【完結】とある水神の半身の神話創造 作:ネシエル
荒れ狂う海上、激しい嵐と波がすべてを呑み込むように渦巻く中、
ヌヴィレットと旅人は巨大な黙示録の獣と戦っていた。
その体躯は常識を超え、
傷つけるたびに瞬時に修復していく不死の怪物だった。
「大海よ……」
ヌヴィレットは重々しい声で呟くが、旅人の表情は険しい。
「はあ……」
短い息をつきながら、二人は必死に攻撃を繰り出し、
その肉体を削ろうとしていた。
だが、傷つけられた黙示録の獣の体は、すぐさま再生する。
裂けた肉が瞬く間に結合し、再び立ち上がる。
「与えるダメージよりも回復が上回っている。このままじゃ……」
ヌヴィレットの声は焦燥を帯びていた。
旅人も内心で同じことを思う。
『質量が多すぎる……せめて、散ってくれれば……』
そのときだった。海上に眩い光の柱が現れ、二人の視線を奪った。
それはあまりにも神秘的で、まるで天が裂けたかのようだった。
次の瞬間、巨大な水の剣が黙示録の獣に突き刺さり、
その体を遠く彼方まで吹き飛ばした。
「まさか……」
ヌヴィレットが驚愕の声を漏らし、
旅人も「嘘……」と呟く。
彼らが上空を見上げると、そこには二枚の水の羽を持つ威厳に満ちた姿の
ポセイドンがいた。
そして、その腕にはお姫様抱っこされた全裸のフリーナが抱かれていた。
旅人は息を呑む。
『肉体が元に戻った!?』
ポセイドンは以前のように幼くなっている。
ポセイドンは冷静に告げる。
「あの姿は器の拡張をするために変化したものだ。
器が元に戻った以上、もう固執することはない。」
そう言ってフリーナを見下ろし、優しく頭を撫でた。
「まったく、何で無茶なことをする。バカな子だ。」
その姿に戸惑いながらも、ヌヴィレットは尋ねた。
「フォカロルスは?」
ポセイドンは短く答えた。
「俺と一体となった。元々、この姿が正常だったからだ。
文句を言うなよ。フォカロルスが選んだ結果だ。」
ヌヴィレットは深く頷いた。「ああ、それはわかった。」
そして、フリーナを引き取ると、
その体にマントを掛け、優しく抱きしめた。
フリーナがうっすらと目を覚まし、微かに声を漏らす。
「う、うう……」
ポセイドンは厳しい口調でヌヴィレットに言った。
「変なことをするなよ。まあ、キミに性欲という概念はないだろうが。
早く行け。吞星の鯨が目覚めている。スキュラたちが対処しているとはいえ、
今のフォンテーヌには指導者が必要だ。」
ヌヴィレットはポセイドンを一瞥した。
「君はどうするつもりだ?」
「勿論、あの害虫を殺処分する。」
ポセイドンは迫り来る黙示録の獣に鋭い視線を向けた。
▲▲▲
再び嵐の中、旅人とポセイドンだけが海上に残された。
「アカシック……」
旅人がポセイドンを呼ぶが、
彼女は軽く手を振った。
「ポセイドンでいい。
済まんがややこしいだろう。」
「ううん、大丈夫。」
旅人は微笑んだが、
その表情に陰りがあった。
ポセイドンは突然、深く頭を下げた。
「その済まなかった。」
「何か?」
旅人は少し驚きながら聞き返す。
「キミを利用したことだ。形はどうあれ、キミを騙したことは心から詫びる。」
ポセイドンの言葉には真摯さが宿っていた。
旅人は小さく息を吐き、首を振った。
「……じゃあ、始めようか。」
▲▲▲
嵐の海上にて、雨のように水の剣や槍が降り注ぎ、
巨大な水の手が海から出現した。旅人は黙示録の獣に向けて光線を放ち、
三つの頭を吹き飛ばした。しかし、それもすぐに再生されてしまう。
ポセイドンは冷静だった。
「十回目。流石にきついな。
とはいえ、奴の弱点が見えた。」
「弱点?」旅人が問いかけると、
ポセイドンは鋭い目で黙示録の獣を見据えた。
「ああ、奴には死の概念がない。だが、その不死性は権能によるものだ。
生物的に自己増殖するならバラバラになるはずだが、そうはならない。
つまり、極めて概念的な力による不死だ。」
旅人は息を飲む。
「どうすれば倒せるの?」
「肉片を一つ残らず消し飛ばす。それしかない。」
ポセイドンは飛び上がり、旅人も下に向かっていった。
「世界破壊
ポセイドンの言葉に呼応し、上空に光星が現れる。機械の声が響いた。
「対象領域選択、時空、概念、空間、世界へ拡大。全工程グリーンオブ。」
ポセイドンの持つ三叉の槍が分解され、
レーザー砲のように変化していく。
「大地よ裂けよ、大海よ砕けよ。天を統べしは全て我、星を壊すしは全て我。」
ポセイドンが詠唱を終えると、
旅人が光線を放ち、黙示録の獣を上空へ打ち上げた。
「はあああ」
「ごおおおおお」
黙示録の獣がポセイドンよりも上へ行ったとき
その瞬間、ポセイドンは黙示録の獣に向けて槍を放つ。
「
巨大な光線が放たれ、黙示録の獣を呑み込み、
偽りの空を砕きながら遥か宇宙へと消し去った。
そして、嵐の中、静寂が訪れた。
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