ、結界の発生源はここで間違いないの?」
旅人はヌヴィレットに確認した。
「ああ、あの城が中心となって周辺の海に渦を巻き起こしているはずだ。
私ですら突破できない渦潮を作り出す何かが、
この城にあるのかもしれない。」
▲▲
黄金の橋
二人は水中に沈む黄金の橋を泳いで渡り、城へと向かう。
道中、海底に眠る多数のヴィシャップたちが視界に入った。
「なんで、こんなにたくさんのヴィシャップがいるの?」
旅人は欠伸をしながら、
ぐったりとしているヴィシャップたちを眺め、
ヌヴィレットに尋ねた。
「私も噂でしか知らなかったが、
恐らくここは海の魔王の領域だろう。」
「海の魔王?リネたちが言っていたけど、
それって架空の存在じゃなかった?」
旅人は怪訝そうに問い返す。
ヌヴィレットは首を振る。
「いや、海の魔王は実在する魔神だ。
海の魔神フォルネウス。
今ではその存在すらほとんど知られていないが、
確かに存在していた。」
「フォルネウス…」
旅人はその名を口にする。
「だが、私も彼あるいは彼女には会ったことはない。
ただ、その名を聞いたのは私と同じ龍からだ。
フォルネウスは、天理の命を受け、多くの魔神や龍を
処刑した残虐な神だと言われている。
しかし、一方で、自身を信仰する者には慈悲深く、
居場所を失ったヴィシャップたちを保護していると聞いていた。
まさか、その場所がここだったとはな。」
▲▲
黄金の城の前
ついに、二人は黄金の城の前に立った。
城は荘厳で、その存在感に圧倒される。
「ここにフォルネウスがいるの?」
旅人は不安げに尋ねる。
ヌヴィレットは静かに首を振った。
「わからない。魔神戦争の後、ほとんどの魔神が滅び、
生き残った者たちは七神の支配を拒み、闇の外海へ逃げたと聞いている。
もしフォルネウスがいないのであれば、死んでいるか、
あるいは逃げたかもしれない。
だが、今は結界を制御する端末を見つけなければならない。」
▲▲
黄金の城の中
二人は城の中に足を踏み入れた。
ヌヴィレットは旅人のびしょ濡れになった服を乾かしながら、
城内を探索した。
「海水は入ってこないみたいだね。」
旅人が周囲を見渡しながら言った。
「何らかの結界の効果だろう。
レムリア帝国が滅んでからすでに数千年が経つが、
内部は驚くほど綺麗なままだ。」
ヌヴィレットはその美しさに目を奪われながら答えた。
そして、二人はついに城の中心にある玉座の間にたどり着いた。
上を見上げると、
そこにはフォンテーヌの水神フリーナが座っていた。
「二人とも、随分と遅かったわね。」
フリーナは微笑みながら言った。
「フリーナ…」
旅人はその姿を見て驚きの声を上げた。
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