【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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真 第三十八話 フォカロルス

フォカロルスの意識空間

不思議な空間に、静かな時間が流れている。深い青の中、ヌヴィレットとフォカロルスが向かい合っていた。

 

「殺してほしいとは、一体何の冗談だ。」

 

ヌヴィレットの声は静かだが、明確な拒絶の意志が込められている。

 

「冗談ではない。」

 

フォカロルスは真剣な眼差しでヌヴィレットを見つめた。

 

「僕の計画を成し遂げるには、君の力が必要だ。厳密に言えば、

水神の神座に封印された元素龍の権能だ。

そのためにカーディナルに蓄積された律償混合エネルギーを使い、

僕を神座もろとも破壊してほしい。」

 

ヌヴィレットは深く息を吐き、目を閉じた。短い沈黙が訪れる。

 

「それは……無理だ。」

 

低く呟いた彼の声には、拒絶と迷いが入り混じっていた。

 

「そうか。」

フォカロルスは、微かに目を伏せた。

 

「なぜポセイドンに頼み込んだのだ。」

 

ヌヴィレットの声が再び響く。

 

フォカロルスは口をつぐみ、視線を下に落とした。

 

「……」

 

ヌヴィレットは続ける。

「彼女に黙っていれば、計画は遂行できたはずだ。

フリーナは確かに弱いが、その精神は神の領域に達している。

彼女を最もよく知る君が、なぜそのような選択をしたのだ。」

 

フォカロルスはゆっくりと顔を上げ、彼を見つめる。

その瞳には複雑な感情が浮かんでいた。

 

「簡単なことだよ。」

 

少し微笑みながら、彼は言った。

 

「死にたくないからだ。」

 

ヌヴィレットの目が驚きで見開かれる。

 

「……!?」

 

「死にたくない。もっと一緒に居たい。ずっと一緒だったから。

例え離れていても、また再会できると信じられるなら、

別れることも受け入れられる。でも、この計画が遂行されれば、

もう二度と会えなくなる。それが怖くなったんだ。」

 

静寂が再び訪れた。ヌヴィレットはその言葉を飲み込むように沈黙する。

 

「それに、期待していたんだよ。」

 

フォカロルスは小さな声で続ける。

 

「ポセイドンが――いや、アカシックならきっと何とかしてくれるって。

お姉ちゃんなら……そう思ったんだ。」

 

ヌヴィレットは瞳を伏せ、低く呟く。

 

「それでも……なぜ私に殺させようとした。

分かっているだろう。私には……」

 

彼の脳裏に、フリーナの笑顔が浮かぶ。

切なく、それでいて暖かな記憶。

 

「私にはそんなことはできない。」

 

フォカロルスは、諦めにも似た微笑を浮かべた。

 

「分かっている。でも、こうするしかないんだ。」

 

「ポセイドンの計画が遂行されれば、予言は解決される。

彼女とは400年もの間、共に苦労を分かち合ってきた。

その言葉に嘘はないと信じている。」

 

ヌヴィレットは静かに告げた。

 

だがフォカロルスは首を振る。

 

「ポセイドンの計画には大きな欠陥がある。」

 

「欠陥?」

 

ヌヴィレットは眉をひそめる。

 

「天理は予言の決定を行うとき、ポセイドンの存在も考慮しているはずだ。」

 

「つまり……」

ヌヴィレットはフォカロルスの言葉の意味を探る。

 

「予言に不備があれば、それ以上の災厄が生まれる

可能性があるということだ。」

 

「ポセイドンはそのことを知っているのか?」

 

「知っているかもしれない。

いや、知っていて知らないふりをしているだけかもしれない。」

 

フォカロルスの声は冷静だが、その中には深い悲しみが滲んでいた。

 

 

▲▲

 

 

海上から上空へ

空が闇に覆われ、雲が激しく渦巻いていた。

雷鳴が轟き、雨が地を叩く。海と空が混じり合い、

天地がひっくり返るような光景が広がる中、

旅人は一人の存在と向き合っていた。

 

 

「どうした、惚れたか?」

 

その女――アカシックが笑みを浮かべる。

 

「まあ、無理もない。俺がかつて惚れた女を参考に、この姿を作ったからな。」

 

「それが……あなたの本当の姿なの。」

 

旅人は静かに問う。

 

「いや、違うね。

俺は律者の力の開放と本来の権能を取り戻した。

あのままの姿では出力が足りんからな。

故に少しばかり成長させたのだ。

マハールッカデヴァータが弱体化して子供になり、

出力が落ちたときとは真逆の現象と思った方がいい。」

 

 

「マハールッカデヴァータのことを覚えていることは、

あなたは本当に降臨者だったのか。」

 

「疑っていたのか。

心外だな。」

 

 

その瞬間、アカシックが指先で空間を掴むような仕草をした。

途端に旅人の視界が歪み、天地が逆転する。

 

「どういうことだ……いや、違う。

逆転したのは彼女ではなく、私自身」

 

旅人は必死に状況を理解しようとするが、

突如として巨大な洪水が天から降り注いできた。

 

 

「パルチザン。」

 

アカシックが一言放つと、水は形を変え、

無数の武器となって旅人に襲い掛かる。

 

翼を使い態勢を立て直す。

 

「はあああ!」

 

旅人は光を放ち、迫り来る武器を全て消滅させた。

 

「クラッシュ。」

アカシックの次の一手が放たれる。空間に走った黒い亀裂が、

一瞬で全てを飲み込み、破壊した。

 

「これは……空間の破壊か。

いや、全ての現象を破壊する力……」

 

旅人は驚愕する。

翼はボロボロになりも、無事に飛行することができた。

 

アカシックは冷静に告げる。

 

「そうだ、やはり、同列の能力だと気づかれるものだ。

機械竜とキミとの戦闘を見て、そして、やっと理解した。

あの虹色に輝く光にあたったものは瞬時に分解され消滅する。

俺の能力すらも消滅したことは推し量るに、

キミの能力は全ての事象、概念、物質をこの世から消滅する力。

消滅の律者か。」

 

「!?」

 

「これはいい、大当たりだ。」

 




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