【完結】とある水神の半身の神話創造   作:ネシエル

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第四十話 黙示録の獣

フォカロルスの意識空間

ヌヴィレットとフォカロルスは目の前の映像を見つめていた。

その光景には不吉な気配が漂っていた。

 

「あれは、いったい……」

 

ヌヴィレットが低く問いかける。

 

「おそらく、予言だろう。」

 

フォカロルスはつぶやくように答えた。

 

「厳密に言えば、予言を成すための因果だよ。

旅人とお姉ちゃんとの戦闘で損傷し、海水を利用して受肉した姿……

そんなところだろうな。」

 

 

映像の中には、七つの首と十本の角を持つ黒き龍が現れていた。

鋭い鱗に覆われ、背中には天を突くような巨大な翼が生えている。

その堂々たる姿は、見る者に畏怖と絶望を植え付けるかのようだった。

 

「黙示録の獣。」

フォカロルスは静かに呟いた。

 

「知っているのか?」

ヌヴィレットが眉をひそめる。

 

「いや、僕たちの住んでいた世界で、最も有名な予言書に描かれていた魔物だよ。」

 

フォカロルスの声にはどこか遠い記憶がにじんでいた。

 

「大いなる獣、666の獣。七つの首と十本の角を持つ龍……

天理は随分とお怒りのようだね。」

 

ヌヴィレットは映像に映る黒き龍を見つめ、表情を引き締めた。

 

「これからどうするつもりだ? あれの進行方向は間違いなくフォンテーヌだ。

ポセイドンも動けない以上、私と旅人が足止めに向かうしかないだろう。」

 

「そうだね。」

フォカロルスはため息をつきながらうなずいた。

 

「もう他に方法はない。止めても無駄かもしれないけど、

やるしかない。」

 

そう言うと、彼は手のひらから光る宝石を取り出し、

ヌヴィレットに手渡した。

 

「これは……?」

 

ヌヴィレットが宝石を見つめる。

 

「今まで、カーディナルに貯めていたエネルギーの結晶だよ。

お姉ちゃんが意識を失ったことで利用権が僕に移った。

これを持って行って。」

 

フォカロルスの言葉には覚悟が滲んでいた。

 

「わかった。」

 

ヌヴィレットは宝石を受け取り、踵を返した。

 

「君はどうするつもりだ?」

 

「少なくとも、ただここで観戦するつもりはないよ。」

 

フォカロルスは穏やかな微笑を浮かべながら言った。

 

 

▲▲

 

 

荒ぶる海上

荒れ狂う海の上空、七つの首を持つ黙示録の獣がその巨体を翻し、

六枚の翼を持つ旅人と激しく交戦していた。

 

獣の首が一斉に炎を吐き出す。それは単なる炎ではなく、

光線のような凄まじい速度で発射される破壊の閃光だった。

 

「危ない!」

 

旅人は叫びながら光線を避けたが、

その攻撃は翼をかすめ、一枚を奪い去った。バランスを失い、

彼女の体が海へと落下していく。

 

「ゴォオおおおお!」

 

黙示録の獣は咆哮し、七つの首から次々と光線を放った。

 

その全てが旅人を狙い撃ちする。

 

「!

」旅人は瞬時に腕を構え、

残った翼で身を包んだ。

直撃にもかかわらず、傷一つ負わなかったことに驚き、

恐る恐る目を開く。

 

そこにはヌヴィレットが立ちはだかっていた。

 

「すまん、遅くなった。」

 

彼の声は静かだが力強い。

 

「大丈夫。」

 

旅人は頷き、

失った翼を復元して再び空へと舞い上がった。

 

「ヌヴィレット、強くなったのか?」

 

「ああ。体は順調だ。今すぐ、この贋作を破壊するぞ。」

 

ヌヴィレットの目には鋭い決意が宿っていた。

 

▲▲

 

深い深い海中の中

深海の闇の中で、フォカロルスは沈みゆく体にたどり着いた。

その体はアカシックだった。

 

「酷い傷だ……」

 

フォカロルスは息を飲みながらアカシックの体を見渡す。

胸部には深い亀裂が走り、

その内部には光を失った神核が露わになっていた。

 

「神核がここまで損傷するなんて……

天理はどれほど強い呪いを刻んだのだ?」

 

フォカロルスは自問しながら、

加速する思考の中で解決策を探っていく。

 

フォカロルスは慎重にアカシックの胸へと手を伸ばし、

光を指し込む。そして、崩壊しかけた亀裂を修復し始めた。

 

「うう……フォカロルス……?」

かすれた声が闇の中から響く。

 

「おはよう、ポセイドン。」

 

フォカロルスは優しく微笑みながら答えた。

その声には再び動き出す未来への希望が込められていた。




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