【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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真 第三五話 神

黄金の王座に、青と白を基調としたエレガントで

貴族的な装いの女性が静かに座っていた。

 

透け感のある袖や胸元は、水のような軽やかさを漂わせ、

 

彼女の神秘的な美しさを一層引き立てている。

 

その女性こそが水の女神、フリーナであった。

 

フリーナは高い王座から二人の来訪者を見下ろした。

 

厳しいまなざしをヌヴィレットと旅人に向け、冷ややかに言い放つ。

 

「予定よりも10分遅いな、ヌヴィレット。

待ちくたびれたぞ」

 

 

旅人は思わず剣を手に取った。

 

「フリーナ。どうしてここに?」

 

その行動を止めるように、ヌヴィレットが旅人の前に手を伸ばした。

 

「待て、旅人」

 

一瞬の静寂の後、ヌヴィレットは口を開いた。

 

「フリーナ、少し質問してもいいだろうか」

 

フリーナは挑むように顎を引き、

 

「なんだ?」と応じる。

 

「最近、フォンテーヌを襲った災厄の原因は、君なのか?」

 

ヌヴィレットは静かに問いかけた。

 

フリーナは眉をひそめ、皮肉めいた笑みを浮かべた。

 

「キミもファデュイの執行官にそそのかされているのか?

俺がやった証拠はあるのか」

 

ヌヴィレットは落ち着いた口調で応えた。

 

「地下室から機械竜の部品が見つかった。

以前、君が私に見せたときはそんなものは無かったはずだ。

あの部品は新品だ。この世に唯一無二であるはずのものが、

なぜ君の手元にある?」

 

フリーナは無言でヌヴィレットを見つめる。その表情には一瞬、

動揺が見て取れたが、すぐに冷ややかな笑みを取り戻した。

 

「何か言いたいのか?」

 

「私は問わなければならない」とヌヴィレットは重々しい口調で続けた。

 

「なぜ、こんなことをするのか。私たちをここに連れてきた目的はなんだ。

そして、君は一体何者なのだ?」

 

その問いにフリーナは微笑しながら応える。

 

「さすがに、生だと気付くか。

逆に、なんで今まで気付かなかったのだ?」

 

ヌヴィレットは一歩も引かずに視線を返す。

「答えろ」

 

水の女神フリーナは、次の瞬間、何かが変わったように見えた。

その姿勢と目つきには、これまでのフリーナとは

異なる凛とした気配が宿っていた。

 

彼女は王座から立ち上がり、

悠然とヌヴィレットと旅人を見下ろして言った。

 

「かつて、俺には多くの名があった」

 

そう言うと、彼女は黄金の王座から降り、

二階建てほどの高さから地面に着地した。

 

「俺は海の魔王、魔神フォルネウス

。だが、一番しっくりくるのはこの名だ。海

神ポセイドン――大海と地震の神である」

 

 

 

▲▲

 

 

 

その瞬間、ヌヴィレットと旅人は驚きのあまり息を飲んだ。

 

「海神ポセイドン!?」

旅人が思わず叫ぶ。

 

ヌヴィレットは険しい表情を浮かべる。

 

「それが君の俗世での名なのか」

 

「違うな。俺が人間だった頃のコードネームだ」

 

ポセイドンは苦笑した。

 

「人間の頃?」

 

ヌヴィレットが再び問いかける。

 

「珍しい話ではない。ヌヴィレット、人間が神になる事例は数多く存在する。

遥か昔、天理が人類が元々住んでいた星を滅ぼし、新たな世界を目指した。

そして、この世界に降臨し、人類創造の儀式を行ったのだ」

 

ヌヴィレットと旅人はその話を静かに聞きながら、

重々しい雰囲気に包まれていた。

 

「やがて、天理は自らに反抗する人間たちを神に変えた。

記憶を消し、神性を与えて…自分に危害を加える可能性がある

神々にはさらに魂を切り裂き、二柱の神とした。

それが俺だ。旅人、君も知っているだろう?」

 

 

旅人は息を飲み、「双生の魔神…」と呟いた。

 

 

「そうだ。雷電将軍も同様だ。彼女は雷電芽衣という人間だったが、

その力を恐れられ魂を二つに裂かれ、弱体化した。

俺もまた、記憶を改竄され、異なる世界にいると錯覚させられた。

平行世界に行かなければ気づかないほどだ。

そして、魂を二つに裂かれ、俺とフォカロルスが生まれたのだ」

 

「フォカロルス…フリーナ…」

旅人が小さく呟いた。

 

ヌヴィレットはさらに問うた。

 

「フリーナは今どこにいる?君の体内に彼女の気配が見えないが」

 

ポセイドンはゆっくりと答えた。

 

「フリーナは今、休眠中だ。凄い子だからな。今は休ませなければならない」

 

再び、静寂が流れ、話は予言へと移った。

 

ポセイドンの長い話が終わり、

ヌヴィレットはその言葉の重みを噛みしめるようにゆっくりと頷いた。

 

 

「予言、原罪、原始胎海、そして天理…そういうことか」

 

ポセイドンは鋭く言葉を続けた。

 

「すべてのフォンテーヌ人は生まれながらにして罪を背負っている。

そして、その罪は俺の半身であり唯一の妹が命を懸けて全てを背負っているのだ。

許せるわけがない」

 

「だから、崩壊獣を放ったのか?」ヌヴィレットが尋ねた。

 

「ああ、フォカロルスが命を懸けたのだ。災いの元の一員である民にも、

多少の犠牲を払わせるのは不公平ではないだろう」

 

そう言いながらポセイドンは突然、槍を出現させ、ヌヴィレットたちに向けた。

 

「さて、始めようか」

 

ヌヴィレットは鋭い目でポセイドンを見据え、

 

「まて、ポセイドン。

私はまだ、君がこんなことをやるのかを!?」

 

と言葉を放った瞬間、彼の周囲が水の渦で囲まれ、

瞬く間に消え去った。

 

「フォカロルス、バカなことを。

でも、そんなことをしても意味はないけどね。」

 

 

残された旅人は、驚きと困惑の表情を浮かべながらポセイドンを見つめ、

 

「ポセイドン、ずっと私を騙していたのね」と問いかけた。

 

ポセイドンは瞳を閉じ、一瞬の沈黙の後に答えた。

 

「ああ、騙したと言えばそうだ。ただ、俺は嘘をついていない」

 

旅人はその言葉に揺れながら、「嘘を…」と声を震わせた。

 

ポセイドンは微かに微笑んだ。

 

「君の兄のことも、俺はよく知っている。

すべてを伝えなかっただけだ」

 

旅人は深く息を吸い、「そう…」とだけ答えた。

 

「この戦いが終わったら、君の兄の居場所を教えてやろう」

 

ポセイドンは告げる。

 

「なぜこんなことを?」

 

旅人が問い返すと、ポセイドンは冷ややかに微笑んだ。

 

「因果を知っているか。フォンテーヌの厄災は、この因果で強く結ばれている。

あるいは運命と言ってもいいだろう」

 

旅人はその言葉に心を乱しながらも、静かに武器を構え、ポセイドンと対峙した。

 

ポセイドンは続けた。

 

「俺はたくさん悩み、ついに答えをだした。

草神は俺が求めた答えを出した。

可能性は低いがこれしかない。

降臨者同士の衝突なら、天理が生み出した箱庭の外側なら、可能性はある。

 

 

旅人は眉をひそめた。「降臨者だって」

 

「世界を壊す意志。人がこの世の外来に来た存在なら

すべての人類は降臨者の資格を持つ。

だか、その中で世界に匹敵する意思を持つもの。

それが降臨者だ。世界の意思の衝突ならばきっと運命すらもねじ伏せよう。」

 




次回投稿11月4日
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